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冤罪令嬢の死んで始まるヒストリア  作者: 二本柳 裕未丸
8/9

†美麗華煌オーラ†


ガヤガヤと人の声がしている、汗臭く土の匂いが充満した その場所は冒険者達が集まる冒険者ギルドのホール、木造建築二階建てのメゾネット作り、大きさは体育館くらいである。出入口の左側の壁には壁一面に冒険者への依頼書が貼り付けてあり出入口の右側には壁にそって机が並べられて、均等に依頼の受付をするスタッフが立っていた、しかしスッタフの顔は決して笑顔で接客という感じではなく皆淡々として仕事を合理的に受け付けるような感じだ、中にはスタッフに文句を言ったり口説いたりする者もいるが、そうなるとさっさと外へと放り出されている。


アーサーは初めて見た冒険者ギルドの様子に貴族社会とはまるで違うのだなとそんな事を思った。

「あ! アーサー見て見て見て! これこれこれこれ!」

アーサーの手を引いてノアが若干興奮しながら依頼書の方を指さしていた、アーサーが「はいはい」と言いながらノアが指さした依頼書を見る、そして目を通して――――

「は?」

割と低音でそれでいて正気か? と言わんばかりの声が零れた。アーサーの顔は口を開き目を豆のようにしたまま固まって動かない、そんな彼をおいてノアは一人フンフンと鼻息を荒くし瞳をキラキラさせる

「“急募! ドラゴンと対話出来る方”だって! これってどういう事かしら! 退治じゃないのかしら? それともドラゴンとの対話に成功しなかったら戦う事になるのかしら! すっごく面白そう!」

「すみません本音言います。あんた馬鹿でしょ」

思わず口が悪くなってしまうアーサー、しかしノアはそんなアーサーの口調など全然気にしていない、彼女はドラゴンとの対話の依頼書を手にして離さんばかりに目を向けている

「詳しい詳細は村までだって。なんだか裏がありそうで楽しそう!」

「あなたが何を興奮しているのか知りませんがそんな危険な依頼絶対に受けませんよ?」

一人燃えているノアにアーサーは嫌な顔をしていた、だが肝心のノアは諦める気配を見せない満面の笑みを彼に向ける

「受けるつもりだよ、ごめんねアーサー、危険があっても必ず守るから」

まるで好物を目の前にした子供のような瞳をするノア、アーサーは蟀谷を抑えた

「その依頼色々とおかしいでしょう。それにドラゴンとの対話って……本当にどういう事ですか。もしノアが言う通り対話に失敗しドラゴン退治になった場合は相当の強さが入りますよ、いくらノアでも無理です。それにその依頼書の達成金額たったの金貨5枚ですよ。やる価値等ありま――――」

「受付スタッフに行ってくるね!」

アーサーの言葉をまるで聞かずに依頼書をもって受付に向かう。背後でアーサーが「あ゛――――!!!!」と叫んでいる、だがノアはスルーした


「すみません、宜しくお願い致します」

受付のギルドスタッフにノアが書類を差し出す。ギルドのスタッフはここら辺では珍しい長い耳を持ったエルフ、タンポポの花びらのような色をした金髪と宝石のような黄緑色の瞳を持つスレンダーな美女だ、外見年齢は20歳前後くらいだが多分500歳は超えているだろう

「はい、わかりました、依頼書の方を……え?」

ノアの差し出した依頼書を手にして固まるギルドスタッフ

「……え? ええ? こちらの依頼をお受けするつもりなんですか?」

怪訝な顔をして依頼書とノアの顔を交互に見るスタッフ、戸惑っている彼女を余所にノアは柔らかな笑みを浮かべた

「はい、受けたいです。とても興味があります受付お願い致します」

ノアの美! 美! 美の微笑みを間近で受けたギルドスタッフが「うっ!!」と声を零し笑顔の眩しさに腕で顔を防御する。しかし長年の経験からかすぐに己を取り戻すとスっと真顔になってノアを見た

「こちらはとても貴方のような稀に見る美しい方にお勧め出来るような依頼ではございません、考え直してください。死んだら終わりですよ。そして連絡先を教えて下さい、一緒に食事に行きませんか?」

「大丈夫死にません、ですが食事は一緒に行きたいです! 私の連絡先はこちらです、旅をしているので魔法水晶での会話が多くなると思いますが宜しくお願い致します」

無表情のままスタッフは即座に自分の連絡先を教えてノアに渡す、ノアも美人なエルフとつながりを持てた事に嬉しくて連絡先を教えた。因みに魔法水晶とは手の平サイズの長方形の薄型カードの形をしていている水晶である。会話中に相手の姿が立体映像として映る代物だ

そんなこんなで楽しく会話をしていると背後からやっと血相を変えているアーサーがやってきた

「何しているんですか! こんな所で何ナンパしてるんですか! あなた何やってるんですか!!!」

これまた美形のアーサーがやってきた事にエルフは心で「よっしゃぁぁぁあ!」と叫ぶ、しかし顔には出さない。

「お連れの方ですか?」

ギルドスタッフはスン顔で澄ましている

「はい、僕の相棒であり友人であり大切な人です。ちなみに名前をアーサーと言います。彼は今フリーですよ」

その言葉にギルドスタッフは長い耳をピクピクと動かした、しかし顔はスン顔である

「どうして俺の紹介をしているんですか」

「え? 美人と知り合いになりたくないの? 嘘でしょ!?」

アーサーはチラリとギルドスタッフの女性を見る、そして「確かに美しい」と呟く。ギルドスタッフはまたもや心で「しゃあああああ」と叫ぶ、だが顔はプロらしい澄まし顔

「話を戻しますがノア、ドラゴンの依頼の事です」

「ああ、その事? ドラゴンの仕事が終わったらギルドのお姉さんと食事に行こうと思っていたんだ」

楽し気にそう言うノアに「「待ってください」」とギルドスタッフとアーサーの声が重なる、二人は声が重なった事により視線を合わせてそれから“ドラゴンの仕事を止めさせたい同志”だと理解し深く頷いた

「ドラゴンの依頼はやめましょう」

アーサーが淡々とした口調で言った、それにキョトンとした顔を見せるノア

「どうして?」

「危険だからです」

「本当に危険なら余計に依頼を受けないと」

「ちょ、だから危険だと言っているでしょう!」

僅かばかり声を荒げるアーサーにギルドスタッフが助け船に入る

「ドラゴンの対話に失敗してもしドラゴンを怒らせたら戦闘になります、普通ドラゴン退治は王国の騎士団長レベルの強さを1000人以上連れてやっと倒せると聞きます。それにたった金貨5枚、割に合いません。貴方が無駄に命を落とすような物です。それだと一緒に食事にも行けないでしょう」

正論を口にするギルドスタッフ、アーサーはその言葉に深く頷いた、だがノアは諦めない

「ドラゴンとの対話に成功すれば危険な事はないはず。それにたった金貨5枚しか出さないのにこんな無謀な依頼をするって事はその依頼主はあまり裕福じゃないって事だ。弱気者を助けるのは間違ってる? 困っている人が居たら出来るだけ助けたくない? その考えって僕は絶対に間違ってないと思う」

ノアの言葉にアーサーが「う」と唇を噛む。だがギルドスタッフは説得の言葉を続ける

「二人でどうにか出来るというレベルではないという事です。村の人達を見殺しにはしたくありませんが貴方が死んでは元も子もないという事です。どうしてそれが分からないのですか」

幼い子供の我儘を窘めるように少しだけ強い口調になって僅かに目を吊り上げるスタッフ“ここまで言えばきっと分かってもらえる”とアーサーもギルドスタッフも思った――――だがノアは秘儀【美麗華煌なオーラ】を神々しく出して微笑んだ


「大丈夫だよ、ちゃんと作戦はあるんだ。だから良い知らせを持ってここに帰ってきます。お姉さん、アーサー」


まるで伝説の聖女のように、まるで花の妖精のように、まるで24の翼をもった熾天使のように、まるで美の女神のように……今まで見た事ない程の美しい微笑み

深海のように深い心の底の闇まで明るい光を照らすような神聖さ。ノアの背には後光がさして全てを癒している。邪気、呪詛、病魔、凡ゆる悪と魔を浄化する。どこからともなく花びらが舞ってきてどこからともなく白い羽が舞い降りる、そしてノアを中心に桃源郷に居たらこのような香りだろうという良い香りが鼻孔を撫でた――――全て幻覚と幻嗅である。


「「ああああ! 目がぁぁぁ!! 目がぁぁっっ!!!」」


アーサーとギルドスタッフの二人がその眩しさに顔を覆い悶絶している

「駄目よ駄目! 依頼受理しちゃダメよ! ああ、ダメェ! 右手が勝手に動いちゃう!!!」

「絶対に許可してはダメなのに! “うん、どうぞどうぞ”と言いたくなる! ああくそぉぉっっ! ドラゴンの対話に行きましょう!!」

ノアは二人の返答に秘儀を放つのを止めて「やったー!」と両手を上げて喜んだ


 因みに、その様子を見ていた周りの冒険者やギルドスタッフは美麗華煌オーラに目と心をやられてその場に倒れていた。



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