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突刺剣の使い手  作者: 犬尾剣聖


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39 上巻下巻

未だに題名模索中








 そこでシルパさんが(あざ)の確認方法を提案した。


「それなら私とメロディさんの女二人で確認するのはどうでしょう」


 そうなるよな。

 俺も少し見てみたいが、見た途端に噴き出しそうだから無理だろう。

 ボーの尻にあざって想像しただけで、腹の底から笑いが込み上げてくる。


 そこで男二人は部屋の外に一旦出ていき、女性だけでボーの尻のチェックだ。


 俺とアノさんは扉の外で商業ギルドのホールを眺めて待つ。

 しかし見るなと言われると見たくなるのが人情。

 あの荒くれ女のボーが、恥ずかしそうにケツを見せる姿を想像するだけでニヤケてしまう。

 

 突然扉を開けて「そろそろ良いだろう?」とか言って中へ入ったら怒られるだろうか。

 「そうだ、言い忘れたことがある」とか言って、いきなり入っていったらどんな顔するだろうか。

 などと想像を巡らしていたら「もういいですよ」と部屋の中から声が掛かった。


 中に入ると何事もなかったかのように、三人の女性は椅子に座っていた。

 誰も笑わなかったのか、女性陣は凄いな。


「で、どうだったんだ」


 そう、俺が聞くとシルパさん。


「はい、間違いなく聖印です。それも大地の女神の聖印ですね。でもその理由が良くわからないんですよ。身体に聖印が現れる場合、何かしらの理由があって、それを当人は知っているはずなんです。それが彼女は理由を知らないと言いますし。あざは生まれつきあったそうなんですが、女神様からの思し召しは一切ないみたいなんです。こんな事があるなんて、ちょっと聞いた事もないです」


 そこからの話はメロディの夢の話、そして俺がメロディを救った話。

 そして俺が本を手に入れた話へと移り、最後はマヌエル夫妻の話となった。

 もちろん俺が闇の世界で生きていたことは秘密にしてある。

 俺はあくまでも商人のローマンで話を進めている。


 マヌエル夫妻はハーフリングなのだが、ハーフリングの信仰する神というのが大地の女神らしい。

 ハーフリングは、それ以外の神を信仰しない種族だという。

 献身的な信者が多いらしく、夫妻もそんな信者の中の一人だ。


「そんなある時だ。古い鍵付きの本を手に入れたんだよ」


 そう言ってアノは、バックパックから一冊の古めかしい本を取り出した。

 テーブルの上にポンと置かれたその本。


「おい、俺の持っている本とそっくりだぞ」


 俺が驚いてそう言うと「やはりな」とアノが返しつつ話を続ける。


「この本は上巻だった。つまり下巻があるんだ」


「つまりその下巻が俺の持っている鍵付きの本という訳か」


「恐らくそうだ」


「この本の中身には何が書かれているんだ」


 するとアノ。


「かつて栄えていたハーフリングの王国の記録の一部が書いてある。その中に大地の女神の神殿が出てくる。大昔に国を挙げての大工事をして造ったみたいだな。俺達夫婦はその神殿を探している」


 という事は目的は同じか。

 しかし――


「神殿を探すという目的は俺達と一緒だな。だが見つけた後、君らはどうするつもりだ。財宝もいらないというなら、君達夫婦の目的は何だ」


 そうなのだ、目的を知りたいんだよな。

 するとシルパさんが答える。


「その地に移り住むつもりです。かつてハーフリングの王国が合ったとされるその場所に」


 ハーフリングの王国の復興が狙いなのか。

 始めのうちは規模は小さく脅威とはならないだろうが、他国がそれを知ったら黙ってないと思うけどな。

 間違いなく大きくなる前に潰されるだろう。

 その前にボーみたいな冒険者が大勢で押し寄せて、盗掘しまくるだろうし。

 その被害は兵士が攻めて来るより酷い気がする。


 まあ、いいんじゃないの、好きにすればって感じだな。


 あとはメロディが神殿に行った時に、もしかしたら女神さんからのお告げがあるかもしれない。

 信託で神殿を探せっていう位だからな。


「まあ何となくわかった。これで当初の俺達の目的は一致したってことだな。で、この先どうする?」


 そう俺が聞くと、シルパさん。


「下巻である鍵付きの本を見せていただけないでしょうか」


 そうだな。

 そうなるよな。


「よし、なら俺の家に案内する」


 こうして俺達は我が家へと向かう事となった。

 辺りはすっかり陽が沈んで、暗くなってしまっている。


 自宅に到着すると柵の仲からウエストとノースが出迎えてくれる。

 そう言えば新しい餌がない。

 この間の森猿の干し肉しかない、すまないな。


 早速全員を部屋へと案内する。

 俺達は暖炉の前に座った。

 暖炉の火を使ってシルパさんが簡単なスープを作ってくれている。

 自宅の貯蔵庫にある食品が少ないから、手の込んだものは無理だ。

 ただ、作るのがメロディじゃなくてホッとした。

 毒スープはこりごりだ。


 そこで俺は例の鍵付きの本を持ってきた。

 アノさんの本と並べると、瓜二つである。

 汚れ具合で違う物だとわかるが、そうじゃなかったら外見だけでどっちが上巻で下巻か判断できない。

 

「アノさん、鍵が付いていて開けられないんだが、そっちの方の鍵はどうやって見つけたんだ」


 俺が聞くとアノさんは笑いながら言った。


「こうするんだ」


 そう言うと、鍵穴の丸くでぱった部分を指で回す。

 すると驚いたことにカチリを音がして、鍵が開いてしまった。

 俺は思わずつぶやく。


「そんな仕掛けがあったのか……」


 こじ開けなくて良かった。


 シルパさんが「本を開けてよろしいですか」と聞いてきたので、「もちろん」と返す。

 すると夫婦で顔を寄せ合って本の中身を読み始めた。


「凄い、凄いぞ。やはり王国は存在していたし、神殿も存在していたんだ!」


「あなた、これ見て、これっ!」


「おお、女神様の御身の絵が……」


 なんか夫婦二人で盛り上がってるな。

 まあ良いけどな。










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