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突刺剣の使い手  作者: 犬尾剣聖


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23/45

23 トラブル








 ゴブリン達の訓練には投げ槍、スリングを加えた。

 スリングは革製のひもに石を入れて振り回して投げる投石方法だ。

 安い費用で済むのがメリットだ。

 それでいて訓練次第では相当な威力にもなりえる。

 幸いググはスリングが使えるから、他のメンバーにも広げてもらう。


 投げ槍は主に狼に騎乗しながら投げる方法を練習した。

 槍がある程度使える彼らは、元々投げ槍技術はあったそうだ。

 ただし戦闘に関しては、狼に騎乗しての行動しか経験がないそうだ。

 歩兵戦闘経験は皆無らしい。

 

 そうと分かれば騎乗戦闘に特化した訓練をした。

 そして彼らゴブリン達は、日増しに戦闘技術が向上していった。


 そんな中でも時々だが、俺達を監視するような視線を感じる事があった。

 その時、狼達は特に変わったっ行動は見せなかったから、風下から接近していたのかもしれない。

 用心深い奴らしい。

 遂に自宅まで監視されるようになったか。

 襲撃の兆候は一切ないのだがな。


 それにしても嫌な予感がする。



 

   ▽ ▽ ▽ ▽




 今日はゴブリン達を連れて、アーレの街の商業ギルドへ行こうと思う。

 ゴブリン達にもアーレの街を知っておいてもらわないといけないからな。

 今後もしかしたら、俺の使いで買い物をさせることもあるやもしれない。

 ゴブリン達は狼と一緒ならば悪さはしないことが段々分ってきた。

 だからそろそろ、俺が見張ってなくても大丈夫じゃないかと思ったのだ。

 その内やらしてみたい。


 さて、ゴブリン四人とイーストとサウスを連れてアーレの街を歩いていると、どうもジロジロ見られる。

 この街ではゴブリンは珍しいからだ。

 というよりも、アーレの街ではゴブリンは差別されているからだろう。

 多くの店や宿ではゴブリン禁止となっていて、中に入ることが出来ない。

 奴隷として所有するのさえ嫌がるほどだ。

 こういった種族差別は結構多い。

 もちろん人間を嫌う街だってある。


 それを考えると、この街でゴブリンの『初めてのお使い』は無理な気もしてきた。


 今日はゴブリン達を街に慣れさせるために来たのもあるが、もう一つ重要な目的がある。

 それはエルフとの交易品のビールを仕入れるために訪れた。

 それと小麦かパンが欲しいって言ってたな。


 仕入れはギルドを通さなくても良いのだが、ギルドを通すことでのメリットもある。

 仕入れの紹介や買取に販売、そしてオークションで少しだけ有利になるという特典があるからだ。

 特に俺のギルドランクだとオークションの特典が大きい。

 手数料が安いのである。

 それで俺は出来るだけギルドを通すことにしている。

 現在の俺の商業ギルドランクは『銀等級』だ。

 金等級も夢じゃない!


 俺達が商業ギルドの建物へと入って行くと、入り口に入って直ぐのところに若い獣人族が四人ほど固まって話をしており、通行の邪魔になっていた。

 通る人々は実に嫌そうな顔で通って行く。

 冒険者ギルドならば即喧嘩だろう。

 俺はこういうのを見ると黙ってはいられない。


「おい、そこで話をされると通行の邪魔になるだろ。悪いがどいてもらえるか」


 そう声を掛けると獣人族の一人が振り返り、俺をギロリと睨んできた。

 俺が新人だったら起こりそうな展開だが、俺は新人ではない。 

 胸に輝くのは銀等級バッジ。

 

 獣人の男は俺の顔を睨みつけた後、直ぐに胸の等級バッチに目を移した。


 ああ、出た。

 相手のギルドランクで判断して態度を変える奴。

 だが俺は銀等級、それは中堅のあかし

 舐められるような新人の銅級や鉄級ではない。


 そう思って今度は相手のギルドバッジを見てやった。


 ウゲッ、同じ銀等級。

 しかも連れも全員が銀等級か。

 

 これは下手すると騒ぎに発展するな……


「おい、おい、おい。いやにでけえ面すると思ったら、ゴブリン連れでお山の大将気取りかよ。笑わせるねえ。ふはははは」

「きったねえ奴隷ゴブリンなんか、室内に連れ込むんじゃねえよ」

「おじさんよお、粋がってんじゃねえぞ」

「ゴブリンくっさ、ゴブリンくせえよお、ひゃはははは」


 ああ、腹が立つが我慢。


 しかし四人ともまだ若そうだな。 

 十代後半か二十代前半と言ったところだろう。

 その若さで商業ギルド銀等級は確かに凄いとは思う。

 冒険者ギルドと違って喧嘩の腕だけじゃ等級を上げられない。

 商人としてのセンスや各方面へのコネ、商人ギルドへの地道な貢献時間が必要だ。


 こういうやからは自分達に逆らう奴らに対して、非常に陰険な方法で潰しにかかってくる。

 偏見かもしれないが、こいつらはそう言う奴らに決まっている。

 例えば潰したい相手の輸送護衛の冒険者を買収したり、盗賊に情報を流して襲わせたりと、敵に回すと非常に面倒臭い相手だ。


 だが俺がいつも相手に示す態度は一緒だ。

 後のことなど、どうなろうと知った事ではない。


「文句があるなら表へ出ろ、ぶちのめすぞ、ゴラッ」


 やはり我慢は出来ずに凄んでしまった。

 さて、これは冒険者だったらすぐに表に出て乱闘が始まる場面だ。

 だがここは商業ギルド、そんな事は起こりえない。


 だが今回は違った。


「ぶちのめされんのは手前だよ。上等じゃえか、表へ出て行ってやんよ!」


 おいおい、勘弁してくれよ。

 こいつら俺の事知らないらしい、他の街のギルドメンバーなんだろうか。

 俺の事を知っていたら喧嘩にならないはずだ。


 だがここで弱気な態度を見せるのは後々悪い。

 少し脅しておくか。


 騒ぎで周囲に人だかりが出来始めた。

 ギャラリーも多くなってきたことだしな。


 獣人達が次々に表へと出て行く。

 俺は奴らが商業ギルドを一歩外に出た瞬間に、奇襲攻撃を食らわした。


 一番最後に歩いていた奴の顔面を横から殴りつけたのだ。

 

「ふげっっっ」


 派手に吹っ飛ぶ男。


「お、お前、ひ、卑怯だ――――ふべっ!」


 次に後ろから二番目の奴の鳩尾みぞおちに俺のエルボーもろに入った。

 男は腹を抱えてうずくまる。

 これで二人は戦闘不能だ。

 あと二人。


「この野郎!」


 振り返って俺へ殴り掛かってくる男。

 さらにもう一人も反対側に回り込み俺に殴り掛かる。

 俺は両側から挟まれた形だ。


 俺はヒョイと身を屈めると、頭の上を二人に拳が通り過ぎる。

 空振りだ。

 俺はその空振りした二人の腕を同時に勢いよく引っ張る。

 するとどうなるかというと、二人の拳が交叉してお互いの顔面へとめり込む。


「ぐはっ」

「へぶっ」


 お互いがカウンターパンチとなって、抱き合うような恰好で崩れ落ちる。

 鼻が折れたのか、鼻血が凄いことになっている。


 周囲の見物人共が一瞬で静まった。


 しまった!

 やり過ぎてしまった。


 しかしここはギルドの外、のはずだったのだが、良く見ると建物の外だが敷地内。


 まずいかも、だな。


 前回やらかした時に、次回やったらみたいなことを言われたような。


 商業ギルド職員が人混みを搔き分けて出て来た。


「ローマンさん!」


 受付嬢のマーヤだ。

 冒険者ギルドと違って受付嬢は美人しか採用しないって訳じゃないのだが、マーヤはかなりの美人だ。

 この街の商業ギルド内で唯一の美人だ。


 この美人受付嬢に俺は名前を覚えられている。

 それは特別気に入られているって訳ではない。

 その逆で警戒されているのだ。

 問題が多いからである。

 商業ギルドに入ったばかりの頃は、冒険者ギルドのやからと喧嘩ばかりしていた記憶しかない程だ。


 そのマーヤが「ちょっとローマンさん、こっちへ来てください」と怖い顔で俺を別室に呼ぶ。


 この流れは何度も経験している流れだ。

 

 







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