第十九話 いざ次の国へ
理由。そんなの、聞きたいに決まってる。だから、僕はその理由を聞くことにした。
「教えて、くれないか。」
すると彼女は、とんでもないことを言い出すのだった。
「私は、お前たちが次行く国である『嶺花』の出身でな。そこで私は、冒険者を目指すのを止める両親を無視してこの国にまで逃げて冒険者になったんだ。だから、行くことはできない。本当に、すまない。」
否定なんか、できなかった。だって僕は、親なんて居ないから。
僕は、幼くして母親と父親を亡くした。ショックだった。いや、どちらかといえば物心ついた時に村の人から聞いたことで、ショックを受けたと言っておこう。
僕は、彼女の肩に手をそっと置き、優しく諭すように言った。
「わかった。じゃあ、またいつか会おう。」
「ああ。また会おう。」
最後にやった握手はお互い寂しいという気持ちが強かったからか、随分と握っている時間が長く、強く握っていた。
そして、僕達はその手をゆっくりと離して今一度向き合う。
彼女に背中を見せる。そよ風が、自身の黒い髪の毛がわずかだがなびく。
こうして、僕達は彼女に別れを告げて次の国である『嶺花』へと、足を運ばせるのであった。
あれから、随分と経っただろうか。いや、そこまでかもしれない。
僕達は、ようやくその国についた。
あたりは木や藁などといった簡素に作られた家ばかりだった。これが、和の国嶺花なのか?
「ここが和の国嶺花よ。こう見えて、住人はすごい人たちなんだからね?」
「と、いうと?」
「この国の住人は、実はスキルのレベルが非常に低い
の。」
スキルのレベルが低い。つまりは、この国の住人は弱いってことなのだろうか?
「でも、皆はこの国特有の技を使ってそれを補っているのよ。特に、この国の王である桐山 颯真なんて別格よ。」
へぇ。流石は聖女さんだ。いっつも役に立たないから呆れてたけど、こういうときは頼りになる。
っていうか、ユイガはどうして最近眠そうにしているんだろう。逆にその理由を聞きたいものである。
そう思っていると、ガタイが良く、和服を着た短髪の男たちが僕らを取り囲んでいた。
「おいそこの坊主。お前たちが持っている荷物を、ここに全て置いて立ち去れ!」
そんな事を言う男たち。普段なら怯えているであろう状況。だが、そんな恐怖心を超えて、僕は既視感を覚えていた。
そう、ソラに行く途中に起こった。レベル3のチンピラ共と限りなく近い状況が起こっているのだ。
あ、これデジャヴだ。
やがて、僕は答えを導き出したのだった。
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