3-3:【受賞傾向分析】アイリスIF3大賞の結果を分析&考察してみた!
2023年11月30日。
アイリスIF3大賞の結果発表がありました。
というわけで、今回も気になった部分を簡単にデータ分析&考察してみました。
今回も数字がいっぱい出てくるし、やたら長くて大変なので、すぐに結論が知りたいという方は『まとめ』というところまで飛ばして見てくださいね。
ちょっと悲しい気持ちになるお話なので、心の準備をお願いします。
* * *
①受賞作品について。
(結果発表後の2023年12月1日時点の数値をもとに計算しています)
銀賞8作品 審査員特別賞5作品。
【前回:金賞1作品 銀賞8作品 審査員特別賞11作品】(この「前回」というのは、2022年12月20日~3月20日に開催されていた「アイリスIF2大賞」のことです)
・応募総数すべて(1463作品【前回:1648作品】)に対しての受賞率:0.8%【前回:1.2%】
・総合ポイントの平均:15890pt【前回:29403pt】
銀賞:10851pt(最高19180pt 最低400pt)
審査員特別賞:23953pt(最高32584pt 最低14436pt)
・平均評価点の平均:8.8【前回:8.8】
銀賞:9.0(最高9.6 最低8.6)
審査員特別賞:8.5(最高8.9 最低8.0)
・流行ワードが入っている確率:76.9%【前回:65.0%】
銀賞:75.0% 審査員特別賞:80.0%
・完結率:92.3%【前回:94.1%(実質100%)】
銀賞:87.5% 審査員特別賞:100%
・連載時期の範囲:2020年12月15日~2023年11月30日【前回:2021.6.26~2023.5.23】
銀賞:2020年12月15日~2023年11月30日(完結作品は2023年9月23日)
審査員特別賞:2021年9月13日~2023年8月21日
・文字数の平均
銀賞:168607字【前回:135581字】
(最高572257字 最低25172字)
審査員特別賞:9448字【前回:10551字】
(最高12854字 最低6849字)
・総合ポイントによる受賞作品数の違い
10000pt以上:9作品(69.2%)【前回:17作品(85.0%)】
10000pt未満:4作品(30.8%)【前回:3作品(15.0%)】
②一次通過作品(40作品【前回:29作品】)について
・総合ポイントの平均:15586pt【前回:22748pt】
(最高42362pt 最低804pt)
・平均評価点の平均:8.8【前回:8.9】
(最高9.4 最低7.7)
・流行ワードが入っている確率:52.5%【前回:62.1%】
・完結率:92.5%【前回:96.6%】
・文字数 10万字以上の長編:55.0%【前回:31.0%】
10万字未満:45.0%【前回:69.0%】
③一次通過・受賞した作品について
・総合ポイント別の作品数
一次通過・受賞した53作品【前回:49作品】を、総合ポイント別に分けてみます。
0~99pt:0作品【前回:0作品】
100~999pt:3作品【前回:2作品】
1000~2999pt:2作品【前回:3作品】
3000~9999pt:10作品【前回:7作品】
10000pt~:38作品【前回:37作品】
・文字数での通過率の違い
一次通過・受賞した53作品を、文字数10万字以上と未満で分けてみます。
10万字以上:22作品(55.0%)【前回:49作品中14作品(28.6%)】
10万字未満:18作品(45.0%)【前回:49作品中35作品(71.4%)】
④アイリスIF3大賞の結果分析&考察に関するQ&A。
Q.応募作品全体のポイント帯ってどんな感じだったの?
A.
0~99pt:43.6%【前回:44.3%】
100~999pt:29.8%【前回:28.0%】
1000~2999pt:9.9%【前回:9.6%】
3000~9999pt:9.7%【前回:9.9%】
10000pt~:6.9%【前回:7.7%】
(pt非公開などは計算できてません)
前回と同じく、応募作品の90%以上は10000pt未満の作品でした。
この情報をもとに10000ptより上か下かで作品を2つに分けて、今回も簡単にですが通過率を計算してみました。
10000pt未満の作品・約1350作品のうち、一次通過・受賞したのは15作品。前回とほぼ同じで通過率約1%です。
一方、10000pt以上の作品・約100作品のうち、一次通過・受賞したのは38作品。通過率は38.0%。前々回は約40%、前回は通過率約28.5%だったことを踏まえると、前々回の水準に戻ったみたいです。
でも、相変わらず10000pt以上の作品の通過率は異常。10000pt未満の作品の約35倍は通過しています。ちなみに前回は約32倍でした。
よって、アイリスでは毎回ポイント重視の選考が行われているといえそうです。
Q.ポイントで足切りしてそう?
A.足切りは100ptかも。ただし、きちんと読んでもらえているのは、おそらく10000pt以上のものだけだと思います。10000pt以上の作品が微妙だったら、5000pt以上に目を通す感じ?
とはいっても、5000pt未満の作品は書籍化やコミカライズなどの実績がある人のものは読むけど、それ以外はほとんど読んでいないと思われます。
Q.今回も内容が面白いものが通過してる?
A.今回の一次通過・受賞作品の平均評価点を見ると、8.5以下のものが53作品中8作品(15.0%)でした。ちなみに、前回は49作品中2作品(4.1%)。
(平均評価点8.0以上は普通、8.5以上は面白い、9.0以上はかなり面白いというイメージです)
どうやら今回の通過作品は、前回よりも面白いものが減ったみたいです。
Q.受賞するにはポイントがどれくらい必要なの?
A.今回はすごく驚いたのですが、5000pt以上ならチャンスがあったみたいです。5000pt以上10000pt未満の作品が3作品も銀賞を受賞していました。
でも、一次選考の結果も合わせて考えると、主な選考対象が10000pt以上の作品というのは今までと変わっていないと思われます。
というか、今回は応募作品の総数が減っていたうえに、その中の女性向けの作品が約60%しかなかったので(今までは応募総数の約80%は女性向けでした)、こういう珍しい結果になっただけかも。
Q.新しい作品の方がいいの?
A.今回も新しい作品が有利だったようです。銀賞8作品のうち6作品はコンテスト開始の約1年以内に連載していた作品で、審査員特別賞では5作品のうち4作品が約1年以内の作品でした。
受賞を狙うなら、やっぱりコンテスト開催時期から約1年以内の新しい作品が有利なようです。
Q.文字数はどのくらいがおすすめ?
A.今回は文字数は20万字未満がよかったかも。今までと同じように完結している方が良いです。短編なら2万字未満がおすすめで、長編なら9万字以上20万字未満がおすすめです。
30万字を超えるような大長編はやっぱり不利。たとえ一次通過しても受賞は逃すというパターンが非常に多いです。
それから、今回はどちらかというと短編よりも長編の方が求められていたようです。前回とは真逆な印象。
Q.ジャンルのおすすめは?
A.異世界恋愛。それ以外のジャンルで受賞するのはおそらく無理。
今回は転生も転移も必要なかったみたいです。一次通過作品に1作品だけハイファンタジーがありましたが、他は全部異世界恋愛でした。
Q.流行ワード(『悪役令嬢』『婚約破棄』『乙女ゲーム』『ざまあ/ざまぁ』)が入っている作品が有利なの?
A.今回は有利だったみたいです。
そもそも10000pt以上の作品のうち、流行ワードが使われている作品は約70%。そして、今回の受賞作品の流行ワード使用率は76.9%。ちょっとだけ受賞作品の方が数値が上回っていました。
Q.今回の受賞作品で気になることは?
A.審査員特別賞の受賞作品数がかなり減ったこと。前回は11作品が受賞したのに、今回は5作品しか受賞していません。
これまでに審査員特別賞をとった作者さまの『短編』作品は、どんなにポイントが高くても受賞させてもらってないみたいです。つまり、短編で2回目の受賞は難しいということ。
ただ、前回審査員特別賞をとった作者さまの『長編』作品が、今回銀賞を受賞しているようです。というわけで、過去に審査員特別賞をとった作者さまがもし次回もアイリスに挑戦するというのなら、10万字程度の長編完結作品を書くことをおすすめします。
Q.アイリスは優秀な新人さんを発掘する気はある?
A.残念ながら、ないと思われます。
ポイントが伸び悩んでいるのに受賞や一次通過している作品は、ほとんどが既に書籍化していたりコミカライズしていたりする作者さまのものです。もしくは他の小説投稿サイトでランキング上位をとったとか、公募で二次選考を通過したとか、そういう他の場所での実績がある作者さまのもの。
でも、そういう実績がなくても面白い作品を書ける作者さまって、このなろうには多くいらっしゃるんですよね。そういう作者さまは、アイリスではなく他のコンテストに応募する方がいいと思います。
Q.うさぎ妖精さんが読んで評価した作品で、受賞したものはある?
A.今回は2作品ありました。
ちなみに私がその受賞作品につけた評価点がどのくらいだったかというと――1作品目は20点満点中14点です。優秀! ただし、この作品は気になる点(おそらく小学生でも気付くレベルのミス)があったので、そこをきちんと修正した方がいいかな。
2作品目は20点満点中8点。もし何も知らずにこの本を買ってしまったら、私だったら後悔するというレベルでした。もちろんこの評価点は私の好みかどうかを基準にしてつけているので、他の人が読んだら面白いのかもしれませんが……せめて12点は超えてほしかったです。残念。
Q.そういえば、うさぎ妖精さんのお気に入り作品の結果はどうだったの?
A.今回うさぎ妖精が発掘したお気に入り作品は5作品。そのうち1000~2999ptの1作品が一次通過していました!
正直、「え?」と思いました。今回は3000pt以上の作品で好みに刺さるものがなくて、私のお気に入り作品はどれも一次通過しないんだろうなあとがっかりしていたのです。でも、1作品だけだけど、一次通過してる!
え、もしかしてアイリスの選考さんに私のブックマークが覗かれてるのかな……? えええ、そんなのドキドキしちゃう! あ、もっと見ていいですよ? そして私の好みの作品をどんどん受賞・一次通過させてください! イラストが好みに合えば、本を買いますよ!
まあ、良い作品はちゃんと結果が出るってことですね。なんかホッとしました。
* * *
『まとめ』
アイリスIF3大賞で受賞するにはどんな作品が有利だったのか、簡単にまとめておきます。
①異世界恋愛ジャンルの作品【NEW!】(当然すぎて今までスルーしてた!)
②完結作品【前回よりも下 ↓】
③総合ポイント5000pt以上の作品【NEW!】
④平均評価点8.5(★4.2)以上の作品【前回よりも下 ↓】
⑤20万字以内の作品【NEW!】
⑥連載開始約1年以内の新しい作品【前回と同じ程度 →】
⑦流行ワードの要素がある作品【前回よりも重要 ↑】
重要視されていると思われる順番で並べてみました。
【アイリスIF3大賞の結果に関しての感想】
《良い点》
第1回と第2回の結果と比べると、受賞作品のポイントが少しだけ控えめになったところ。
今回は受賞作品の30.8%が10000pt未満の作品でした。前回は15.0%しかなかったので、これはかなり理想に近付いたと思います。とはいっても、5000pt以上はないとやっぱり厳しいですけどね。
これまで通り文庫本1~2冊程度の完結作品が優遇されているところは、とても良かったです。買って読むにはちょうどよい長さですよね。
そして、うさぎ妖精の選んだお気に入り作品が3000pt未満であるにもかかわらず、一次通過していて本気でビックリしました。面白い作品を通過させようとしてくださって、ありがとうございます!
《気になる点》
やっぱりポイント重視なところ。
今回の受賞作品だけ見ると勘違いしそうになりますが、一次通過作品も含めて考えると10000pt以上の作品を優遇する傾向は全く変わっていません。10000pt以上の作品が10000pt未満の作品と比べて約35倍も有利になっているというのは非常に残念でした。流行ワード作品が多いのも個人的には悲しいです。
優秀な新人さんを発掘する気がないのというのも、とても残念でした。
《一言》
既に実績がある作者さまはポイントが伸び悩んでいても優遇してもらえる可能性が高いので、アイリスはおすすめです。
ただ、優秀な新人さんがアイリスに応募するのはあまりおすすめできません。どんなに面白い作品を書いてもポイントが10000pt以上なければ、おそらく見てもらえないからです。
作品の内容よりも、ポイントと実績が重要。アイリスはそういうコンテストです。
アイリス受賞作品の本を購入しようと考えている人は、買う前に一度お話の内容を確認しておくことをおすすめします。
以上。
アイリスIF3大賞の結果分析&考察でした。
何かひとつでも参考にしてもらえるところがあれば嬉しいです。
次は、「ネット小説大賞(ネトコン)」と「アイリス」について書いていきます。




