第三話「死神との対話」
「はぁ、はぁ、はぁ~〜」
に、逃げ切れたか、、、?
たぶん病院1周くらいは走ったな。気分的には地球1周分。
そのせいで元の庭に戻ってきちゃったし。
ほんと、なんで病み上がりなのにこんなに走らないといけないんだ、、、
さっきは逃げずに対話を試みるなんて考えたけど、それだとまずい。
多分、あのままだと殺されてた。
もうすでにあいつは殺害未遂だしね、、、
そもそも、あいつはいったい何者なんだ?
絶対人間ではないことは分かるが、それ以上のことが分からない。
どうして私のことを狙うのだろうか?もしやあいつとは前に関わりがあったのか?
わからないだらけだ。
でも、そんなのあんな黒幕な野郎に確認しようがないし、、、
何はともあれ、あいつから逃げないといけない。
病院を出たいけど、私の持ち物をまだ返してもらってない。
あれがないと逃げる以前に本当にこれからどうするべきかわからなくなる。
看護師さんに会って持ち物を返してもらおう、、、
「もう1度だけ聞くぞ、どうしてお前は生きている?」
はっとして、声のするほうに振り向く。
そこにはあいつがいた。
やっぱり逃げ切れなかったか、、、
そりゃそうだよね、こんなのから逃げ切れるわけないよね、、、
終わった。
あ~最後に何言い残そう?
『悪くない人生だったとか?』
何してきたかわかんないけど。
「なんで生きているか、だって?そんなこと言われても分からないよ。むしろあなたが何を言っているのかが分からない。殺したかったら好きにすればいいじゃん、、、」
自分が自暴自棄になっているのを感じる。
安心しろ自分、こんな状況で自暴自棄になるのは普通だ。しょうがない。
そうやって自分を慰める。
本当に、わからないことだらけだ、意味が分からない。
だれか私に何が起こっているのか教えてくれ。
こいつは何を知りたいんだ?
私が死ななかった理由?
そんなのお前の準備不足とかじゃない?
なんで殺す相手に聞くんだ。
だんだん腹が立ってきた。
私何も悪くなくない?
「お前から聞いても何もわかりそうにないか」
「、、、そうだよ、本当にそうだよ!なんで私にそんなこと聞くんだよ、意味わかんない!だいたい私はお前のせいで記憶もなくなったのになんでそんなこと知っていると思ったんだよ!私は自分が何なのかも何もかもが分からないのに、なんでそんなこと聞くんだよ!殺すんだったら私のことさっさと殺せよ!!」
もう頭に来た。
今私は、こいつに記憶喪失になったことによる不満をぶつけてる。
そのくらいの権利は私にあると思う。
こいつのせいでこんなことになったんだから、、、
記憶喪失になって、正直、滅茶苦茶不安だった。
考えないようにはしてた。でも、心の底ではずっとずっと不安だった。
自分が何者なのか分からない、頼れる人もいない、これからどうすればいいかなんてわかんない。
そんな中で、もっと理解のしがたいやつが現れた、しかも私を殺そうとする。
怖くないわけがない、不安なわけがない。
人間なんだから、そう思わないはずがない。
「だいたいお前は何なんだよ!自分のことは話さず、相手には聞いてばっかりとか失礼にもほどがあるだろ!!」
自分が何を言っているのか分からなくなってきた、、、
自分がそうしたいのかも分からない。
ほんと、わかんないことだらけだ、、、、
「お前、記憶がないのか?」
やっと口を聞いたと思えば、そう聞いてきた。
「そうだよ!お前のせいで記憶喪失になったんだよ!!どうしてくれるんだ!」
はぁ、はぁ、はぁ。
感情任せに叫びすぎた。
もう疲れた、殺すなら殺してくれよ、、、
「それは本当か?」
「本当だよ、、、なんでそんなに聞くんだ、、、」
私がそう答えると、またも意味の分からないことを言われた。
「なら、お前を殺すことができないな」
、、、は?
何を言っているんだこいつは。
「私を殺すんじゃなかったの、、、?」
「そうだな、どうして生きているかを聞いてから、お前を殺すつもりだった」
「じゃあ、なんで?」
こいつは私を殺そうとした前科があるはずだ。なのに今更殺さないなんて、、、
いや、待て。こいつは『私を殺さない』のじゃなくて『殺すことができない』と言っていた。
その理由はなんだ?
「お前が記憶喪失だからだ」
「え?それと殺せないのに何が関係あるの?」
「それ言えない」
このころにはすでに私の怒りも冷めていた。
それよりもこいつの話が気になる。
とりあえずは安心して話を聞きくことができそうだし。
「なんで?それにあなたは何者なの?なんで私を殺そうとするの?ねぇ、なんであなたは、、」
「まぁ待て。物事にはなんでも順序というものがある。順序を外れるとことはうまく進まなくなる。だからお前は黙っていろ。俺が順序よく説明してやる」
なんだこいつは。順序 順序って。それに今になってどうして話すようになったんだ?
「そうだな、まずは俺が何者かについて答えようか」
「何者なの?まっ〇ろくろすけとか?」
「俺はそんな奴じゃない、逆にそう見えるか?」
え、逆にこんな奴がまっ〇ろくろすっけ分かるんだ、、、
実はジブ〇ファンとか?
ていうか私の調子もだいぶ戻ってきたな。
「そうだな、言葉にするなら俺は、命を刈り取る【死神】だな」
「死神?よく聞くあの?」
「そうだ」
この黒いやつの正体は死神だったのか。ていうか死神に抱いていたイメージと少し違うな。もっと骸骨で鎌を持ってたり、人を殺すことができるノートを持ってたり、卍解できたりするもんだと思ってた。
「次は何故お前のことを狙うのかだが、それは言えない」
「なんで?」
「そういうルールだからだ」
「なにそれ?死神界か尸魂界のルール?」
「そんなジャ〇プの世界は存在しないが、そう考えてくれて構わない」
こいつ私の冗談を分かってる!
死神はこの世界の創作物に詳しいのか?
それにしても、本当に私のことを殺さないのか?
嘘をついているだけじゃないか?
でも、嘘をつく理由も分からないし、、、
「そしてなぜおまえを殺すことができないかだが、それはさっきに言ったとおりだ」
「どういうこと?【死神は記憶喪失の人を殺せない】ってこと?」
「そうだ、話が早くて助かる」
意味わかんねぇ~。なんだそれ。
「死神が記憶喪失の人を殺せない」って意味不明じゃないか?
もっと「一度殺すのに失敗した人」は殺せないみたいなのなら不自然じゃないのに。
「どうして死神は記憶喪失の人を殺せないの?」
「それも言えない。言うとお前を狙う理由に繋がるからな」
なんか思ってたよりも話せること少なくね?
『言えない』ばっかりじゃん。
死神は秘密主義なのか?
何でもルールで済ませられると思うなよ。
、、、あれ?待てよ。ルールがあるということは、、、
「もしかして死神って、あなた以外にもいる?」
「そうだ。よく気が付いたな」
やっぱりか。
もしも死神がこいつだけならルールなんていらないよな。
それにしてもこんなのがまだいるのか、、、
「、、、死神ってどのくらいの数いるの?」
「さぁ?俺も知らないが、5桁はいるだろうな。なにせ俺たち死神はこの世界を存在させるための歯車のような存在、いうなれば人間の社会で言うところの社畜のようなものだ」
へェー、死神って社畜みたいな存在ナノカー。
なら私は社畜が仕事をするような感覚で殺されかけたってことか。
酷い話だな。
だが、それなら余計に訳が分からなくなる。
死神はこの世界を存在させるためにいると言っていた。
なら、私がこの世界に悪影響を及ぼすとでも言うのだろうか?
まさか将来私は世界征服を成し遂げてしまうとか?
違うだろうけど、、、
私っていったい何なんだろうね。