表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤児の果てなき英雄譚  作者: ふたおん
8/17

08.戦は常に入り乱れ……

「さあ! 展開しろ『大気魔法陣』を! お前の力を見せてみろ!」


 エノンの展開する強固な魔力障壁にものともせず、追撃を加えようとするジエン。それに反応したのはエノンではなくノエルだった。鞘から旋風鬼を引き抜くと同時に風の魔力を放ち、ジエンを吹き飛ばそうとした。

 ジエンはその風をギリギリで回避する。エノンから引き離すことには成功したが、ダメージは与えられていない。


「なるほど、お前が風属性の刀使いか。見事な型だ。『神刀無双(しんとうむそう)』の『剣戦流水(けんせんるすい)』を上手く風属性に落とし込んでいる。だがその動き、万全とはとても言い難いな」


「今の一瞬で型を見破られた……」


 ノエルの使用する『剣戦華嵐』は、元オーファンであり、その卓越した刀の腕前から『神刀無双』と呼ばれた戦士が編み出した『剣戦流水』を風属性に落とし込んだものだ。

 しかし、もともと水属性を扱うものが使用することを前提とした剣戦流水を自己流でアレンジしているため動きに若干の差がある。そのため一瞬の動きから型を見破るのは難しいはずなのだが……ジエンはノエルの攻撃を避けながらそれを見抜いて見せた。


「エノン! こんな状況だから深くは追及しないけど、後でしっかり説明してもらうわよ!」


「……! わかった……」


 ノエルは旋風鬼を構えなおし、今度はジエン本体に攻撃を仕掛ける。旋風鬼が纏う風を推進力として利用し、急加速したノエルはジエンの横腹を目掛けて旋風鬼で薙ぎ払おうとする。

 エノンが魔術でそれを援護する。補助魔法でノエルの身体能力を高めつつ、牽制として魔力弾を連射する。


「不調な戦士との決着を急ぐ必要はないな。お前たち、やれ」


 ジエンが屋根の上の男たちに合図を送ると一斉に矢が放たれる。矢は全て光を帯びており、高濃度の魔力が込められていると見える。ノエルはそれをすべて回避して見せたが……真の狙いはノエルでは無かった。


「な……!? くぅ……!」


 突如発生した爆発によってノエルは吹き飛ばされる。爆発の正体は男たちの放った矢だった。

 男たちが放った矢は、エノンが放った牽制の魔力弾を全て的確に撃ち落としてしまったのだ。

 魔力弾に触れた矢は、限界魔力含有量を超える魔力をエノンの魔力弾から吸収してしまい、暴発した。その爆発にノエルは巻き込まれてしまったのだ。


「ノエル!」


「囲め」


 ジエンの指示から一瞬のうちにノエルは地上にいたメンバーたちに囲まれる。屋根の上のメンバーたちもノエルに矢を向けている。

 一瞬で退路を失ってしまった。


「落ちろ!」


 エノンはノエルの退路を確保するため、屋根の上のメンバーたちに狙いを定め、魔力弾を発射しようとした。

 すると今度はジエンによって阻まれる。


「エノン! お前は俺と戦うんだ!」


 エノンの魔力弾を全弾撃ち落としたジエンはそのままの勢いでエノンに切りかかる。


炎揮(えんき)灼身(しゃくしん)!」


 ジエンの身体が炎に包まれる。その瞬間ジエンは大きく身体能力を向上させ、凄まじいスピードとパワーを得た。

 風の魔力を剣に纏わせ切れ味を増すノエルとは対照に、自身の強化に魔力のリソースを割いている。これがジエンが厳しい鍛錬の末に編み出した剣術『炎揮』の基本だった。


 ジエンの攻撃はエノンの足元に振り下ろされる。エノンが常時自身に対し使用している身体強化の魔術で回避を行ったのだ。

 ジエンの攻撃の衝撃によりエノンの足元の石畳はふわりと持ち上がる。それによってバランスを崩したエノンの隙をジエンは見逃さなかった。


「はぁ!」


 灼身によって振り下ろした剣を今度は振り上げエノンを切り上げる。しかし今度もジエンはエノンに決定打を与えるに至らなかった。

 次にジエンの攻撃を阻んだのは白金色に輝く細剣、ハルファスの血悦剣だった。


「私を忘れてもらっては困りますね。彼方なるものを語るなら外せない存在でしょう?」


「『戦女神(いくさめがみ)』か……、お前が必死に隠しているその能力を解き明かすのも面白いかもな……。だが、俺に構っていていいのか? あのハーフエルフの御守りを続けた方が良いんじゃないのか?」


「その必要はありません……」


 ハルファスの発言に首を傾げるジエンだったが、その疑問は直ぐに解消された。


「剣戦華嵐・輪刃横波(りんじんおうは)!」


 超高速回転によってまるで円が広がるように風の刃が敵を切る輪刃横波、敵が近く、多いほどに真価を発揮する技だ。


「剣戦華嵐は空間を満たす空気を武器に変え戦う! 一体多戦闘でこそ輝く剣技なのよ!」


 ジエンはエノンとの一対一に持ち込むために訓練を受けた弟子を引き連れ、それをノエルにけしかけたが、それが裏目に出た。ノエルはこの場で最も一体多の戦闘に長けた戦士だ。メンバーたちはノエルを押さえつけるので手いっぱいでハルファスにまで気を回す余力が無かったのだ。


「こいつらには荷が重すぎる役回りだったか……。俺の采配ミスだ」


 ジエンは状況を把握し終えると、エノンたちから距離を取る。しかし、その眼には未だ闘志が宿っている。


「なら俺の一番弟子たちが相手をしよう! トリム! マニル!」


「はっ!」


 他の場所を捜索していたトリムとマニルがジエンの呼びかけに返事をする。二人は屋根伝いに移動しジエンを見つけると、その前に降り立った。


 戦いはまだ、始まったばかりだ。

あーもうめちゃくちゃだよ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ