第十六話 王様からの招待状?
そうして、僕は倒れた男を見下ろしていた。
殺しはしない。流石に、そこまで僕は非情ではないから。
僕たちの争いを見ていた観衆たちはほっ。と安堵の声を漏らし、多くの人達はその場をあとにした。
これで、ようやく二人っきりで話すことができる。
「なあ、なんで僕を襲ったんだ?」
「さっきも言ったはずだ。俺の惨めな姿を見られた。それだけだ。」
どうやら本当の事は教えてくれないらしい。
それからも、僕は何度も聞いたのだが、こいつはどんなに聞こうとも答えてくれはしなかった。やがて僕も痺れを切らし、じれったくなってきていた。
「わかった。別に深くは詮索しないから、もう僕達に関わらないでくれ。」
そう言って、僕はその場をあとにした。
しかし、僕はどうしても違和感が消えることはなかった。
あの出来事をみんなに伝えずに迎えた後日、僕はホテルで呑気に天井を眺めていた。仕方がない。暇なのだから。
にしても、あのポンコツ聖女が当番になった故かはわからないが、静かになった気がする。うん。気のせいじゃないな。
そう思っていた時だった。扉を誰かがノックする。部屋にはユイガとエナ。つまりはあのポンコツ聖女が買い物を終えたのだろう。そう思い、扉を開ける。
「お疲れさん。早く飯でも食べよう。疲れたからね。」
「?」
眠たかったので目を瞑ったまま言ったのだが、その返事がポンコツ聖女のものではないと理解した瞬間、僕はゆっくりと目を開ける。するとそこには、鎧をきた男の人がいた。
やっバイ。終わった。
「あ、あの〜今のはなかった事にするのは出来ますかね?」
「え?ま、まあ。ってそうじゃない!私はこれを渡しに来たんです。」
こんなに礼儀正しいなんて。どこかのユイガくんとイヴ君にも見習ってほしいのである。
そう思いながら、その手紙を受け取る。紙であろう物を包んである真っ白な封筒は厚く、丁寧にリボンまで付けられていた。
「これは?」
「国王様からですよ。どうやら、国で暴れていた男を倒した貴方に会ってみたいとのことで。」
暴れていた男。それが誰か、僕には一瞬でわかってしまった。っていうか、あいつ僕以外のことでも暴れてたんかよ。
国王。この国にそこそこ滞在していたからこそ聞いたことがある。国王ハイム・ブロウラー。レベル8であり、スキル『観』を使うと聞いた。まあ、国王になれたのはスキルじゃなくて、頭のキレの良さがずば抜けていたってことが一番の要因だけど。
「やることは終わったので、私はこれで失礼します。」
この国の警備員と思われた男は足早にこの場を去っていった。
男が見えなくなるのを確認し、僕は封筒を開けて手紙を読むことにした。
紙には、こう書かれてあった。
『エディタ・アドレ。明日、君を私の城に招待する。』
と。
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