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卯、とうとう光落ち枠になる。
「な……っ! 何よ、こんな……!」
怒りで言葉も出ないとは、正にこのことだ。
「屈辱的よ!」
「……そうは言ってもねん」
『上』からの指定なんだよねん、と子は困ったように眉を八の字にする。
「嫌よ、やりたくないわ!」
先程子から受け取った仕事の紙は、卯が強く握り過ぎてクシャクシャになっていた。あんなお花畑の中に居なきゃいけないなんて!と、卯は更に紙を強く握り締める。
「でもこの組織じゃキミにしか出来ない仕事なんだよねん」
卯の体内にある穢れは最上位幹部の中ではかなり少なく、尚且つ元から持つ正の魔力が多い。その多い正の魔力で体内の穢れを隠せば、簡単にお花畑側に偽装、潜入する事が出来る。
「私が目指しているのは『余裕のある悪の女幹部』よ!」
盛大に顔を顰め、高いピンヒールの脚で思い切り地団駄を踏んだ卯は、何処からどう見てもその自身との理想からかなり駆け離れた存在であることは自覚出来ているのだろうか。
子はこれから起こるであろう複数の問題に思いを馳せ、痛み出した頭を抱えた。