第五話「推測上手」
死神への質問が終わったあと、私は自分の部屋に戻っていた。
当然、死神もついてきていた。
部屋へ戻る際中、私のそばにいる死神が人に見られて騒ぎになるかと心配したがそれは問題ないらしい。
曰く、死神は現れた者にしか見ることも触ることもできないらしい。
先ほど2人の患者とすれ違ったが何も反応がなかった。
これは死神が私たちとは別の次元に生きているかららしい。
例えるなら、二次元の存在であるド○えもんが実際には見れも触れもしないのと同じなのだろう。
これは人以外にも作用し、壁なども通り抜けられると死神は言っていた。
けれどそんな死神にもすり抜けることができないものがあるらしい。
それは「金属」で大抵の金属はすり抜けれない。
そのせいでは壁なんかも通り抜けられないらしい。
まぁ現世の壁は鉄筋コンクリートとかも多いしね。
世の中金属が含まれてない物のほうが少ないんじゃないかな?
ちなみに死神が金属を触ることができるのは
死神たちの次元と同じ周波数をしているからとかどうとか言っていた。
また、死神は金属の中でも金や銀、銅などの金属には触れられないらしく例外があるそうだ。
何とも言えない能力である、、、
そうなると人間の体にも鉄分があるのだから触れることができるのではないだろうか?
そう思うが、死神曰く
鉄分は人間全体で見ると少ないため触れることができないらしい。やっぱりよく分からない能力だ。
そんな話をしていると私の病室についた。
相変わらず誰もいない病室で少し寂しさを覚える。
ここまでの道のりは長かった、、、
なんて言ったって自分の病室の場所が分からなかったんだからね。
どうやら私は方向音痴のようだ。
病院って一種の迷路なんじゃないかと錯覚するくらいには、、、
あと帰る途中ほとんど人に合わなかった。
あったのはさっき言った患者2名だけだ。
やはりというか、この病院には人が少ないらしい。
私の病室に誰もいなかったのもそれが理由だろう。
今日はたしか日曜日のはずなのだが、
平日ならさらに人が少ないのだろうか?
そう思っていると死神の口が開いた。
あ、これ比喩表現ね。こいつに口はないから。
それどころか顔があるのかも怪しい。
「用事を思い出した。お前からは少しの間離れることになる」
用事ってなんだ?死神たちの密会でもあるのか?
「そっすか、そのまま帰ってこなくていいですよ」
「俺もさっさとお前から離れたいのだがな、、、」
そう言って死神は部屋を出て行った。
今からどこに行くんだろうな?
、、、なんでもいっか!
私はこの一連の流れで思いっきり疲れたから休憩するとしよう。
さて、ここまでの説明を聞いていて何か違和感を感じなかっただろうか?
そう、死神の能力には1つの矛盾が生じている。
それは私は死神を見ることも触ることもできるという話だ。
いや、実際に死神には怖くて触れていないから触れることに関しては分からないのだが、、、
とにかく、こんな物語を進めるためのご都合的な話、おかしいと思って当然だろう。
物語の主人公はもっとこういうことを疑うべきである。
何故私は死神を見ることもできるのか?
それは簡単明瞭、そうするしか私を殺すことが出来ないからだ。
もっと詳しく言えばそうしないと死の可能性を操ることができないからだ。
これは死神のルールでもなんでもなく死神が相手に姿を現すことが人を殺す能力の条件のようだ。
それに伴って私は死神を見れも触れもできるらしい。
他にもこの話について聞いていて考えたことがある。
おそらくこの死を操る能力、私が死神という存在を見る、または認識することが条件のカギになっているのではないだろうか?
もしかしたら私は記憶を失う前に1度、死神を見たのかもしれない。例えるならお化けを見るようにパッと死神を、、、
それから、現実離れしたものを見たことによって頭が混乱し、周りが見えなくなり落ちる看板に気づかなかった。
それで死神を見たときに力の条件が満たされあまつさえ死の可能性まで作ってしまった。
そして殺されかけ、死神を見た記憶もなくこれが本当かも分からない。
こんなことがこの一件で起きていたのではなかろうか?
これを逆に考えれば私が死神を認識しなければ死神は私を殺すことが出来ない。
どうにかしてこの状況を作ることが死神攻略のカギになるのではないだろうか?
とまぁこんな感じの推理を立ててみたのだが、、、
私ってすごくね?これだけの情報でここまでの考察を立てるなんて。
天才じゃない?もしや私って1000年に一人の天才少女なのでは、、、?
まぁこれが間違ってたら荒唐無稽な推測を並び立てる凡才なのだけど、、、
筋は通っているように思える。
けれどあくまでこれは私の仮説の域を出ず、根拠も何もない予想にすぎないのだが、、、
それに嘘をついている可能性もある。真実は死神にしか分からない。
けれどここで死神に聞くのは駄目だ、ナンセンスだ。
この推理が正しかろうがどうであろうがそれを確かめる方法がない。
死神に聞いても本当のことを話すか分からない。更なる混乱を生むだけだ。
そもそも最初の話も嘘の可能性がある。信頼なんかできない。
というか自分を殺そうとしてる奴のことなんか信じたくない!
死神も記憶喪失も何もかも嘘であってくれー!
そう思いながら精一杯のため息をついた。