第四十四話 僕の父
「そうですよ。父さん」
静かに、僕は言った。
「そうか。お前が息子の...。母さんは元気か?仲良くやれているか?」
嬉しそうに、そう聞く父。しかし容姿は僕と同じくらい若く、とても目の前にいる人が父とは思えなかった。
そんな違和感を覚えながら、僕は首を縦に振る。
「とりあえず、ここから脱出するぞ。あまり長居するとさっきみたいなゴーレムが出るだろうからな」
父が伸ばした手を、僕はしっかりと握った。
「あなたが、アドレの親父さん!?」
戻ってくると、要は僕を見るなり目を見開いて驚いた。
「いや、僕だよ。アドレだよ。父さんはこっち」
「え?」
要は僕と父を交互に見つめた後、頬を赤らめて顔を手で覆った。
「まったく、馬鹿だなぁ。な?アドレ」
そう言って、ユイガも要と同様の間違いを犯しながら、父の肩に腕をのっけた。
はぁ...。とため息をついて、僕は忠告する。
「だから、そっちは父さんだって!!」
「え?うぉ....」
ユイガもまた僕と父を交互に見つめ、次第に顔を青くした。そして、間髪入れずにごめんなさいと連呼した。
それを見かねたのか、父はユイガのもとへ駆け寄り、肩に手を置いた。
「大丈夫だ。確かに俺も、アドレに似てると思う。ちょっと不服だけど」
「なんで不服なんですか!?あなたの息子ですよね僕?」
「え、間違われるのは嫌なんだが。俺、一応最強だったんだけど。最強を見間違えるとかありえないから」
そんな軽口を言い合っていると、父は突如真顔になった。どうやら真剣な話らしい。真剣な顔をする父のまなざしは、どこか怖かった。
「それで、俺が蘇ったはいいんだが....。そこの女、何か俺に言いたげな表情をしている。言ってみろ」
父に促され、受付嬢は僕たちの前に立った。足はがくがく震えており、よほど緊張しているように見える。
それほど言いたくなかった何かがあるのだろうか。
そう思った僕は、思わず身構えた。
「私、予知夢を見るんです。昨日も夢を見ました......」
「それで、どんな夢を見たんだ?」
「グイドさんが、アドレさんと戦う夢です。なんだか嫌な予感がします」
震えている彼女とは裏腹に、グイドは何だと面白おかしく笑っていた。
「それは当たっている。この後、俺はアドレを鍛えてやろうと思っていたんだ。別に殺し合いでもない。だから、そこまで心配する必要はない」
そう言って、父は入り口の扉を開けると、振り返って僕の名を呼んだ。
「ちょっとついてこい。稽古をつけてやる」
意を決して、僕は父についていった。
「ここまでくれば大丈夫だろう」
サリパンから少し離れた平地。そこで父はナイフを取り出して、それを僕に突きつけるように構えた。それに対抗して、僕も静かに剣を構えた。
「今からお前の全力を見せてくれ」
直後、僕の視界には父の顔があって!?
驚きつつも、紙一重のところで、僕は背中をそった。おかげで攻撃は回避できたものの、大きな隙を晒してしまい、父の蹴りをもろに食らってしまった。
早い。いや、それだけじゃない。攻撃も、何もかもが僕より強いんだ。僕はバランス型。それは父も然り。というわけだ。なら....。
僕は『時』スキルと流速を併用し、父とほぼ同等のスピードで接近する。瞬間、父のナイフが振りかざされる。ただ、もうすでに『時』スキルの適応範囲。先ほどまで脅威だったナイフは以前よりもゆっくりであった。
「うおぉぉぉぉ!!」
剣を、思い切り父に向けて振り下ろす。剣はナイフをはじき、父の顔へまっすぐとおろされていく。
しかし、やはり最強。父は右手で僕の右腕をはじくと、そのまま回し蹴りを僕に食らわせてきた。そのあまりの威力に、思わず膝をつく。
「なかなかいい動きだ。ただ、強い。それだけだ。格上相手でも張り合えるナニカがないと、お前はそのまま負けてしまう」
そう言って、父は落ちたナイフを拾い上げた。僕も同時に起き上がり、再び戦闘態勢に入る。と、その前に、僕は自身の頭に手をかざし、『時』スキルを発動した。
その瞬間、僕は俺と交代する。
「さあ、第二ラウンドと行こうじゃないか。親父」
「お前、本当にアドレか?」
怪訝そうな目で、親父は俺を見つめる。
「ああ。本当にエディタ・アドレさ」
瞬間、俺は腰に巻いてあったナイフを取り出した。
「ナイフ?」
「ああ。俺はあいつと違って、こっちのほうが戦いやすくてね」
直後、ナイフとナイフが交差する。親父は少し焦っているが、俺の顔には汗一つなんてたらしてはなかった。
「へぇ。なかなかやるじゃないか」
「そっちこそ。さすがは親父だ。どっちも強いな」
交わるナイフとナイフ。次第にそれは激しさを増していき、金切り音も間髪なく鳴り響くほど攻撃は激化していった。
ナイフ同士がぶつかることによって生じた衝撃波で、俺と親父は数メートルほど吹き飛ばされる。
「さあ、次で決着だ」
俺は思い切り足を踏み込むと、親父めがけてそのこぶしを振り下ろした。しかし、親父の周りには何かの壁があるかのように、俺の拳をせき止めた。
「これが俺のスキル『空』だ。俺とアドレとの間にある空間を永遠と伸ばすことによって、俺とお前の距離は詰まらないようにっている」
その説明を聞いた俺は、にやりと笑ってそのこぶしを親父に当てた。
驚愕する親父。それもそうだろう。なんせ絶対無敵の防御が打ち破られたのだから。
「何をした?」
「さぁ、なんだろうな。一つだけ言えるのは、俺が使ったのは、『時』スキルじゃないってことだ」
その驚愕の言葉に、親父は口をあんぐりと明けるしかできないのであった。
最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますので、ブックマークをして待っていただけると嬉しいです。
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