プロローグ
◆キャラクター設定
●連石 純恋 16歳 155cm 6/2生
童顔 亜麻色のシフォンショート
絵を描いて二次創作をするタイプのオタク、少女漫画が好きなロマンティスト。自分ではそれを恥ずかしいと思っており美術部などには入らず帰宅部、オタクである事も隠している。
昔はガチガチのコミュ障だったが悠亜に引っ張られ周りと関わるうちに今はある程度の社交性がついており、同級生との付き合いはできるが放課後に遊ぶような仲の人はいない。
小学3年生の時に言われた悠亜の「純恋のふにゃって笑った顔、好き。かわいい」を自信にして笑顔を作るのはうまい。だが気遣い屋気質のせいで人付き合いは疲れる。
自分がオタバレなどして虐められるような事があれば悠亜の迷惑になるのでは、と考えている。
●香登 悠亜 16歳 168cm 11/21生
眠そうな顔 黒のエアリーウルフボブ
純恋の幼稚園からの幼なじみ。
勉強ができる上に見目麗しく、ローカルアイドルも務めている。だが天然が過ぎる性格でちょこちょこ抜けており気にかけてくれる純恋にとても懐いている。
幼なじみがキスをしているところを見た。
のぞきをしたせい、まさに自業自得。体育館裏なんて放課後にぐうぜん通りすがるような場所でなければ、用がなければ先輩が後輩を呼び出すような場所でもない。
私の幼なじみ、香登悠亜は昔からモテる。容姿端麗、成績優秀、運動もできて、玉に傷と思われそうな天然なところだって彼女が「ごめんね」とあの落ち着くトーン、ゆったりとした口調でふにゃりと微笑みながら言えば誰だって許してしまう。魔性の女なのかもしれないと昔から見てきたからこそ思う。
彼氏が過去に何人かいたのだって知っている。心底嬉しい。だって悠亜は抜けてるところがあるから、いい人と付き合って恋愛慣れして男を見る目を育てて、いい旦那さんを将来見つけてほしいもの。
あとこれは男の子に悪いけど、どうやらみんな悠亜に奢りたがるようで、それで悠亜がいい想いをしてくれるならガンガン貢いで!って思ってた。私にはそんな財力ないし、それで男の子も気分がいいなら良い事だし、悠亜が「なんか、もらった」って報告してくるのはかわいいし。
だけど、今回はダメだ。絶対に許せない。
「……悠亜って呼んでいい?」
「うん。いいですよ……いいよ」
「なんか、慣れてない?」
「そんな事ないよ。女の子と付き合うのははじめてだし。キスしたらリップの匂いがするのもはじめて」
絶対に許せない、女の子と付き合うのだけは。
悠亜が女の子と付き合えると知っていたなら、私だって……彼女の恋人になれる可能性はあるのではないだろうか?少なくとも悠亜は私に対して悪い感情は持っていない。
悠亜と名前を知らない先輩……派手な人だ、悠亜に負けず劣らず綺麗な人が、桜の木の下、影に隠してもらうように抱き合う。先輩からもう1度キスをする。悠亜はいつもと変わらない薄い表情でそれを受け止め、グイと手を引かれたから「やっべ」と言わんばかりに腰に急いで手をまわした。私はそれを見ればもう悠亜が考えている事がわかるんだ。悠亜はこの人が好きじゃない。
なぜそんな惰性のように女の子と付き合う事にしたのか、というか先日まで付き合っていた彼氏はどうしたのか、色々と気になる事はあるがそれを盗み見している身で聞くワケにはいかない。
私はとても性格が悪い。私は先輩から悠亜を奪いたい。悠亜があの人を好きになってしまう前に。来年、あの人が卒業して悠亜を連れて行ってしまう前に。
悠亜の腕の中にいるのは私がいい。ずっとずっと好きだったのに、人目を惹く彼女がモテてしかたないのを隣で見てきて、彼女への想いがあるから自分が告白されても誰とも付き合えなかった――いや、これは半分間違っている。私はコミュニケーションをとるのが苦手で告白されるとむしろ恐怖を覚えるような人間だから。悠亜以外だとイラスト投稿サイトやSNSのシャウッターで交流しているネットの知人にしか心を許せない。
私はとても性格が悪い。365日後、この場所で悠亜にキスをするのは私だと盗み見をしながら誓うくらいには。