7-1:アイリスIF5大賞を分析&考察してみた!
アイリスIF5大賞(第5回)の開催期間は2024年6月20日から2024年9月19日まで。
第1~4回と同じように、女性向けの「恋愛」「ファンタジー」をメインテーマにした作品を募集していました。
アイリスIF5大賞(第5回)の応募作品は115作品読みました。
この第5回でも読んだ作品すべてに独自の評価点をつけています。
というわけで、その評価点をもとにいろいろ分析・考察した結果を発表していきますね。
数字がいっぱい出てくる上に長いので、要点のみ知りたい場合は下の方にある『まとめ』というところまで飛ばして見てください。
* * *
アイリスIF5大賞の応募総数は、締め切り(2024年9月20日)時点で2692作品でした。第1回は約2500作品、第2回は2048作品、第3回は1890作品、第4回は2571作品だったということを考えると、第5回は今までで一番応募数が多かったみたいです。重複応募可になってから、どんどん応募数が増えているようですね。
さて、今回も読む作品の条件は絞っています。
今回読んだのは、8万字から20万字の完結済み連載作品。
除外ワードは「悪役令嬢」「婚約破棄」「乙女ゲーム」「ざまあ(ざまぁ)」、そして「悲恋」。
それに加えて、「ボーイズラブ」「ガールズラブ」も除外。
男性向けの作品や、男性向けなのか女性向けなのか分からない作品も除外。
第1~4回&小学館FTノベル賞の時に読んだ作品も除外しています。
そうして絞り込みをした結果、115作品を読むことになりました。
ちなみに、第1~4回&小学館FTノベル賞のときに読んだので除外した作品が70作品、女性向けではないので除外した作品が81作品、流行ワードがタイトル・あらすじに入っていたため除外した作品が11作品ありました。
115作品の総合ポイントの分布はこんな感じ。
0~99pt:35作品。
100~999pt:49作品。
1000~2999pt:12作品。
3000pt~:19作品。
それでは、アイリスIF5大賞の応募作品につけた独自の評価点の結果を発表していきますね。
できるだけ平等に評価点をつけるため、事前に作品のポイントは確認せず、作者さまの実績なども調べず、その作品の内容のみで判断するようにしています。
評価点は思いきり主観的につけています。ご了承ください。
第1~4回の結果(女性向け作品に絞った数値)も合わせて発表します。
評価点の平均。
1.『読みやすいか』(5点満点)
0~99pt:1.9点【第1回2.3、第2回2.2 第3回2.0 第4回1.9】
100~999pt:2.4点【第1回2.7、第2回2.7 第3回2.5 第4回2.6】
1000~2999pt:2.5点【第1回2.8、第2回2.6 第3回2.8 第4回2.8】
3000pt~:2.5点【第1回3.0、第2回3.2 第3回2.7 第4回2.8】
2.『キャラは魅力的か』(5点満点)
0~99pt:2.5点【第1回2.6、第2回2.6 第3回2.4 第4回2.7】
100~999pt:2.8点【第1回3.1、第2回3.0 第3回2.7 第4回3.1】
1000~2999pt:2.9点【第1回3.1、第2回3.0 第3回3.1 第4回2.8】
3000pt~:2.7点【第1回3.1、第2回3.1 第3回2.7 第4回2.7】
3.『起承転結があるか(クライマックスで一番盛り上がっているか)』(5点満点)
0~99pt:2.1点【第1回2.7、第2回2.6 第3回2.0 第4回2.1】
100~999pt:2.1点【第1回2.8、第2回2.6 第3回2.5 第4回2.4】
1000~2999pt:2.1点【第1回2.9、第2回2.3 第3回2.5 第4回2.3】
3000pt~:2.2点【第1回2.5、第2回2.8 第3回2.3 第4回2.2】
4.『読後に満足感があるか』(5点満点)
0~99pt:1.8点【第1回2.1、第2回2.2 第3回2.0 第4回1.9】
100~999pt:2.1点【第1回2.7、第2回2.4 第3回2.3 第4回2.4】
1000~2999pt:2.2点【第1回2.7、第2回2.4 第3回2.5 第4回2.2】
3000pt~:2.0点【第1回2.5、第2回2.6 第3回2.3 第4回2.0】
合計評価点(20点満点)の平均。
本屋さんや図書館に並んでいそうなのが12.0点以上。
買いたいなと思うのが15.0点以上、というイメージです。
0~99pt:8.3点【第1回9.6、第2回9.6 第3回8.4 第4回8.7】
100~999pt:9.4点【第1回11.3、第2回10.7 第3回10.0 第4回10.4】
1000~2999pt:9.7点【第1回11.4、第2回10.3 第3回10.9 第4回10.1】
3000pt~:9.4点【第1回11.0、第2回11.6 第3回9.9 第4回9.7】
きゅんきゅん度の平均。
「きゅんきゅん度」とは、恋愛ものとして欠かせない心のときめきがどれくらいあるのかをパーセンテージで表したものです。
50%以上あれば、恋愛ものとして読める作品。
70%以上あれば、恋愛要素が多めで満足できる作品、という感じです。
0~99pt:38.3%【第1回34.2、第2回40.3 第3回29.6 第4回42.0】
100~999pt:45.1%【第1回46.0、第2回42.3 第3回45.5 第4回48.3】
1000~2999pt:51.7%【第1回45.9、第2回44.0 第3回51.2 第4回43.0】
3000pt~:43.6%【第1回42.8、第2回50.5 第3回49.0 第4回46.2】
きゅんきゅん度50%以上の作品(恋愛ものとして読める作品)との遭遇率。
0~99pt:48.6%【第1回24.6、第2回46.9 第3回40.0 第4回66.7】
100~999pt:71.4%【第1回46.2、第2回58.3 第3回64.5 第4回75.9】
1000~2999pt:83.3%【第1回59.3、第2回60.0 第3回82.6 第4回53.8】
3000pt~:47.4%【第1回52.7、第2回73.7 第3回84.2 第4回69.0】
きゅんきゅん率70%以上の作品(恋愛ものとして満足できる作品)との遭遇率。
0~99pt:5.7%【第1回1.5、第2回3.1 第3回8.0 第4回6.7】
100~999pt:6.1%【第1回14.1、第2回8.3 第3回0.0 第4回10.3】
1000~2999pt:8.3%【第1回25.9、第2回0.0 第3回5.9 第4回7.7】
3000pt~:5.2%【第1回3.6、第2回7.1 第3回0.0 第4回3.4】
好みに刺さったお気に入り作品の発掘数。
0~99pt:1作品【第1回2作品、第2回0作品 第3回2作品 第4回0作品】
100~999pt:3作品【第1回9作品、第2回2作品 第3回2作品 第4回3作品】
1000~2999pt:0作品【第1回4作品、第2回0作品 第3回1作品 第4回2作品】
3000pt~:0作品【第1回は2作品、第2回2作品 第3回0作品 第4回0作品】
アイリスIF5大賞でのお気に入り作品発掘率は3.5%。
【第1回9.6、第2回3.7 第3回5.4 第4回5.8】
おまけとして、10000pt以上の応募作品のデータもまとめてみます。
第5回に応募されていた10000pt以上の作品数:9作品【第1~4回34作品】
1.『読みやすいか』(5点満点)の平均:2.2点【第1~4回2.9点】
2.『キャラは魅力的か』(5点満点)の平均:2.4点【第1~4回2.9点】
3.『起承転結があるか(クライマックスで一番盛り上がっているか)』(5点満点)の平均:1.8点【第1~4回2.5点】
4.『読後に満足感があるか』(5点満点)の平均:1.6点【第1~4回2.2点】
合計評価点の平均:8.0点【第1~4回10.5点】
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『まとめ』
今回は全体的に、文章力が未熟な作品が多かった感じがします。だからなのか、平均評価点が今までで最も低くなるという悲しい結果になりました。
その中でも頑張っていたのは1000~2999ptの作品で、平均評価点が9.7点でした。その次に100~999ptと3000pt以上の作品が9.4点。一番低かったのは0~99ptの作品で8.3点でした。
恋愛ものとして読める作品との遭遇率はこれまでと同じような数値が出ているのですが、3000pt以上の作品では47.4%と、かなり低めになっていました。今回の高ポイント作品の半分は、恋愛ものとはいえないみたいです。
10000pt以上の作品については、「読みやすいか」が2.2点とかなり低く、読みにくさを感じる作品が多かったです。いつもはもっと読みやすい作品が多いんですけど、何があったんでしょうね。
今回のお気に入り作品の発掘率は3.4%。1000pt以上の作品からは発掘できませんでした。なので、私が推している作品が受賞や一次通過することはないと思われます。本当に悲しい。
ところで、今回文章力が未熟な作品が多いと感じた原因としては、応募作品のレベルが下がったというよりも、うさぎ妖精自身の読む力が上がっているからかもと思いました。この2年半ほどで、応募作品は750作品以上、図書館から借りた小説は軽く100冊は読んでますからね。素人とプロの文章力の違いがなんとなくわかるようになってしまいました。
素人の作品は、まず文章を書くための基本的なルールが守れていないことが多いです。プロはきちんとルールを守った文章を書いているので、読みやすさのレベルが違います。
文章を書くための基本的なルールって何? という方のために、簡単にまとめておきますね。
・行頭は一字空け。
・セリフが終わる時のカギカッコ後には句点を入れない(入れても間違いではないけれど、国語の教科書や昭和の小説みたいな古臭さが出てしまう)。「!」「?」のあとには一字分の空白を入れる。
・三点リーダー「…」、ダッシュ「―」は偶数単位で使用する。
・「てにをは」(助詞などを含む日本語)を正しく使う。
・音の重なりや、「の」の連続(「今後のアイリスの受賞作品の傾向の変化」というような文章)を避ける。
・文末の重複を避ける(「~だった」「~だった」など、同じ文末表現が続かないように)。
・顔文字、絵文字、環境依存文字などの記号は使わない。(笑)(汗)(爆)とかも使わない(地の文で使うと非常に安っぽい印象を与えてしまう)。
・オノマトペ(「ドッカーン」「にっこり」など)は作品の雰囲気に合わせて。純文学では絶対に使ってはいけないとされています。
原則をあえて破り、正しくない日本語を使うのもテクニックのひとつですが、これは上級者向けなので注意しましょう。
あと、今回すごく気になったのは、会話文のカギカッコの使い方がおかしな作品がいくつもあったこと。
同じ人物のセリフなのに、ひとつのカギカッコ内におさめてないのです。
「こんにちは」
「今日はいい天気ですね」
こんな感じで書かれていたら、二人の人物が会話していると思いますよね。なのに、実は話しているのは一人だけ、という書き方をしているのです。10000pt以上の高ポイント作品の中にもこの書き方をしている作品がありました。はっきりいって読みにくかったです。
「こんにちは。今日はいい天気ですね」
こうしてひとつのカギカッコ内におさめてくれると、すごく読みやすくなります。
それから、基本中の基本ですが、辞書をきちんと引きながら書きましょう。
「多めに見る」ではなく、「大目に見る」。「~せざるおえない」ではなく、「~せざるをえない」。「意を唱える」ではなく、「異を唱える」。
ベストセラー作家であっても、文章を書くときに辞書は必須らしいです。常に自分の日本語を疑って、調べる癖をつけているのだとか。
文章力を上げるためにおすすめなのは、自分の好きな作家さんの文章を研究することだそうです。文章はもちろん、記号や空白もすべて正確に書き写してみるとすごく勉強になります。
0~99ptの作品を読むのも意外とおすすめです。このポイント帯の作品を読んで、なぜ読みにくいのかを研究すると同じ間違いをしなくてすみます。
個人的に一番危険だと思うのは、ランキング作品の文章を真似ること。残念ながら今のランキング作品は文章力が未熟なものも多いので、真似る作品によっては文章力が下がるかもしれません。ランキング作品からは、どんな要素が流行っているのかを学ぶだけにしておく方が無難だと思います。
文章力が上がるだけで、作品の魅力も驚くほど上がります。
ネット小説を読むのもいいですが、できるだけ多くの書籍も読んで、基本をしっかり身につけることをおすすめします。
さて、うさぎ妖精は評価点をつけるために、文章力だけでなく他にもいろんなところを見ています。
一体どんなところを見ているの? と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれないので、次はうさぎ妖精の評価基準について、より詳しいお話をしていきますね。
「文章を書くための基本的なルール」については、この書籍を参考にして書いてみました。
榎本 秋 『ライトノベルを書きたい人の本』 成美堂出版 2008年
ところで、「2023年度 国語に関する世論調査」で、月に1冊も本を読まない人が6割を超えた――というニュースが出てましたね。本よりも、スマホやタブレットを見る時間の方が長い人が多いみたいです。
あれ? 月に5冊くらい読んでいる私は、もしかして、すごく読書しているタイプ? とビックリしました。
作者のみなさまは、月に本を何冊読んでますか?