第十七話 次の国へのチケット
そうして、僕達はその高くそびえ立つ城の中に入っていた。
中はかなり広く、この1日じゃとても探索しきれないと言わんばかりの広さだった。
しかし、問題はそこではなかった。そう、僕達は今。国王の目の前にいた。ハイム国王に斜陽が降り注ぎ、その高貴ぶりをさらに強調させた。
「ふむ。君が、エディタ・アドレか。」
ゆっくりと首を縦にふる。威圧感だけでも押し潰れそうになる。だが、なんとかその場に立つ。イヴは、フードを被りながら国王を見ていた。
本人曰く、変装らしい。とは言っても、バレてるとは思うけど。っていうかユイガ君眠そうだね。
ウトウトしているユイガを横目にし、僕は国王をじっと見つめていた。
国王は頬杖をつき、その大柄な体を移動させた。そして僕にこんな事を言う。
「お前は、転生者というものなのか?」
「いえ、違います。僕は転生なんてしていませんし、前世を知っているわけでもありません。」
「違う、君じゃない。君の中にいる、もうひとりの君に聞いているんだ。」
もうひとりの君。つまりは、俺にきいているってことか。なら、俺に変わったほうがよさそうだ。
そうして頭に手を添え、『時』スキルを使う。
直後、俺はそいつに向かって告げることにした。
「俺は言うなれば転生者だ。で、言いたいことはそれだけか?」
「随分とおこがましい態度だな。まあいい。君は、その強大な力で何をする気だ?」
ほう。記憶しかない俺の真骨頂を知っているのか。流石は『観』スキル。そこまで観る事が出来るとは。なら、話は早いのかもしれない。
「俺は、あくまで記憶が繋がっているだけだ。だから俺はアシストしかできないし、決定権はコイツにある。暴れる事も出来ない。そして、目的を達成するには暴れてはならないからな。」
そうだ。俺の目的達成のために必要なもの。そのうちのひとつが、何かを引き起こしてならないこと。だからこそ暴れることもできないし、暴れる気もサラサラないということだ。
そいつは頬杖をつくのをやめ、静かに言葉を吐く。
「なるほどな。君の気持ちはよくわかった。あとは、もうひとりの君に聞くことにするよ。」
ああ。とだけ言い、俺は時スキルを解除する。
瞬間、さっき起こった出来事が僕の脳内に流れこんでくるが、それに集中せずに国王の方を向く。
すると、国王はこんな事を聞いてきた。
「なあ、君はどうして旅をしようと思ったんだい?」
「自分の力で仲間を守るため。最強になるため。」
考える余地なんて、一つもなかった。
そう。あの時僕は誓ったんだ。ユイガが死なないように。もう、自分のせいで死なせないように。だからこそ、この決意は曲げることもないし、変えることもない。
すると、国王はフッ。と鼻で笑って、席を立ち上がり、僕に何かを渡す。
「そうか。ならこれを君にあげよう。次の国で使うといい。」
手にしていたのは、何かのチケットだった。
何なのかを理解できなかった僕は、問うことにした。
「これは?」
「特別待遇権だ。これを持っていれば、他の国の王に特別な待遇を受けてもらえる。」
僕は、そのチケットを力強く受け取った。次の国に行くという意思を込めて。
そうして、僕達はその場を去った。
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