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孤児の果てなき英雄譚  作者: ふたおん
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06.ようこそ超大型魔獣討伐隊へ

「5000年以上前、この世界に二人の魔神と呼ばれる存在が降り立った。魔神はどちらも強力な力を持っており、当時のこの世界の先住民から恐れられていた。しかしある日、その魔神の一人が先住民の罠に嵌り致命傷を負った。だがそこでその魔神に手を差し伸べた者がいた。初代魔王『シャフル』だ。シャフルは致命傷を負いあと僅かな命だった魔神に自身の魔力を分け与え、その命を救った。魔神は命を救われた礼に魔王に対し忠誠を誓った。……シャフルは魔神に対しもう一体の魔神の抹殺を願った。そうして二人の魔神による熾烈な戦いが長きに渡って繰り広げられることになった。だが、シャフルに着いた魔神はどうやってももう一人の魔神を倒すことができなかった。魔神は最後の手段としてもう一人の魔神の力を奪った。奪われた力は凄まじいエネルギーの源『魔神の宝珠』へと姿を変え、世界中にばら撒かれ、魔神は力を失い忽然と姿を消した。その時ばら撒かれた魔神の宝珠を手に入れ恐ろしい怪物に姿を変えたのが『超大型魔獣』、リヴァイアサンもその一体だ」


「そんなすごいことがあったのね……」


「……子どもでも知ってる歴史書の内容だぞ」


「わっ……悪かったわね! どうせ私は世間知らずよ!」


 二人のやり取りをリアナが苦笑いしながら見つめている。ノエルに気を使って言わないだけだろうがリアナもおそらく知っている内容なのだろう。


「世界には5体の超大型魔獣がいます。『海竜リヴァイアサン』『巨人ヘカトンケイル』『魔竜ニーズヘッグ』『神獣スフィンクス』『大樹ユグドラシル』、この中で討伐に成功したのはニーズヘッグだけ、それもすごく最近のことなんですよ。ニーズヘッグを倒した人物も既にこの世を去っていて、次の超大型魔獣を討伐するまでに人類はあと100年はかかると言われています」


「うう……ならしょうがないか……遠回りになるかもしれないけど、別の港から……」


「別大陸まで出る船があるのはこことルフトッカしかないな」


「ぐぬぬぬぬ……」


 今ここでルフトッカに戻るのは、ノエルにとってわざわざ追手の目の届く範囲へ戻ることを意味する。二か月という長い期間を待つのに比べれば、多少は早く別大陸へ渡れるかもしれないが、追手に見つかるリスクを考えると得策とは言えない。


「ならどうしようもないじゃない……万事休す……絶対絶命……万策尽きた……」


 あまりに非常な現実のラッシュに絶望し項垂れ、食事の並ぶ台に突っ伏すノエル。あまりに典型的な倒れ方のせいで、口から魂が抜けていくように錯覚してしまう。その様子を見ていたハルファスは何故か笑いをこらえるような様子でノエルを見ていた。


「フ……フフフフフ……エノン、流石にノエルさんがかわいそうです。いい加減教えてあげてもいいんじゃないですか?」


 ハルファスのその発言を聞き逃さなかったノエル。一瞬で立ち上がりエノンに顔をぐっと近づけ、物凄い剣幕でエノンを問いただす。


「何か手があるの!?」


 あまりの迫力に気圧されるエノン。


「……確実性はないぞ」


 それでも構わないとばかりに首を縦に振りまくりエノンを急かすノエル。その様子を見て更に必死に笑いをこらえるハルファス。つられて笑いだしそうになるリアナ。

 エノンたちは最初とは別の意味で辺りから注目を集めていた。


「そうか、なら……」


 そういってエノンはノエルに一枚の封書を差し出した。それを受け取ったノエルはその内容に目を通した。


「これは……超大型魔獣討伐隊!?」


「そうだ。人類は長い間、超大型魔獣に苦しめられてきた。その影響は魔王にすら匹敵する。少し探せば超大型魔獣に人生を変えられた人間なんてすぐに見つかる。俺の知り合いにも超大型魔獣に挑んで帰ってこなかった奴が山ほどいる。……もうたくさんだ。だから俺は腕の立つ知り合いを集め、超大型魔獣討伐隊を結成することにした」


 そういうとエノンはハルファスに右手を差し出しこう続けた。


「ノエルの実力はポラフォティアとの戦いで見せてもらった。俺が集めたメンバーと比べても遜色ない。ノエルならきっと超大型魔獣とも渡り合える。……よければ手を貸してくれないか」


 エノンからの提案を聞いたノエルは目を輝かせたような表情でエノンの手を取った。


「最っ……高。実に私好みの提案だわ」


 ノエルからの返答を聞いたエノンはハルファスと顔を見合わせにやりと笑う。


「ようこそ超大型魔獣討伐隊へ……」


 今ここに最強のチームが誕生した。


 ……あまりに飛躍しすぎた話の内容についていけなくなったリアナは、一人で食事を楽しんでいた。

エノンとハルファスが手引きすれば、ノエルは普通に最速でルフトッカから別大陸に出られたよ。エノンはノエルの戦力が欲しくてわざとそれを口にしなかったんだね。策士だね。

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