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20 森猿







 それでゴブリンのテイマーを見ていくと、案内人が興味あることを言ってきた。


「この十人はウルフライダーです」


 そこで思い出した。

 ゴブリンライダーの事を。


 ゴブリンは狼の騎乗して戦う騎士がいる。

 それを一般にウルフライダーと言っている。

 そして俺には狼が四匹もいる。


「値段を教えてくれるか」


「はい、右から……」



  ☆ ☆ ☆



 三人買ってしまった。

 ゴブリンを三人買ったら一人おまけで付いてきた……

 四人で金貨9枚だ。

 人間などに比べると恐ろしく安いのだが、寿命や体力や利用価値を考えるとこんなものかもしれない。


 今、俺の荷車には足枷あしかせを付けたゴブリンの奴隷が四人乗っている。

 ウエストとサウスが唸り声を発しながら荷車の周囲をグルグルと回っている。

 新しいゴブリンの匂いに警戒しているのであろう。

 

 これは直ぐにこいつらを騎乗させるのは無理かもしれないな。

 徐々に慣らしていくしかないか。

 

 ゴブリン達は荷車の小窓から狼たちを珍しそうに眺めている。

 さすがテイマー、興味はあるようだ。


 試しに一人に御者席に座らせ手綱を握らせてみる。


「どうだ、出来るか?」


 するとそのゴブリンは「へい」と言って獣車の手綱を手に持つ。

 少し緊張はしているようだが、普通に前に進むだけなら問題はなさそうだ。

 逃げ出してもウエストとサウスが直ぐに追いつくのは、テイマーである彼らなら良く知っているだろう。

 追いついたら最後、噛み殺される運命が待っている。


 ダバドの街からソーダンの街までの間が危険地帯だ。

 いざという時の為に荷車の天井に据えてあるバリスタの操作を教え込む。

 ゴブリンライダーだった彼らは、飛び道具はあまり得意じゃないらしい。

 奴隷商から貰った彼らゴブリンのデータによると、使える武器は短剣と槍に投げ槍で、一人だけスリングが使える者がいた。

 元々は北大陸の部族だったらしく、奴隷になる前は騎兵だったという。


 ということはこの先、隊商護衛の為にも飛び道具を教えないといけないな。

 しかし一から弓は時間が掛かり過ぎるし、スリング投石は狭い荷車からは難しい。

 となるとクロスボウか……金が掛かるな。


 ゴブリンは身長が人間の子供くらいしかない上に、非常にひ弱な体形をしているから力や耐久力もあまりない。

 知能もそれほど高くはないのだが、たまに人間並みに頭の良い者もいるらしい。

 だから奴隷としての人気がないから値段も安いという訳だ。

 奴隷戦士として利用する者もいるにはいるが、消耗品扱いらしい。

 奴隷商も親切にも教えてくれたが、油断すると直ぐに死ぬから注意しろとのことだ。

 ちょっとした怪我でも死ぬことがままあるとのこと。

 人間と認識を一緒にするのは間違いだと念を押された。

 それを聞かなければ軽傷だったら放って置いたに違いない。

 負傷には気を付けよう。

 世話が焼けそうだな。


 そうだ、名前を決めないといけない。

 元の名を聞けば北大陸の訛りで分かりづらい。

 それで元の名前の一文字を使って名付けた。


『ガガ』『ギギ』『ググ』『ゲゲ』


 覚えやすいだろうと思う。

 まあ、俺しかいないんだけど。

 ちなみにスリングが使えるゴブリンが、スリングの『グ』で『ググ』と分かりやすい名前――――俺がだけどな。


 道中、順番に御者をさせながら交代でバリスタの扱いを覚えさせた。

 しかし何度やっても操作を中々覚えてくれない。

 ゴブリンってこんなものなのか。

 年齢を聞いてみると、およそ八から十歳、ググだけ十二歳。

 これはあくまでもおおよその年齢だ。

 詳しい年齢を覚えていないからだ。

 ならばググをリーダーにしておくか。

 ちなみに奴隷商から聞いた話だと、ゴブリンの年齢を倍にした数が人間換算での年齢だと教えてくれた。

 あくまでも目安だが。


 途中、魔物と遭遇した。


 道を横切ろうとしたのは牙鹿。

 その名の通り上あごの牙が異常に長い鹿系の魔物だ。


 こちらを視認した途端、荷車を引くホーンに向かって襲い掛かって来た。

 

 これはバリスタの訓練になると思いきや、ウエストが瞬殺してしまった。

 おいコラ、練習にならんだろ。


 だがゴブリン達の喜びようは――く、狼に対しての思いは強いようだ。

 さすが元ウルフライダーである。

 これは早いとこ狼達との信頼関係を築かせないといけないな。

 将来はウルフライダーとして隊商護衛を任せたい。


 牙鹿は毛皮と肉を回収。

 毛皮は大して金に成らないが、肉は狼の餌にもなるし人間が食ってもそこまでマズくはない。

 とは言っても魔物は全般的にマズい生き物だからまだこいつは良い方だ。

 つまりは大いに利用価値はある。

 鹿系魔物なのに角がないのが残念ではある。

 魔物の角はポーション作成の材料になるからだ。


 解体はゴブリンにも出来たのは良かった。 

 四人で分担すればそれだけ早く終わる。


 こいつらにも個人でナイフくらいは買い与えとくか。

 

 少しだけ時間を取られたが、なんとか暗くなる前にはソーダンの街へと到着した。


 ソーダンの街で一泊し、翌朝には街を出た。


 今の所ゴブリンの襲撃の兆候もない。

 後をつけられている気配はないからだ。

 

 そして無事にアーレの街へと到着した。


 直ぐに取引所へと香辛料を持って行き金に換える。

 金貨一枚の代わりに貰った香辛料だが、金に換えたら金貨四枚になった。

 本来なら今回の工程でかなりの儲けが出たのだが、奴隷を購入したから大赤字となってしまったか。

 先行投資と考えて諦めよう。

 こんな感じで貯金もほとんどない状態続いている。

 元手の金がないと買い入れもできないからがずっと、自重――。それだけはなるべく

 一応だが予備の貯金もあることはあるのだが、手を付けたくない。

 これは真剣に金を稼がなくてはいけない。


 そして俺はビーンズ村の自宅へと向かった。


 陽が沈んだ頃になってやっと自宅へと到着したんだが、どうも様子がおかしい。

 留守番のイーストとノースの二匹が唸り声を上げている。

 その場所というのが倉庫だった。


 二匹の狼は倉庫の周囲をグルグル回りながら「ガルルル」と唸っている。

 二匹の目線から見て屋根の上か。


 ウエストとサウスの二匹も放つと、同じように倉庫の周囲を回り出した。

 獣車は柵の外に一旦置いて、ゴブリン四匹を連れて柵の中へと入って行く。

 そして倉庫へと近づいて判明した。


 屋根の上に一匹の猿系魔物が登っていたのだ。

 大きさはゴブリンよりもかなり小さく、森猿と呼ばれる田畑を荒らす厄介者だ。

 それほど強い魔物ではなく、低レベル冒険者でもなんとか倒せるレベル。

 

 これならゴブリンでもいけるんじゃないだろうか。

 そう思って俺は指示を出す。


「ググ、四人で屋根の上の猿系魔物を倒すんだ。言葉の意味は理解できるよな?」


 そう言って槍を四本彼らに渡し、そして布一枚をググに渡した。

 槍はバリスタ用の槍だが、普通に手に持っても使える物だ。

 布はというと、石を包んで投げる為のもの、スリングの代用だ。


 するとググは大きくうなずき、ゴブリン四人で何か言葉を交わす。

 そしてググは建物から少し離れた所に立つと、石を入れた布をグルグルと回し始める。

 革スリングの様に耐久性はないが、数回使う分には問題ないはず。


 他の三人は屋根の上に登るらしい。

 意外と軽い身のこなしで、一人づつ屋根へと登っては槍を受け取っている。

 ググのスリングは命中こそしないものの、三人が登る時間を稼いでいる。

 

 そして三人が屋根の登りきったところで戦闘が開始された。









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