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25 ストーカー








 目深く被っていたフード付きのマントから、その素顔があらわになっていた。


 彼女は「ハッ」とした様子で慌ててフードを被り直すも、正体はもう分かってしまった。


「メロディ、こんなところで何してるんだ?」


 俺が声を掛けると何やらモジモジし始める。

 付いて来てたのはエルフのメロディだったようだ。

 使役獣がユニコーンなのも相手がエルフなら納得がいく。


 そしてやっとのことで口を開く。


「え、えっと……ちょっと散歩に出かけてまして……」


「散歩にしてはかなり遠い場所だと思うんだが?」


「そ、それは……」


 言葉に詰まるメロディ。

 

 何か言いたくない事でもあるのだろう。

 詮索せんさくは良くないか。


「ああ、悪かったな。別に詮索せんさくする訳じゃない、言いたくないなら言わなくて良い」


 俺の言い方が冷たかったのか、メロディは少し動揺した様子で返答する。


「い、いえ、そう言う訳ではありませんっ。ええっと、じ、実はですね――」


 何かを言いかけたが言葉に詰まる。

 それで俺は話を打ち切る。


「まあ、良い。まずはここの処理をするから、その後に街へ着いたら食事でもしながら話そう」


 俺は直ぐにこの場の処理に移った。

 捕まえた盗賊は賞金が掛かっていれば番所に突き出す。

 そうでなければ奴隷商人に売り飛ばすつもりだ。


 盗賊の生き残りは全部で六人。

 ただし負傷している者は奴隷としての値が下がってしまうがしょうがない。

 ゲゲとググが盗賊達を手際よくロープで縛っていきつつ、金目の物は取り上げる。

 大したものは持っていないが、使っていた武器は金属製なので、少しは金になるかもしれない。


 それより金になるのは馬車だ。

 馬付きなら金貨数枚で売れる。


 片付いたところで再び使役獣のホーンを歩かせ獣車を出発させた。

 盗賊が乗っていた馬車はゲゲが手綱を握り、俺達は順調に街道を進んで行った。






 そして無事にダバドの街へと到着だ。


 直ぐに捕まえた野盗は金に換える。

 残念ながら賞金首なく、ずべて奴隷商人に安く買い取られていった。

 馬車は何かに使えるのではと悩んだが、今は必要ないと思い売り払った。

 金貨15枚なり。

 この値段を見れば盗賊が減らないのも当然だなと思う。

 


 そして宿を確保した上で、俺とメロディは外の酒場で食事をすることに。


 ダバドは色んな種族がいる街だ。

 中には見たこともない虫系種族も居たりする。

 だがエルフだけはいない。

 だからメロディはフードだけは外さないまま食事をとった。

 耳を隠せば獣人か人間か解からない、ましてやまさかエルフとは誰も思わないだろう。

 怖いのはゾラン達だな。


 俺達のテーブルには護衛としてゴブリンを立たせている。

 少しは威嚇になるだろう。

 残念ながら狼は入ることが出来ないのだ。


 この酒場は客が多く騒がしい。

 ちょっと込み入った話をする予定だから、盗み聞きは難しそうなこの騒がしい酒場を選んだ。


「さて、メロディ、話をしようか」


 俺の言葉にうつむくメロディ。

 しかし俺が黙ってエールを飲みつつ待っていると、遂にはメロディが話を始めた。


「実は、あなたの能力を見てしまいまして……」


 やはり見られていたか。

 多分だがメロディがオークの奴隷としておりに入れられていた時だろう。

 俺がゾッチを消去した時か。

 

 しかしあの時俺は気配を消していた。

 つまりその瞬間は見られていないはず。


 俺は直ぐにメロディの言葉を否定する。


「メロディ、何を見たかは知らないがな、俺に特殊な能力なんてないぞ」


 一応だがそう言ってみて相手の出方をうかがう。

 するとメロディはやはり言いにくそうに。


「確かに、あの時は何が起こったのか解かりませんでした。気が付いたらあなたの前でオークのゾッチが倒れていたんですから」


 危ない、見られてはいないが俺がやったのは完全にバレている。

 だが見られていなければ問題ない。

 俺の能力がバレた訳ではない。


 しかしメロディはさらに話を続ける。


「あの時は分からなかったんですが、えっと……私、ローマン様のお家へ行った時見てしまったんです。本当にごめんなさい!」


 え、俺の家へ来たのか?

 いつだよ、それ。


 ん? まさかあの時か!

 

 森猿のボスを通した時か。

 あの時、誰も居ないから気配をほとんど消さない状態で消去したんだった。

 と言っても普通の人間じゃ見えないはずだが。

 メロディはエルフだから見えたというのか!


 だとしたらマズい事だ。

 女を消去することになるのか、それも恐ろしい美人なのに。

 うーん、それは抵抗あるな。


 俺はメロディを見つめたまま言葉に詰まる。


「あ、待って下さい、変な意味じゃないんです。実は、私の能力もあなた様と同じギフトなんです」


 俺から殺気がダダ洩れしていたんだろうか、メロディが後ずさっている。

 だが『ギフト』という言葉に俺は反応する。


「メロディ、今ギフトと言ったな」


「そうです。私の能力は魔法ではありません。あなた様と同じギフトなんです」


 そう、俺の能力はギフトと呼ばれる能力だ。

 ギフトとは魔力を必要としない能力。

 生まれた時から持っていると言われる能力だが、その能力に気が付く時期は人それぞれで、何歳で気が付くといった決まりはない。

 幼少の時期に気が付く者もいれば、高齢になって気が付く者もいる。

 共通するのは魔力が必要なく、決して同じ能力の者が存在しないと言われる。

 その能力も有用なモノもあれば、全然役に立たないモノまで千差万別だ。

 

 それと同じように魔力を消費して魔法という形で発現するモノもある。

 それは練習や研究によって魔導士が開発する魔法である。

 だから根本的にギフトと魔法は違う。


 エルフは魔法が使えるのが当たり前だから、てっきりメロディの能力も魔法かと思っていたが違ったようだ。


「なあメロディ、俺がギフト持ちだと何で分かるんだ。単なる修練のたまものかもしれないだろう?」


 苦しまぎれだが一応抵抗してみた。


「それはあり得ません。エルフ種族は魔法の放つ時の魔力の流れが見えます。でもローマン様の時はそれが見えません。それにゾッチが殺された時、ローマン様は突然空間から姿を現しました。それを見てからずっと気になってまして、申し訳ないとは思いましたが、えっと、私の能力でローマン様の自宅を見つけ出しまして、森の奥からずっと……」


 これを聞いて話が繋がった。

 誰かに見られていたのはやはりメロディだったのか。

 知り合いなだけに狼達が騒がない訳だ。


 俺は「はあ~」と大きくタメ息を漏らす。


「あのな、あまり人を詮索せんさくするのはどうかと思うぞ」


「すいません、でも同じ境遇の方に初めてお会いしたものですから、どうしてもお話を聞きたくて、しつこくすいませんでした」


 こういうのを王都とかだとストーカーって言うんだったよな。

 だけどそれは男がするもんだろ。

 まあ、美人にやられて悪い気はしないがな。

 いや、むしろニヤけてしまう。

 まさか、この美人、俺の事が、好きなのか~!?

 

 テンションあがる! 


「いや、そう言う事情があるなら問題ない。な、何か聞きたいこととかあれば聞いてくれ。で、出来るだけ答えるにょ――答えるよ……」


 興奮してちょっと噛んだ。

 

「それでは教えてください。ローマン様はどの神様から授かったのですか?」


 何を言ってるんでしょうか、この子は。


「すまんが、言ってることが理解できない。解かり易く言ってくれるか」


「えええっと、そうですね。私の場合ですが……」


 そう言ってメロディが話し始めた。

 









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