6-2:【受賞傾向分析】アイリスIF4大賞の結果を分析&考察してみた!
2024年5月31日。
アイリスIF4大賞の結果発表がありました。
というわけで、今回も気になった部分を簡単にデータ分析&考察してみました。
今回も数字がいっぱい出てくるし、やたら長くて大変なので、すぐに結論が知りたいという方は『まとめ』というところまで飛ばして見てくださいね。
ちょっと悲しい気持ちになるお話なので、心の準備をお願いします。
* * *
①受賞作品について。
(結果発表後の2024年5月31日時点の数値をもとに計算しています)
金賞1作品 銀賞4作品 審査員特別賞1作品。
【前回:銀賞8作品 審査員特別賞5作品】(この「前回」というのは、2023年6月20日~9月19日に開催されていた「アイリスIF3大賞」のことです)
・応募総数すべて(2308作品【前回:1463作品】)に対しての受賞率:0.3%【前回:0.8%】
・総合ポイントの平均:24475pt【前回:15890pt】
金・銀賞:22148pt(最高31986pt 最低14174pt)
審査員特別賞:36114pt
・平均評価点の平均:9.1【前回:8.8】
金・銀賞:9.2(最高9.5 最低8.8)
審査員特別賞:8.8
・流行ワードが入っている確率:50.0%【前回:76.9%】
金・銀賞:40.0% 審査員特別賞:100%
・完結率:100%【前回:92.3%】
金・銀賞:100% 審査員特別賞:100%
・連載時期の範囲:2020年4月5日~2024年3月10日【前回:2020.12.15~2023.11.30】
金・銀賞:2020年4月5日~2024年3月10日
審査員特別賞:2023年11月1日~2023年11月2日
・文字数の平均
金・銀賞:106634字【前回:168607字】
(最高136680字 最低80000字)
審査員特別賞:27330字【前回:9448字】
・総合ポイントによる受賞作品数の違い
10000pt以上:6作品(100%)【前回:9作品(69.2%)】
10000pt未満:0作品(0.0%)【前回:4作品(30.8%)】
②一次通過作品(54作品【前回:40作品】)について
・総合ポイントの平均:19238pt【前回:15586pt】
(最高79398pt 最低698pt)
・平均評価点の平均:8.7【前回:8.8】
(最高9.5 最低7.0)
・流行ワードが入っている確率:68.5%【前回:52.5%】
・完結率:88.9%【前回:92.5%】
・文字数 10万字以上の長編:53.7%【前回:55.0%】
10万字未満:46.3%【前回:45.0%】
③一次通過・受賞した作品について
・総合ポイント別の作品数
一次通過・受賞した60作品【前回:53作品】を、総合ポイント別に分けてみます。
0~99pt:0作品【前回:0作品】
100~999pt:2作品【前回:3作品】
1000~2999pt:2作品【前回:2作品】
3000~9999pt:12作品【前回:10作品】
10000pt~:44作品【前回:38作品】
・文字数での通過率の違い
一次通過・受賞した60作品を、文字数10万字以上と未満で分けてみます。
10万字以上:32作品(53.3%)【前回:53作品中22作品(55.0%)】
10万字未満:28作品(46.7%)【前回:53作品中18作品(45.0%)】
④アイリスIF4大賞の結果分析&考察に関するQ&A。
Q.応募作品全体のポイント帯ってどんな感じだったの?
A.
0~99pt:33.7%【前回:43.6%】
100~999pt:23.1%【前回:29.8%】
1000~2999pt:10.4%【前回:9.9%】
3000~9999pt:13.8%【前回:9.7%】
10000pt~:12.0%【前回:6.9%】
(pt非公開などは計算できてません)
応募作品の88.0%は10000pt未満の作品でした。今回は10000pt以上の作品数が前回よりも3倍近く増えていたようです。前回は約100作品だったのに対し、今回は約276作品もありました。
この情報をもとに10000ptより上か下かで作品を2つに分けて、今回も簡単にですが通過率を計算してみます。
10000pt未満の作品・約1540作品のうち、一次通過・受賞したのは16作品。前回とほぼ同じで通過率約1%です。
一方、10000pt以上の作品・約276作品のうち、一次通過・受賞したのは44作品。通過率は15.9%。第1回は約40%、第2回は約28.5%、第3回は約38.0%だったことを踏まえると、これまでで一番厳しかったといえそうです。
とはいえ、やっぱり10000pt以上の作品の通過率は高め。10000pt未満の作品の約16倍は通過しています。ちなみに前回は約35倍。少しポイント格差がなくなったように見えますが、これは10000pt以上の作品数の通過率自体が低くなっただけの変化なので、10000pt未満に厳しい傾向はまるで変わっていません。
よって、アイリスでは毎回ポイント重視の選考が行われているといえそうです。
Q.ポイントで足切りしてそう?
A.前回と同じく足切りは100ptかも。ただし、きちんと読んでもらえているのは、おそらく10000pt以上のものだけだと思います。3000~9999ptは適当に目についたものを読んで、よかったら通過させる感じ?
3000pt未満で一次通過しているものもありますが、これは作品の質ではなく運で通過しているだけだと思われます。このポイント帯、平均評価点7.0で通過している作品があるのですが、これはさすがに低すぎて一次通過しているのが異常。きちんと読んでいるのなら、通過させるわけがないレベル。うーん、どうやら「ポイント関係なく選んでいる」とアピールしたいがために通過させている作品があるみたいですね。
Q.今回も内容が面白いものが通過してる?
A.今回の一次通過・受賞作品の平均評価点を見ると、8.5以下のものが60作品中9作品(15.0%)でした。ちなみに、前回は53作品中8作品(15.0%)。同じですね。
ただ、受賞作品は平均評価点9.1と今までで最も高い数値を叩き出してきました。より面白いものを受賞させようとしていたみたいですね。
Q.平均評価点って高ければ高いほど本当に面白いの?
A.一応、平均評価点8.0以上は普通、8.5以上は面白い、9.0以上はかなり面白いというイメージなのですが……高ければ高いほどいいかというと、実はそうでもありません。
もちろん本当に面白くて高評価の作品もたくさんあります。けれども高評価作品の中には、良くも悪くも「小説家になろう」に染まりすぎていて、「なろう」に親しみがない読者への配慮が致命的に欠けている作品も珍しくないのです。
じゃあ平均評価点は意味がないのかというと、それも違います。平均評価点8.0を下回る作品はやっぱり微妙なことが多いです。
ちなみに、私の好みに刺さるのは8.5~9.0くらいの作品が多いですね。もしかすると、一般受けしやすいのはこのくらいの評価点の作品なのかもしれません。
Q.受賞するにはポイントがどれくらい必要なの?
A.10000pt以上は必要です。前回は5000pt以上ならチャンスがあったのですが、今回は10000pt以上の応募作品が増えていたので、ポイント重視の選考に戻ってしまったみたいです。悲しい。
まあ、主な選考対象が10000pt以上の作品というのは今までと変わっていないですね。
Q.新しい作品の方がいいの?
A.今回は新しい作品でなくてもチャンスがあったみたいです。受賞作品6作品のうち4作品がコンテスト開始の約1年以内に連載していた作品、残りの2作品は3年前(2020年)に連載開始したものでした。
どうやら開始時期よりもポイントの方が重要だったようです。
Q.文字数はどのくらいがおすすめ?
A.文字数は15万字未満がよかったかも。ただし完結していないとダメ。
30万字を超えるような大長編はやっぱり不利です。今までと同じように、たとえ一次通過しても受賞は逃します。
今回、残念ながら短編は全滅していますね。最低でも27000字くらいは書かないといけなかったみたいです。
Q.ジャンルのおすすめは?
A.異世界恋愛。それ以外のジャンルで受賞するのはおそらく無理。
今回は転生ものも2作品受賞しています。一次通過作品にも転生ものが増えていた印象なので、意外とそういう作品が求められているのかもしれません。転移よりは転生が好まれているようです。
ちなみに今回はハイファンタジーが2作品、ローファンタジーが1作品、推理が1作品、一次通過していました。今までと比べると多い印象。でもやっぱり異世界恋愛以外の受賞は無理みたいです。
Q.流行ワード(『悪役令嬢』『婚約破棄』『乙女ゲーム』『ざまあ/ざまぁ』)が入っている作品が有利なの?
A.今回は有利どころか不利だったかも。
そもそも10000pt以上の作品のうち、流行ワードが使われている作品は約70%。そして、今回の受賞作品の流行ワード使用率は50.0%。かなり流行ワード作品を避けた感じがします。
一次通過作品を見ても、流行ワード使用率は68.0%で、特に流行ものを優遇してはいなかったようです。
Q.今回の受賞作品で気になることは?
A.短編作品の受賞がなかったこと。審査員特別賞も1作品(連載形式で完結済み)のみで、寂しい結果でした。
文字数の少ない作品は、だんだん求められなくなってきているみたいです。
Q.アイリスは優秀な新人さんを発掘する気はある?
A.残念ながら、ないと思われます。
100~2999ptのポイント帯には良作が多いのに、アイリスは全く発掘できていません。ポイント重視の選考を止めるつもりはなさそうなので、期待しても無駄かも。
Q.うさぎ妖精さんが読んで評価した作品で、受賞したものはある?
A.今回は3作品ありました。
ちなみに私がその受賞作品につけた評価点がどのくらいだったかというと――1作品目は20点満点中13点。序盤は良いんですけど、終盤に行くにつれて面白さがダウンしていく作品でした。すごく惜しい。
2作品目は20点満点中12点。キャラは良いんですけど、ストーリー構成力が物足りない作品でした。惜しい。
3作品目は20点満点中10点。ストーリー構成力と読後の満足感が低め。もう少し頑張ってほしかった作品でした。
きゅんきゅん度は60%、50%、50%。どれも恋愛ものとして読めるレベル。
小学館FTノベル賞と比べたら、良作が多く受賞しています。というか、本当に小学館FTノベル賞って応募作品を真剣に読んでなかったんだと思いました。
Q.うさぎ妖精さんが読んで評価した作品で、一次通過したものはある?
A.今回は6作品ありました。
その6作品に私がつけた評価点は、12点、11点、8点、7点、6点、5点でした。やっぱり受賞作品と比べると低いですね。
きゅんきゅん度は50%、50%、20%、40%、30%、30%でした。うさぎ妖精が恋愛ものとして読めないと判断したものは受賞していないようです。受賞したいなら、恋愛をきちんと描写しないとダメということかな?
Q.そういえば、うさぎ妖精さんのお気に入り作品の結果はどうだったの?
A.今回うさぎ妖精が発掘したお気に入り作品は5作品。うーん、受賞も一次通過もしなかったです。残念。
今回も3000pt以上の作品で好みに刺さるものがなかったので、しかたないですね。
* * *
『まとめ』
アイリスIF4大賞で受賞するにはどんな作品が有利だったのか、簡単にまとめておきます。
①異世界恋愛ジャンルの作品【前回と同じ程度 →】
②完結作品【前回よりも重要 ↑】
③総合ポイント10000pt以上の作品【前回よりも重要 ↑】
④平均評価点8.8(★4.4)以上の作品【前回よりもかなり重要 ↑↑】
⑤8万字以上15万字以内の作品【NEW!】
⑥連載開始約1年以内の新しい作品【前回よりも下 ↓】
⑦流行ワードの要素がある作品【前回よりも下 ↓】
重要視されていると思われる順番で並べてみました。
【アイリスIF4大賞の結果に関しての感想】
《良い点》
これまで通り文庫本1~2冊程度の完結作品が優遇されているところは、とても良かったです。買って読むにはちょうどよい長さですよね。
恋愛ものとして読める作品が受賞しているのも嬉しかったです。流行ものではない作品が多めに受賞していたのも良かったと思います。
《気になる点》
やっぱりポイント重視なところ。
10000pt未満の作品を真剣に選考していないのは非常に残念です。内容が微妙な作品を一次通過させているのも納得ができませんでした。応募要項に「ポイント重視」と書いていないのだから、きちんとポイント関係なく読んで内容で選考するべきだと思います。
受賞作品数が大幅に減ってしまったのも残念でした。
《一言》
今回は10000pt以上の作品がこれまでよりも多く集まったせいか、前回よりもひどいポイント重視の選考が行われてしまった印象です。ポイントが伸び悩んでいる良作が全く発掘されませんでした。
それでも、小学館FTノベル賞と比べると、アイリスでは良作が受賞しているイメージですね。10000pt以上の作品を過剰に優遇するのさえ止めてくれれば、もっと良いコンテストになると思います。
今回はうさぎ妖精のお気に入り作品が受賞していないので、ものすごくガッカリしました。次回に期待します。
以上。
アイリスIF4大賞の結果分析&考察でした。
何かひとつでも参考にしてもらえるところがあれば嬉しいです。
次回のアイリスが開催されるのは、今まで通りのペースだと2024年6月20日~9月19日になりそう。
そうなるとネトコンと期間がかぶってしまうので、どのコンテストを優先するかよく考えたうえで応募することをおすすめします。
アイリスIF4大賞に応募した作者のみなさま、お疲れさまでした!