表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/57

出撃:巳(へび)の場合


「……しっかりと見ておくと良い」


巳は卯の方を見た。


「強くなる事は、命を長引かせる」


そう言うと


「少しでも、貴女の力になれば」


巳は外に出るためのゲートを開いた。



×



 そこは、活気のある世界だった。


 沢山の人や何かの騒めきが、卯の周囲に溢れる。


「……、」


その騒めきは、卯には少し騒がしく感じた。


「すまない、少し移動しようか」


それに目敏く気づいた巳は卯の手を引き、少し外れた小道に移動した。


 この世界は辰の世界とよく似ているが、少し異なった雰囲気をしている。


 卯は改めて降り立った場所を小道から覗き見た。 そこには一対の石の像が有り、そのすぐ後ろに紅い大きな門が有った。 扉の無い、大きな門の上部には白い紙の飾りがついた縄が掛かっている。


 門は大きな通りを跨ぎ、その奥はきちんと整えられた石畳がある。 そしてその石畳を挟むようにして、左右対象に出店が沢山並んでいた。 出店で作られた食べ物のにおいが、ここまで漂ってくる。


 紅い門や出店の側に、文字の書かれたのぼりを見、


「ここは今、祭りを行なっているようだな」


丁度良い、と巳は小さく呟く。


「『水神様の祭』とはな。 ……奥の祠(そこ)で何を祀っているかも知らぬくせに」



×



 巳は普段は黒い鎧を纏う、辰の護衛である。 基本的に辰の側からは離れず常に側に控えているので、あまり巳のことを卯は知らない。


 卯は、側で作戦を練り始めた巳を見る。


 現在の巳の格好は、此処の世界の住人達のように、腰の辺りを帯を結んで留める不思議な服装だ。 


 藍色の地に白や薄い色で絵が描かれた、すっきりした佇まいだった。 今はひょっとこの面で顔が見えないものの、艶やかな黒いショートヘアと薄花の目によく似合っていた。


 因みに卯も住人達と同じような格好だが、明るい色や可愛らしい大きめの花の模様が描かれており、帯も太めだった(卯はおかめの面)。


 自身と巳の服装の違いを問うと、


地味な服(私の)()()で、可愛い服(貴女の)()()なんだ」


そう答えた。


「私にはそのような可愛いらしい物は似合わない」


 と巳は言っていたが、ちゃんと探せばあるのではないかと思った。 帰ったら(仕事が終わったら)一緒に買いに行こう、と卯は計画を企てる。



×



「貴女はそこで隠れていて」


 草叢(くさむら)の奥に有った建物に卯を控えさせて巳は通りに出て行く。


 建物自身は木造で柱が露出しているが、奥にある大きな建物以外、壁は漆喰は塗られておらず、泥と草を混ぜたようなものだった。


 ()の薫りが鼻腔を満たした。



×



「さぁ、この世に天罰を与えよう」


 ()()()()()文言を唱え、巳は見つけ出した依り代(標的)と黒い物体を重ねた。


 生まれた黒い巨大な蛇のようなバケモノは空に舞い上がり、鱗を地面に振らせる。 剥がれ落ちた鱗達は小さなバケモノに変化し、周囲を攻撃し始める。


 が、なんだか小さなバケモノ達は丸っこい身体に短い手足が生えた見た目をしていて、なんだか可愛らしい印象を得た。 攻撃力も弱いようで、あまり周囲のものは破壊されていない。


 しかし周囲は混乱し、冷静に周囲の状況を理解できていないようだった。 おまけに、逃げ惑う人間達が周囲を破壊し、更に混乱を大きくしているようだ。


「見えるか。 意外に本質の害が少なくても、周囲の環境の所為で、かえって酷くなっているだろう」


 戻って来た巳は、冷めた声で卯に言う。


 窓のから空を見上げると、鱗を落としきったのか、最初に生み出したバケモノは空から姿を消していた。



×



 現れた魔法少女達は、一生懸命に周囲の小さなバケモノ達を退治している。 ちょこまかと動き回るすばしっこいバケモノ達に苦労しているようだ。


「あれだけ動き回らせれば、沢山魔法少女の粉は集まるだろうな」


 巳は卯に言う。


小さなバケモノ(あれ)を全て浄化し終えれば、依り代は目覚める」


「なるほど」


 しかし、かなり時間がかかりそうな。


「熱りが冷めるまで、周囲でも見て回るか?」


冗談めいた声で巳は卯に問いかけた。



×



 卯と巳が戻って来た時には、来た時と同じような賑わいに溢れかえっていた。


「まぁ、人間とはそう言うものだ」


そう言い巳はそっと周囲に魔力を張り巡らせ、静かに魔法少女の粉(キラキラ)を回収した。


 量は瓶の2つ分で、輝きが弱かった。


「鈍い色の魔法少女の粉は量の割に含有魔力量が少なく、輝きが弱いのは、質が良くないんだ」


巳は卯に瓶を渡した。


「純粋に抽出できる魔力量は恐らく、多くても瓶一つ分だろうな」



×



「巳っちはねん、辰っちの護衛にエネルギーを使う為に出撃は直接出ていかないんだ(あんな感じなんだ)よん」


 終盤辺りになれば流石に直接出るけどねん、と子は椅子をくるりと一回転させる。


「因みに、外出の計画(お出かけ)、アタシも加わっていいかなん?」


にひひ、と笑う子に、卯は嬉しそうに頷いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ