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27 魔法








 コームがメロディを険しい表情で見つめている。


 するとメロディはあっけらかんとした顔で答えた。


「どこへ行ってたって、それはローマン様と一緒の“どこか”ですけど何か?」


 おい、その言い方はよせ。

 明らかにとげのある言い方だろ。

 変な誤解を招くだろ。


 案の定、コームの鋭い視線が俺を刺す。


 痛い、痛い、コームの俺を見る目に殺意を感じるぞ。


「メロディ、ここは一旦――」


 俺が言い掛けるもメロディの言葉がそれをさえぎる。


「私はローマン様と一緒に行きます!」


 メロディは強い口調でそう言った。

 負けじと俺は話に入って行く。


「いや待て、メロディ。ここはコームと良く話し合って――」


 と言い掛けるが、またしてもメロディの言葉にさえぎられる。


「私の意思は変わりません。もう一度言います。ローマン様と一緒に行きます。私は書類上ローマン様の“所有物”ですから!」


 所有物というのは奴隷のことを言っているのだろう。

 偽造書類とはいえ、通ってしまったからには書類上ではメロディは俺の奴隷になる。

 足枷あしかせこそ外してはいるが、手の甲には奴隷の焼き印がある。

 俺が所有する奴隷って言われれば、確かに間違ってはいない。

 間違ってはいないのだがな。

 話がややこしくなるだろ。


「何が所有物だっ、勝手は許さんぞ。エルフの掟を忘れたか!」


 コームが激憤している。

 所有物に関しては聞き流してくれたようで助かった。

 しかし、まるで痴話喧嘩ちわげんかだな。

 こうなったらもう俺はどうでも良い、好きにしてくれ。


 そこでメロディが冷静に答える。


「そうです、エルフの掟がありましたね。それでは掟に従い決闘をしましょう。それに勝てば問題はありませんよね、コームさん?」


 コームと呼び捨てにしてたのに、今度は「さん」づけとは完全におちょくっている。

 怒らせて決闘に仕向けさせようとしているのか。

 メロディは決闘に自信があるのか?

 戦いが得意そうには見えないが、もしかして凄い魔法が使えるのかもしれない。

 なんせエルフだからな。

 これは楽しみだ。

 目の前で魔法が見れる。


 人間界では魔法が使える者は数少ない。

 しかも目の前で魔法を見れる機会はもっと少ない。

 俺が見たことがあるのは治癒魔法くらい。

 攻撃魔法なんて見たことない。

 これは是非ぜひとも見ておきたい。


 それに対してコームの返答。


「そこまで言うなら受けて立とう。だがな、俺が勝ったらその男とは二度と合うな、いいなっ!」


「あら、勝つもりなのですか。それはありえませんよ。まあ、良いでしょう。もし、万が一、あなたが勝つような事があれば、私は二度とローマン様に合いません。これでよろしいですか?」


「良いだろう。それでは覚悟しろよ、ローマン!」


 え?

 俺?


「ローマン様に勝とうなんて無知にしてもほどがありますよね?」


 「――よね?」って俺に言ってるのか?

 話が見えてこないんだが。

 そもそも何で俺?


「何をしているのです。ローマン様、早く戦いの準備をしてください」


 確か王都ではこいうのを『アタオカ』って言うんだったな。


「なあ、メロディ。話が良くわから――」


「ローマン様、来ます!」


 コームの細剣の突きが俺の胸を目掛けて伸びてきた。


「おおおっ、ちょ、ちょっと待てって!」


「ローマン、負けを認めて降参するか?」


 負けを認めるだと?

 こいつ、自分の方が強いと思ってるのか?

 俺は怪我をさせない様にと思ってだな……


 コームの細い剣がしなる様にして俺の頭上をかすめていった。


 中々鋭い剣スジではある。

 確かに腕は悪くない様だが、こんなじゃ俺の相手にならない。

 この程度なら正攻法でも倒せるレベル。


 たが怖いのは魔法だ。

 コームがどんな魔法を使うか俺は知らない。

 これほどの恐怖はない。

 魔法が使える相手と戦った事はあるが、それはあくまでも不意打ちや暗殺というやり方でだ。

 真っ向正面で魔法使いとは戦ったのはこれが初めてだ。

 だから油断は出来ない。


 コームが俺の足を狙って切っ先を振るう。


 俺はさほど苦労することなくそれを避ける。


 すると今度は顔面に向けての突き。


 首を捻りそれも避けて見せる。


「避けてばかりじゃなく、いい加減に剣を抜け!」


 コームがそう言ってくるが、俺は手加減できる自信がない。

 下手したら急所に刺してしまうかもしれない。

 それを考えると無暗むやみに剣を抜けない。


 それにまだ魔法を見ていない。

 ここで試合を終わらせたら魔法が見れずに終わってしまう。

 それはよくない。


「剣を抜けっ、馬鹿にしてるのか!」


 コームがイラついてきたみたいだ。

 しょうがない。


 俺は突刺剣ではなく、短剣の方を抜いた。


「短剣だとぉ、馬鹿にしやがって!」


 抜いても怒るのかよ。

 

 そして遂にコームが俺との距離を空け、何かを唱えだした。

 魔法詠唱の様だ。

 おお、遂に来るぞ!


 俺は身構えながら魔法の発動を待った。


 そしてその時がきた。


 突如、コームの目の前に小さなつぶてが現れる。

 よく見れば植物の種のような形。

 そこでコームが叫ぶ。


「シード・バレット!」


 するとその種が物凄い速さで俺へと迫りくる。


 俺は反射的に避けようと身体を捻る。


 しかしその速さは避けきれるものではない。

 固い何かが俺の左腕の肉をえぐり取った。


「くっ」


「ローマン様!!」


 メロディが叫ぶ。


 傷は浅いがまともに喰らったら怪我じゃ済まない。

 決闘っていう位だからやはり命のやり取りだ。

 気を引き締める。


 俺にやっと傷を負わせられたコームはというと、勝ちほかったように笑いながら言ってきた。


「ふははははは、我らエルフは貴様ら下等種族と違って魔法が使えるんだよ」


 腹がたつ言い方だな。

 消去したくなってきた。

 確かに魔法が凄いのは分かった。

 でも詠唱という面倒臭いものがあるんだな。

 ならば対策など簡単だ。


「なあ、コーム。確かに魔法は凄い、うらやましくもある。だけどな、弱点が見えてきたよ。今のもう一度いいか?」


「何を負け惜しみなど!」


 そう言うとコームは再び詠唱を始める。

 そして詠唱が完了したのか、何か叫ぼうと口を開いたところで俺は突撃した。


「シード・バレ――うおおおおっと、こ、こいつ!」


 コームが慌てて剣を俺に向けながら後ろへ下がる。

 すると出現した種は消え失せる。


 実に簡単な事だ。

 詠唱させなければ良いだけだ。

 ちょっと間合いに入って短剣を振るだけで詠唱は妨げることが出来る。


 









41話で完結予定でしたが、もう数話伸びそうです。

恐らく46話前後で完結かと。

ただ、中々思ったように上手く書けない……

何度も書き直している状態です。

取りあえず41話までは毎日投稿できます。








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― 新着の感想 ―
[一言] 最後までさくっと読めそうかな?と思ってこの話まできたんですが、主人公の思考へのツッコミが多くなってきて辛くなってきました・・・。 つまらないまでは言わないのですが、相手がどんな魔法を使って…
感想一覧
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