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孤児の果てなき英雄譚  作者: ふたおん
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03.眠りの報い

 ノエルは破竹の勢いで暴れまわっていた。

 鞘から引き抜かれた旋風鬼は、ノエルの放つ風の魔力を纏い振られるたびに突風を放っている。突風の威力は凄まじく、命中したポラフォティアのメンバーは皆抗えずに吹き飛ばされている。洞窟の外まで吹き飛ばされているメンバーも多い。

 しかしここまで暴れていながら、リアナの隠れている岩陰には全く風が吹き込まない。とても器用に立ち回っている。

 しかしノエルは疲労の限界が近く、魔力が尽きればまともに戦えるかもわからないような状態だ。ノエルは何としても自身の魔力が尽きる前に決着を着けたかった。

 ポラフォティアの男たちもそれは理解していた。男たちはノエルが力尽きるのを必死に逃げ回りながら待っている。プライドは無いがバカではなかった。


「大口たたいてた割に逃げてばっかりじゃないの! 面倒ね……こうなったら一気に片づけてやるわ!」


 ノエルは最後の魔力を絞り出すと、旋風鬼がこれまでで最も強い風を纏った。風は今までにないほど濃い魔力を宿しており、緑色に発光していた。

 魔力は濃度を高めるとその属性に応じた色で発光する……というのはこの世界では常識なのだが、それを実践できる者は少ない。武闘派集団のポラフォティアでさえ10人中1人ができれば層の厚いグループだとされるレベルだ。

 だから発光する魔力は多くの戦士に自身の力量を示し、大きなプレッシャーを与えることができる。

 今にも倒れそうな様子とは裏腹に凄まじい戦闘力の差を見せつけてくるノエルに対し、男たちは恐怖で体が強張りそうになっていた。

 ノエルは旋風鬼を構え直すと、まるで重厚な鉄球を両手で投げ飛ばすような動作で旋風鬼が纏う風の魔力を放とうとした。


剣戦華嵐(けんせんからん)・風突魔……」


 その時、不意にノエルの肩が何者かによって叩かれる。15歳くらいの人間の少年……エノンだった。


「何があったかは知らないけど……喧嘩はやめな。誰も得しないし周りにも迷惑だ」


 ノエルは訳が分からなかった。なぜこの男は半ば戦場と化した洞窟に平然と入って来れたのか、疲弊していたとは言え何故肩を触られるまで存在に気づかなかったのか、疑問はいくらでも湧いてくるが……。


「はあ!? 今それどころじゃないの! そこのポラフォティアとかいうチンピラ共が女の子を襲ってたから助けないと!」


「え!? ……ごめん!」


 遅れてハルファスも現れる。

 立て続けに現れる招かれざる客にポラフォティアのメンバーたちの脳は既にパンク寸前だ。だが、敵が増えたということだけは辛うじて理解していた。


「ハーフエルフのガキを人質に取るぞ!」


 ノエルだけでも手を焼いていた男たちはエノンたちに正攻法で勝つつもりはないようだ。とことんプライドは無いが最善手を打つのが上手い。

 しかし相手が悪すぎた。


「させません」


 ハルファスの手元に白金色の片手剣「血悦剣(けつえつけん)」が呼び出される。ハルファスが血悦剣を手に取ると突然、リアナを人質に取るべくリアナに駆け寄ろうとしていた男が苦しみだし、その場で跪いた。

 心配したメンバーの1人がその様子を伺うことで初めてその訳がわかった。

 男は右腕を失っている。目にも止まらぬスピードでハルファスに切り取られてしまったのだ。

 失われた右手はハルファスが抱えている。ハルファスは右手を投げ捨てるとリアナの前に立ち、男たちに立ちふさがった。

 その様子を見た男たちは一瞬で人質を取りにいくという行為が自身の首を絞める行為であることを悟った。最早ハルファスに近づこうとさえ思わないだろう。


 ハルファスは「これでいいんですよね?」というような様子でエノンに微笑みかける。

 それに対しエノンはgoodのハンドサインで返事をした。


「あっちはハルファスに任せていればいい」


「……助太刀はありがたいけど、あんたたち一体何者なの? っていう疑問には後で答えてくれるのよね」


「もちろん」


 エノンとノエルは男たちの集まる方へ向き直った。


「じゃっ、お言葉に甘えて手を貸してもらおうかしら。大分仕事が楽になったわね」


「寧ろ休んでて欲しいくらいなんだけど……何でそんな状態で動けるんだよ……」

この洞窟の隠れ家に居るポラフォティアメンバーの中に魔力を発光させることができる人はいません。

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