第十五話 スキル『間』
と思った。しかし、嘘じゃなかった。そう、僕は一瞬だけだが周りがゆっくりに見え、回避する事が出来たのだ。
そして、やっぱり前言撤回。さっきまで警戒していた僕をよしよししてやりたい。
そう思いながら、僕はそいつを睨んでいた。
「ちっ。避けられたかまあいい。どうせ、ここで死ぬんだ。」
「なんで、こんな事を?」
「決まってんだろ。俺の惨めな姿をみたからだ。」
何が原因でわかったのかは分からないが、多くの野次馬が来ている中で、こいつは大声でそんな事を言っている。
しかし、なるほどそういうことか。つまりはこいつの惨めな姿を見てしまったから、殺してその黒歴史を消そうってわけか。このサイコパスめ。
そう心の中で愚痴を吐いた瞬間だった。そいつが拳で何もないところを殴り、僕は何故かふっ飛ばされていた。
追撃が来ると思った僕はすぐさま立ち上がり、体制を整えた。そしてその瞬間だった。またもや何かが僕に直撃する。が、今度は大方予測ができていたためか体制は崩れることはなく、その場で踏みとどまった。隙ができた。そう思った僕は、そいつのとこへと走り、やがてそいつとの距離は十メートルにも満たないほどの距離にまで縮めた。
「いい線だな。しかし、遅い。」
ドゴッと僕の腹に重たい一撃が入る。しかし、男は僕に対して打撃攻撃は行っておらず、何もないところをただ殴っただけだった。
おかしい。なんでこいつは僕を攻撃せずにダメージを与えることができているんだ?わからない。スキルが何かわからない。ヒントを探せ。今からあの間なで、奴はきっと何らかのスキルを使っているはずだ。発動条件は、拳で何かを殴ること?違う。奴はまるで距離なんか関係ないと言わんばかりの攻撃を放ってきた。
そこで、僕はある可能性を思いついた。
検証するべく、奴の攻撃をじっくり観察する。奴の攻撃が始まる。拳をこちらに向け、殴る。瞬間、僕にまたもやダメージが入る。
やっぱりそうだ。奴のスキルは、『間』だ。だから僕に攻撃できていたのか。なら、攻撃パターン的にきっと奴はスキルで殴る以外の事はしてこないはずだ。
そう言って、剣を取り出す。これなら、リーチの違いで勝てるはずだ。
「お前の攻撃は、もう見切った。今度は、こっちのターンだ。」
「あまり俺を睨み舐めるんじゃねぇ!」
攻撃が来る予兆を相手が見せる。来た!そう思った僕は、奴が正確に殴れる角度から外れ、奴へと走る。勿論、奴は攻撃を放つのをやめ、僕にまた標的を定めるがその時には僕はもうそこにもいなかった。繰り返す。繰り返しながらも僕と奴との差は確実に縮まっており、無事に剣を振る下ろせる範囲まで来た。
奴も殴ろうとするが、もう遅い。僕は、その剣を振り下ろすのだった。
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