2-3:【受賞傾向分析】アイリスIF2大賞の結果を分析&考察してみた!
2023年5月31日。
アイリスIF2大賞の結果発表がありました。
というわけで、アイリスIF2大賞の結果で気になった部分を簡単にデータ分析&考察してみました。
数字がいっぱい出てくるし、やたら長くて大変なので、すぐに結論が知りたいという方は『まとめ』というところまで飛ばして見てくださいね。
ちょっと悲しい気持ちになるお話なので、心の準備をお願いします。
* * *
①受賞作品について。
(結果発表のあった2023年5月31日時点の数値をもとに計算しています)
金賞1作品 銀賞8作品 審査員特別賞11作品。
【前回:金賞1作品 銀賞7作品 審査員特別賞9作品】(この「前回」というのは、2022年3月10日~6月9日に開催されていた「アイリスIF大賞」のことです)
・応募総数すべて(1648作品【前回:2143作品】)に対しての受賞率:1.2%【前回:0.8%】
・総合ポイントの平均:【前回:26356pt】
金・銀賞:30954pt(最高92820pt 最低734pt)
審査員特別賞:28133pt(最高41528pt 最低2402pt)
・平均評価点の平均:8.8【前回:8.9】
金・銀賞:8.9(最高9.3 最低8.6)
審査員特別賞:8.8(最高9.2 最低8.5)
・流行ワードが入っている確率:65.0%【前回:52.9%】
金・銀賞:77.8% 審査員特別賞:45.5%
・完結率:90.0%(ただし連載中のものも本編は完結済みなので、実質100%)【前回:94.1%(実質100%)】
金・銀賞:77.8%(実質100%) 審査員特別賞:100%
・連載時期の範囲:2021年6月26日~2023年5月23日【前回:2016.5.25~2022.8.31】
金・銀賞:2021年12月24日~2023年5月23日(本編完結は2023年3月22日)
審査員特別賞:2021年6月26日~2023年3月20日
・文字数の平均
金・銀賞:135581字【前回:248612字】
(最高268111字 最低21061字)
審査員特別賞:10551字【前回:17644字】
(最高21274字 最低3998字)
・総合ポイントによる受賞作品数の違い
10000pt以上:17作品(85.0%)
10000pt未満:3作品(15.0%)
②一次通過作品(29作品【前回:57作品】)について
・総合ポイントの平均:22748pt【前回:20471pt】
(最高51688pt 最低260pt)
・平均評価点の平均:8.9【前回:8.9】
(最高9.3 最低7.6)
・流行ワードが入っている確率:62.1%【前回:59.6%】
・完結率:96.6%【前回:84.2%】
・文字数 10万字以上の長編:31.0%【前回:73.7%】
10万字未満:69.0%【前回:26.3%】
③一次通過・受賞した作品について
・総合ポイント別の作品数
一次通過・受賞した49作品【前回:74作品】を、総合ポイント別に分けてみます。
0~99pt:0作品【前回:0作品】
100~999pt:2作品【前回:1作品】
1000~2999pt:3作品【前回:1作品】
3000~9999pt:7作品【前回:13作品】
10000pt~:37作品【前回:59作品】
・文字数での通過率の違い
一次通過・受賞した49作品を、文字数10万字以上と未満で分けてみます。
10万字以上:14作品(28.6%)【前回:74作品中49作品(66.2%)】
10万字未満:35作品(71.4%)【前回:74作品中25作品(33.8%)】
④アイリスIF2大賞の結果分析&考察に関するQ&A。
Q.応募作品全体のポイント帯ってどんな感じだったの?
A.
0~99pt:44.3%【前回:41.2%】
100~999pt:28.0%【前回:29.4%】
1000~2999pt:9.6%【前回:10.0%】
3000~9999pt:9.9%【前回:11.7%】
10000pt~:7.7%【前回:7.0%】
(pt非公開などは計算できてません)
前回と同じく、応募作品の90%以上は10000pt未満の作品でした。
この情報をもとに10000ptより上か下かで作品を2つに分けて、今回も簡単にですが通過率を計算してみました。
10000pt未満の作品・約1500作品のうち、一次通過・受賞したのは12作品。前回とほぼ同じで通過率1%弱です。
一方、10000pt以上の作品・約130作品のうち、一次通過・受賞したのは37作品。通過率は28.5%。前回は通過率約40%だったので、少し厳しくなったみたいですね。
でも、やっぱり10000pt以上の作品の通過率は異常。10000pt未満の作品の約32倍は通過しています。
よって、今回もポイント重視の選考が行われたといえそうです。
Q.ポイントで足切りしてそう?
A.今回は足切りがあるとしたら100ptだったかも。意外。
ちなみに一次通過・受賞作品の平均評価点を見ると8.5以上のものがほとんどでした。8.5を下回っていたのは49作品中2作品のみ。
(平均評価点8.0以上は普通、8.5以上は面白い、9.0以上はかなり面白いというイメージです)
前回と比べると、ポイントだけでなく内容も見ようとしているのかなという印象です。10000pt以上の作品はきちんと読んで判断している感じ。
でも10000pt未満の作品については、すべて読んだ上で選んだわけではないと思います。他にもっと良い作品があるのに、それを上手く発掘できていないような感じがします。
Q.受賞するにはポイントがどれくらい必要なの?
A.前回と同じく20000ptは必要だと思います。主な選考対象は、おそらく10000pt以上の作品。
ただ、ポイントが低くても評価点が8.5を超える良作には、チャンスがわずかにあるかな?
とはいっても、チャンスは1%弱しかないので、期待はしない方がいいと思います。
Q.新しい作品の方がいいの?
A.前回と同じく新しい方が良いみたいです。今回受賞した金・銀賞9作品のうち8作品はコンテスト開始の約1年以内に連載していたものでした。審査員特別賞では、11作品のうち9作品が約1年以内のもの。
やっぱりコンテスト開催時期から約1年以内の新しい作品がかなり有利なようです。
Q.一人称で書いた話の方がいいの?
A.今回は一人称が有利だったみたいです。受賞した20作品のうち14作品(70.0%)が一人称。ちなみに前回の受賞作品では、一人称の作品が17作品中8作品(47.1%)でした。かなり増えてますね。
ただ、今回の受賞作品の中には一人称で書き始めているにもかかわらず、途中で三人称が混じったりしている作品があるので、一人称か三人称かは選考ではあまり気にされていないのかもしれません。
Q.文字数はどのくらいがおすすめ?
A.文字数のおすすめは特にありません。前回は10万字以上の作品がかなり優遇されていましたが、今回は文字数が少ないものも多く受賞しています。ただし、完結していることが必須条件のようです。
応募作品で10万字以上の完結作品は約300作品あって、そのうち受賞したのは14作品。受賞率は4.7%。
10万字未満の完結作品は約750作品あって、そのうち受賞したのは35作品。受賞率は4.7%。同じですね。
つまり、完結さえしていれば文字数はほとんど関係ないということです。
あえていうなら、短編なら2万字未満がおすすめで、長編なら10万字以上27万字未満がおすすめ、くらいかな。30万字以上の作品はたぶん不利です。
Q.流行ワード(『悪役令嬢』『婚約破棄』『乙女ゲーム』『ざまあ/ざまぁ』)が入っている作品が有利なの?
A.必ずしもそうとはいえないと思います。
今回の受賞作品の20作品のうち、13作品が流行ワードが入っているものでした。つまり65.0%が流行ワードを使った作品ということ。金・銀賞では9作品のうち7作品(77.8%)。審査員特別賞では11作品のうち6作品(54.5%)。
一次通過作品を見ても、29作品のうち18作品(62.1%)に流行ワードが入っていました。
こうしてみると、流行ワードが入っているものが有利なように見えますが……。
実は10000pt以上の応募作品のうち、流行ワードが使われている作品って約72%もあるのです。高ポイント作品をかなり優遇していることなども踏まえて考えると、流行ワードがある作品で受賞したのが65.0%だったというのは少し低めな気がします。
というわけで、今回の選考では、もしかしたら流行ワードを使った作品は避けようとしていたのかもしれません。まあ、多すぎて避けきれなかったみたいですけど。
Q.たくさん流行ワードの要素を入れたほうがいいの?
A.流行ワードはたくさん入れればいいというものではなさそうです。
ここだけの話、一次通過作品の中で最も平均評価点が低かった作品は、流行ワード『悪役令嬢』『婚約破棄』『乙女ゲーム』『ざまあ/ざまぁ』の4つすべてが入っているものでした。その評価点、なんと7.6。一次通過はできたようですが、正直受賞は厳しい数値だと思います。
受賞作品の中にも流行ワードを4つ入れている作品がありますが、1作品だけです。受賞作品のほとんどは流行ワードを1つか2つに抑えています。
なので、流行ワードを入れるなら1つか2つをおすすめします。
ちなみに、今回の受賞作品では『ざまあ/ざまぁ』が9作品、『婚約破棄』が7作品、『悪役令嬢』が2作品、『乙女ゲーム』が1作品となっていました。
Q.今回の受賞作品で気になることは?
A.金・銀賞の作品の文字数が少ないこと。今回は8万字未満の受賞作品が4作品もあるんですよね。
8万字未満の作品は本編が短すぎて、1冊の本にするために追加部分が多くなると思うんですけど……そういうのは内容が薄くなって質が落ちるパターンが多い気がします。大丈夫なのかなあ?
(他のコンテストで受賞していた作品の話になりますが、文字数の少ない作品が書籍化されたものを本屋さんで実際に確認したことがあります。追加されていた番外編が面白くなくて買うのを諦めました。本編は良かったのに……)
Q.そういえば、うさぎ妖精さんのお気に入り作品の結果はどうだったの?
A.今回うさぎ妖精が発掘したお気に入り作品は4作品。そのうち3000~9999ptの1作品が一次通過していました!
この作品は平均評価点9.3もあるので、ポイント重視ではなく内容重視の選考なら、確実に受賞していたと思います。一次通過で終わってしまったのはやっぱりポイント重視の選考だったからなんだろうなあ。残念。
* * *
『まとめ』
アイリスIF2大賞で受賞するにはどんな作品が有利だったのか、簡単にまとめておきます。
①完結作品【前回と同じ程度 →】
②平均評価点8.5(★4.2)以上の作品【前回よりも重要 ↑】
③総合ポイント10000pt以上の作品【前回と同じ程度 →】
④連載開始約1年以内の新しい作品【前回と同じ程度 →】
⑤27万字以内の作品【NEW!】
⑥流行ワードの要素がある作品【前回と同じ程度 →】
重要視されていると思われる順番で並べてみました。
【アイリスIF2大賞の結果に関しての感想】
《良い点》
前回と比べると、少しだけですが作品の内容を重視した選考になっていたところ。
文庫本1~2冊程度の完結作品が優遇されているところも、とても良いと思いました。短編も多く受賞していて、前回よりも受賞作品数が増えていたのも良かったです。
そして、うさぎ妖精の選んだお気に入り作品が10000pt未満であるにもかかわらず、一次通過していて嬉しかったです!
《気になる点》
やっぱりポイント重視なところ。
10000pt以上の作品が10000pt未満の作品と比べて約32倍も有利になっているというのは非常に残念でした。
毎回ポイント重視の選考をしているのだから、応募要項のページにもポイント重視だと明示しておいてほしいです。
《一言》
今回はうさぎ妖精のお気に入り作品が受賞をしていないし、個人的に苦手な流行ワードの要素が入っている受賞作品が多すぎるので、残念ながら今回の受賞作品をうさぎ妖精が買うことはないと思います。
次回に期待します!
以上。
アイリスIF2大賞の結果分析&考察でした。
何かひとつでも参考にしてもらえるところがあれば嬉しいです。
次は、アイリスIF3大賞(第3回)について書いていきます。