第十話 夢
あれから後日、ユイガは強くなるためといってこの国から出ていった。残された僕達は、国が最先端だからか、色々な備品が揃った宿屋で横になっていた。
どうやら、僕たちの受けたクエストは手違いで難易度が低くなっていたらしい。だから、実際はAやBランク冒険者が受けるクエストになっていたのだが、僕はそれをクリアしてしまった。ランクを上げないかと話を持ちかけてくれたが、特に上げる理由もないので断った。そして、報酬金は30万マニーと高額で、しばらくの生活には困らなさそうである。ただ、どうにも最近疲れが酷いのだ。まるで、ずっと体を動かし続けた後日のような感覚である。
「眠ぅぅい。」
「どうかしたのか?寝不足か?」
何かと気にかけてくれているエナ。さっきからずっと寝ているこの怠け者聖女とは訳が違う。
「何か最近異様に眠くてね。少し眠ることにするよ。」
そう言って、瞼をゆっくりと落としていく。やがて完全に瞼は閉じきった。直後、睡魔が僕を襲い、僕を眠りへといざなうのだった。
僕は、目の前にある死体を凝視していた。僕は僕は僕は。何をしたんだ?なんで目の前に死体がある?
脳みそが混乱し、何もできなくなる。しかしなぜだろう。どうして、見ず知らずの死体を見てこんなに悲しいんだろう。
理解ができなかったのだ。ただ泣くことしかできなかった僕の下に、誰かが来た。
そして、その人は僕をその場から離れさせた。それから、僕は色々なことを知った。僕は風魔法しか使えない落ちこぼれだということ。僕は親に捨てられたこと。そして、僕にはお金がないこと。
それから、長い年月が経った。僕は、村一番の魔法使いであるレイナに修行を頼み、特訓をした末。村で行われる大会に出ることになった。僕が狙うのは優勝特典の百万ツーレである、落ちこぼれだが勝てるだろうか。そう思っていたが、拮抗した戦いを制したのは、僕だった。しかし、優勝者特典は百万ツーレ以外にもあり、それが最高峰の魔法学校と言われる、『ルード』に行く義務だった。
勿論義務なので行くしかなく、面接にも合格して晴れてCクラスの一人として入学することになった。
そして、そこで出会った。そう、あの時。忘れることもないだろう。僕は、そこでユイガという人物に出会った。それが、全ての始まりだったんだ。
僕が俺という一人称に変わったのは。これがあったからだ。
ハッと目が覚める。目をこすり、さっきの光景が幻か現実かを見極める。勿論そこは現実で、目の前に心配そうにこちらを見ているエナがいた。
「大丈夫か?さっきから呻いていて、何かあったのか。しかも丸一日寝てて、死んでしまったかと思ったぞ。」
「ああ、大丈夫だよ。心配させてごめんね」
しかし、さっきのはいったい何だったのだろう。僕の記憶ではない。ただの夢か?いや、それもない。なぜならば、あの夢にはシッカリとした感覚があったからだ。そんな夢は今まで見たことがない。なら、
『あいつの記憶なのか?』
と。
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