表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/75

3章 Rest(3)


「……アナン。悪いんだけどさ、なにがあったのか聞いてもいいか?」

 やっと一段落ついたという頃に、キケは恐る恐るその話題を切り出した。想像はついていたことだとはいえ、言葉で説明しようとするとどうにも現実味のない話になってしまいそうである。

「……村が燃えた」

 彼にはそういうよりほかになかった。

「……村が、燃えた……?」

「ああ……。俺が帰った時にはもう瓦礫の山になっていた」

 瞬きも忘れて、キケとユリアは呆然とアナンの話に耳を傾けていた。

「そんな……。それじゃあ、孤児院の皆は……」

 ユリアの声は可哀想なほどに震えていた。

「……」

 きっと大丈夫だ、なんて無責任なことは言えない。友人も家も、それから父も。無事だ、とはどうしても思えない自分がどこかにいるのだ。

「……私、村へ戻ります」

 毅然とした態度でユリアは立ち上がった。

「え、でも……」

「まだ……まだ間に合うかもしれません。私が、私が行かなければ……」

 不意に言葉が途切れ、代わりに掠れた咳がしんしんと響いた。慌ててキケが駆け寄っていく。

「ユリア、落ち着いてくれ。まだ体調が治っていないし、そもそもお前は元々体が強いほうじゃないだろう。無理はしないでほしい」

「……はい。取り乱してしまってごめんなさい。第一、イスフィさんを置いていくわけにはいきませんものね」

 ようやく彼女は落ち着きを取り戻したようで、アナンは密かに胸を撫で下ろしていた。

「それでもお前の心配な気持ちはわかる。だからさ、朝になったら俺がアナンと村を見に行ってみるよ。来てくれるか、アナン?」

「……俺は構わない」

 飛び散る火の粉、崩れゆく壁、揺らぐ大地。

 嘘のようで本当の記憶が一瞬脳裏を駆け巡る。

 喉を締め上げるような感覚から逃げるように、アナンは小さく息を吸った。

(帰らなければ)

 変わり果てた故郷へ。


お読みいただきありがとうございました!

ブックマーク、感想等はお気軽に!

誤字脱字がありましたら報告していただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ