6-1:アイリスIF4大賞を分析&考察してみた!
アイリスIF4大賞(第4回)の開催期間は2023年12月20日から2024年3月19日まで。
第1~3回と同じように、女性向けの「恋愛」「ファンタジー」をメインテーマにした作品を募集していました。
アイリスIF4大賞(第4回)の応募作品は86作品読みました。
この第4回でも読んだ作品すべてに独自の評価点をつけています。
というわけで、その評価点をもとにいろいろ分析・考察した結果を発表していきますね。
数字がいっぱい出てくる上に長いので、要点のみ知りたい場合は下の方にある『まとめ』というところまで飛ばして見てください。
* * *
アイリスIF4大賞の応募総数は、締め切り(2024年3月20日)時点で2571作品でした。第1回は約2500作品、第2回は2048作品、第3回は1890作品だったということを考えると、第4回は今までで一番応募数が多かったといえそうです。今回はネトコンと応募期間がかぶっていなかったので、たくさんの作品が集まったのだと思います。
さて、今回も読む作品の条件は絞っています。
今回読んだのは、8万字から20万字の完結済み連載作品。
除外ワードは「悪役令嬢」「婚約破棄」「乙女ゲーム」「ざまあ(ざまぁ)」、そして「悲恋」。
それに加えて、「ボーイズラブ」「ガールズラブ」も除外。
男性向けの作品や、男性向けなのか女性向けなのか分からない作品も除外。
第1~3回&小学館FTノベル賞の時に読んだ作品も除外しています。
そうして絞り込みをした結果、86作品を読むことになりました。
ちなみに、第1~3回&小学館FTノベル賞の時に読んだので除外した作品が50作品、女性向けではないので除外した作品が57作品、流行ワードがタイトル・あらすじに入っていたため除外した作品が7作品ありました。
86作品の総合ポイントの分布はこんな感じ。
0~99pt:15作品。
100~999pt:29作品。
1000~2999pt:13作品。
3000pt~:29作品。
それでは、アイリスIF4大賞の応募作品につけた独自の評価点の結果を発表していきますね。
できるだけ平等に評価点をつけるため、事前に作品のポイントは確認せず、作者さまの実績なども調べず、その作品の内容のみで判断するようにしています。
評価点は思いきり主観的につけています。ご了承ください。
第1~3回の結果(女性向け作品に絞った数値)も合わせて発表します。
評価点の平均。
1.『読みやすいか』(5点満点)
0~99pt:1.9点【第1回2.3、第2回2.2 第3回2.0】
100~999pt:2.6点【第1回2.7、第2回2.7 第3回2.5】
1000~2999pt:2.8点【第1回2.8、第2回2.6 第3回2.8】
3000pt~:2.8点【第1回3.0、第2回3.2 第3回2.7】
2.『キャラは魅力的か』(5点満点)
0~99pt:2.7点【第1回2.6、第2回2.6 第3回2.4】
100~999pt:3.1点【第1回3.1、第2回3.0 第3回2.7】
1000~2999pt:2.8点【第1回3.1、第2回3.0 第3回3.1】
3000pt~:2.7点【第1回3.1、第2回3.1 第3回2.7】
3.『起承転結があるか(クライマックスで一番盛り上がっているか)』(5点満点)
0~99pt:2.1点【第1回2.7、第2回2.6 第3回2.0】
100~999pt:2.4点【第1回2.8、第2回2.6 第3回2.5】
1000~2999pt:2.3点【第1回2.9、第2回2.3 第3回2.5】
3000pt~:2.2点【第1回2.5、第2回2.8 第3回2.3】
4.『読後に満足感があるか』(5点満点)
0~99pt:1.9点【第1回2.1、第2回2.2 第3回2.0】
100~999pt:2.4点【第1回2.7、第2回2.4 第3回2.3】
1000~2999pt:2.2点【第1回2.7、第2回2.4 第3回2.5】
3000pt~:2.0点【第1回2.5、第2回2.6 第3回2.3】
合計評価点(20点満点)の平均。
本屋さんや図書館に並んでいそうなのが12.0点以上。
買いたいなと思うのが15.0点以上、というイメージです。
0~99pt:8.7点【第1回9.6、第2回9.6 第3回8.4】
100~999pt:10.4点【第1回11.3、第2回10.7 第3回10.0】
1000~2999pt:10.1点【第1回11.4、第2回10.3 第3回10.9】
3000pt~:9.7点【第1回11.0、第2回11.6 第3回9.9】
きゅんきゅん度の平均。
「きゅんきゅん度」とは、恋愛ものとして欠かせない心のときめきがどれくらいあるのかをパーセンテージで表したものです。
50%以上あれば、恋愛ものとして読める作品。
70%以上あれば、恋愛要素が多めで満足できる作品、という感じです。
0~99pt:42.0%【第1回34.2、第2回40.3 第3回29.6】
100~999pt:48.3%【第1回46.0、第2回42.3 第3回45.5】
1000~2999pt:43.0%【第1回45.9、第2回44.0 第3回51.2】
3000pt~:46.2%【第1回42.8、第2回50.5 第3回49.0】
きゅんきゅん度50%以上の作品(恋愛ものとして読める作品)との遭遇率。
0~99pt:66.7%【第1回24.6、第2回46.9 第3回40.0】
100~999pt:75.9%【第1回46.2、第2回58.3 第3回64.5】
1000~2999pt:53.8%【第1回59.3、第2回60.0 第3回82.6】
3000pt~:69.0%【第1回52.7、第2回73.7 第3回84.2】
きゅんきゅん率70%以上の作品(恋愛ものとして満足できる作品)との遭遇率。
0~99pt:6.7%【第1回1.5、第2回3.1 第3回8.0】
100~999pt:10.3%【第1回14.1、第2回8.3 第3回0.0】
1000~2999pt:7.7%【第1回25.9、第2回0.0 第3回5.9】
3000pt~:3.4%【第1回3.6、第2回7.1 第3回0.0】
好みに刺さったお気に入り作品の発掘数。
0~99pt:0作品【第1回2作品、第2回0作品 第3回2作品】
100~999pt:3作品【第1回9作品、第2回2作品 第3回2作品】
1000~2999pt:2作品【第1回4作品、第2回0作品 第3回1作品】
3000pt~:0作品【第1回は2作品、第2回2作品 第3回0作品】
アイリスIF4大賞でのお気に入り作品発掘率は5.8%。
【第1回9.6、第2回3.7 第3回5.4】
おまけとして、10000pt以上の応募作品のデータもまとめてみます。
第4回に応募されていた10000pt以上の作品数:9作品【第1~3回25作品】
1.『読みやすいか』(5点満点)の平均:2.7点【第1~3回3.0点】
2.『キャラは魅力的か』(5点満点)の平均:2.8点【第1~3回3.0点】
3.『起承転結があるか(クライマックスで一番盛り上がっているか)』(5点満点)の平均:2.0点【第1~3回2.6点】
4.『読後に満足感があるか』(5点満点)の平均:1.8点【第1~3回2.4点】
合計評価点の平均:9.2点【第1~3回11.0点】
* * *
『まとめ』
今回は100~999ptの作品が平均評価点10.4点で、一番点数が高かったです。これは意外でした。
その次に1000~2999ptの作品が10.1点、3000pt以上の作品が9.7点と続きます。一番低かったのは0~99ptの作品で8.7点でした。
なんとなくですが、最近の作品は全体的に起承転結が弱く盛り上がりに欠ける作品が多い気がします。文章力やキャラクターの魅力という点においてはこれまでとそんなに変わらないのですが、ストーリー構成力がいまひとつの作品が増えていて、読後の満足度が低くなりがち。
というか、クライマックスで「女主人公が誘拐されるけど、恋のお相手となる男性が助けにくる」展開が多い。びっくりするほど多い。しかも演出力(ドラマチックに描写する力)が物足りなくて、全然盛り上がった気がしない。演出力が乏しいと、無駄に文字数が多いだけのあらすじを読んでいるみたいな感じになります。ありきたりの展開を使いたいなら、演出力はぜひ磨いておいてほしいところです。
今回は、恋愛ものとして読める作品との遭遇率も思ったより高くありませんでした。前回は1000pt以上の作品の約80%は「恋愛もの」でしたが、今回は約70%と少し減少しています。
でも、0~99ptのポイント帯における「恋愛もの」は、これまでは約40%くらいだったのに、今回は66.7%と大幅アップしていました。これは良い傾向ですね。嬉しい。
10000pt以上の作品については、とにかく読後の満足感の低さが目立っていました。なんと5点満点中1.8点。どのポイント帯と比べても、一番点数が低いという結果に。
読後の満足感が低い作品というのは、「ラストが弱い(腑に落ちない、完結していない)」「カタルシス(精神的な緊張や抑圧された感情が解放され、心の浄化や安らぎを得る状態)がない」「不快に感じる(差別や蔑視、偏見など)」「救い(希望)がない」「しらける(受け狙いですべっている)」などの問題点を抱えています。個人的な印象ですが、10000pt以上の応募作品で一番多いのは「カタルシスがない」ですね。「緊張や抑圧」が弱すぎて、解放されたときのスッキリ感がほとんど感じられないのです。
さらに、10000pt以上の作品は「設定、展開に既視感がある(既存の作品とかぶる)」「ストーリーに意外性がない」「著者の個性が感じられない(印象に残らない)」など、新味(オリジナリティ)に欠けるものが多いです。
私はオリジナリティがある作品の方が好きなので、ここも読後の満足感の低さに響いてしまったのかなと思いました。
アイリスIF4大賞の応募作品で、カタルシスがあり、オリジナリティもある作品が比較的多かったのは、100~2999ptのポイント帯でした。
ランキングが好みに合わないと感じているなら、このあたりのポイント帯の作品を読むのがおすすめです。
今回のお気に入り作品の発掘率は『5.8%』。20作品読んだら1作品くらいの確率で発掘できる感じ。
残念ながら3000pt以上の作品からは発掘できませんでした。なので、私が推している作品が受賞や一次通過するのは難しいかも。
アイリスIF4大賞の結果発表は2024年5月末の予定です。
結果が出たら、また分析&考察したいと思います。
小説の問題点については、この書籍を参考にして書いてみました。
鈴木 輝一郎 『何がなんでもミステリー作家になりたい!』 河出書房新社 2019年
ミステリーだけじゃなく、他のジャンルの小説を書くときにも参考になりそうなことが書いてある書籍です。
今回参考にしたのは「小説現代長編新人賞」というコンテストのデータがのっている部分です。一次通過以上の作品講評についてまとめてあります。小説の問題点が容赦なく指摘されているので、作者さまは一度目を通しておくと勉強になるかも。