乙女ゲーム風の世界 序章
子から呼び出された。指定された場所へ、指定された格好で待機する。
呼び出されたのは卯の他に、寅と申で、2名共にスーツを纏い、フォーマルな格好をしていた。かく言う卯も、簡易的なドレスにヘッドドレス、と、どこぞのお嬢様かと言わんばかりな上品な格好をしている。
「なんか面白い格好をしてるねぇ」
勝手に卯に付いてきたいつもの格好をした酉が、3名を見て首を傾げる。それもそのはずで、3名はフォーマルな格好をしているものの、全身を黒い色で統一していたからだ。
「まるで葬式みたい」
酉の言葉を受け、
「そんなに言うんなら、キミも入れちゃうよん?」
子は手元の登録書のようなものに酉の識別番号を記入したようだ。因みに、寅、卯、申の識別番号は既に記入されている。
「……勝手にそうされるの、あんまり好きじゃないんだけどなぁ」
肩を竦め、酉は子に訊く。
「どんな格好をすれば良いの」
「みんなを見りゃわかると思うけどねん」
ぷい、と酉から顔を逸らし、子は詳細を教えてくれなかった。
それを見兼ねた寅が面倒そうに酉に云う。
「『黒で統一した、フォーマルな格好』だ」
「へぇ、なんだか乙女ゲームでも始りそうだねぇ」
そう言いつつ、酉が仮面を押さえ、くるりと一回転すると、全身黒で統一された格好に変わる。
「後でもう1名追加する予定なんだけど、最初は君達でお願いねん」
子は卯の方に向き直し、
「早速で悪いんだけどさ、担当してもらっていいかな」
「この世界のテーマは、『ゴシックでクラシカルな乙ゲー』だよん」
「つまり、『フォーマルな格好で、魔法少女に攻略されろ』ってコトかな?」
「別に攻略されなくていいんだけどねん」
「……内容は?」
『ひょんなことからプリンセス候補になってしまった主人公は、世界の平和のために候補生の中からパートナーの男性を選び、婚姻しなければならない。しかし、候補生の男達は個性的なやつらばかりで……。私、こんな人達とうまくやっていけるの?!
おまけに、悪役令嬢に王子達を奪われないようにしないといけないなんて……!』
〈恋にイベントにラブが止まらない、ドキドキ♡アドベンチャー!〉
「ーーってゲームが今回の仕事だよん」
「……今、なんて?」
「だから、『ひょんなことからプリンセス候補になってしまった主人公は、世界の平和のために候補生の中からパートナーの男…「うん分かった」
『序章』とあるけど続かない