不満の種。
「どうして、駄目なのかな」
赤味を帯びたふわふわの茶髪を揺らし、仔犬のような彼は呟いた。
「そう、言われてもねん。約束だから」
「そう決まっているのならば、従うしかないだろう」
「さぁな。決めたんなら従うしかねえだろ」
「そう言われても、困るかなぁ」
「扨。儂に問われても知らぬな」
「……私に聞いてどうする」
「そうですねぇ。ご飯、食べませんか?」
「うーん、可愛いお洋服見つけたんだ。一緒に買いに行こ?」
「決められたんなら仕方ないよな」
「……さぁねぇ。嫌なら、従わなければいいじゃないか」
「聞かれても困るね」
みんな、はっきりと答えてくれなかった。
自分が子供だから、邪険にしているのだろうか。
子供だからと、馬鹿にしているのだろうか。
……そうじゃない。
きっと、ちゃんと理由はある。理由がある。
やがて、理由を知る。
それでも、やはり一度抱いた不満は膨れ上がる。
「…………」
「まだ納得はしていないのか」
「駄々捏ねてもしょうがねえだろ」
「んー……好きにすれば?」
「……そうであろうな」
「……私に言われても、困る」
「ご飯食べて、一旦落ち着きませんか?」
「見てー、可愛い亀見つけたんだー」
「まだそんな事言っているのか。……まあ、理解と納得は別もんだからなぁ……」
「嫌なら、組織から出れば良い」
「…………落ち着け。感情が暴走している」
×
久しぶりに、組織の外に出た。
誰にも、何も伝えずに。
組織の外に出ても、誰も自分に構うことはなかった。
きっと彼らは、少しずつずれてしまった報告の内容に、酷く戸惑っているのだろう。
敢えて、そう誤解するようにずらした甲斐があるものだ。
ようやく、この不満から解消されるのだと思うととても嬉しかった。
明日はどこへ行こうか。