とある組織の崩壊と、
組織が崩壊した。
『神』と周囲に呼ばれていた、穢れの塊を捕獲しようとして、色々弄った結果だ。
様子の観察の為に、一度だけその姿を巣穴の周辺で見たそのバケモノは、随分と大きく美しい鳥だった。鋭く尖った嘴に、滑らかな身体、長い尾羽。その全てが暗い色の硝子のようなもので構成されていた。
硝子のように透き通った身体は、紫や緑の色の光沢を持ち、光に当たるとキラキラと光って、暗い色合いで色鮮やかではないはずなのに、とても綺麗だった。安っぽいステンドグラスなど目ではない。
おまけに、その見た目はただの硝子の像ではない。正に『全てが硝子で出来た鳥』だった。巣穴の近くに落ちていた、バケモノが落としたと思われる大きな羽根は、羽柄や羽軸、羽弁、綿羽まで、全てが硝子の様なものでできていた(その羽根は嫌な予感がしたので直ぐに元の場所に戻した)。
その硝子の様な羽根に、全身が覆われている鳥だ。動く度にきゃらきゃらと硝子が擦れる様な音と、削れているであろう細かい硝子の破片が煌きながら宙を舞い、綺麗ではあったが周囲の事を考えるとなんとも言えない。
しかし、意外にも(騒音の被害はあったが)硝子片や穢れによる被害は全くといっていいほどに殆ど無かった。……この結果だけで判る。このバケモノを構成する穢れは、『怨み』や『嫉妬』などの、執着の強い感情であると。そういった『執着の強い穢れやバケモノ』は、手に入れたものを自分の意思以外で手放される事を良しとしない。そうなれば、それを奪った対象を破壊するまで追い続ける。
硝子のような身体の中心には黒っぽい塊があったが、それも、その不思議な美しさの一部を担っていた。
初めはその透き通って綺麗なそれが穢れの塊だなんて信じられなかった。今まで見たことのあるそれは、含まれる感情のによる僅かな色の違いはあったものの、出会ったバケモノの全てが影にように真っ黒な姿だったからだ。
しかし、センサーを使って遠くから観察した結果、それは負の魔力と感情が合わさったもの、つまり穢れの塊であり、バケモノであると分析された。
自身が観察していた時は、こちらの事を一切気にしていない様子だったけれど。報告や、聞いた話などによると、身体の一部を採取したら、急に暴れ出したらしい。……対象は執着の強いバケモノなのだから、当たり前の話だ。
×
巨大なバケモノが暴れ出したおかげで、世界中の魔法少女達が対応する事になった。
世界中の魔法少女達が出撃するおかげで、魔力のバランスが崩れ始める。
組織は失敗をどうにかしようと策を練るが、それは尽く失敗していく。
どさくさに紛れて、珍しい野良の妖精が、暴れ出していたらしい。
×
全てが終わった時、何もなくなってしまった。
正の魔力が枯渇したその刹那、その瞬間を待っていたかの様に、一瞬の遅れもなくバケモノは出していた負の魔力を消し、周囲に残っていた負の魔力を全て吸い取って何処かに飛び去ってしまった。