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星カフェ  作者: Night
3/4

12月

たまに、内容が少し変わるかもしれません!ご迷惑をおかけします!

12月に入った。

少し前まで青々と茂っていた葉は枯れてやがて、地面に落ちた。


もう冬だ。

新しいエプロンを身につけ、髪を一つにまとめる。

そこへ、後ろから声がかかる。


「千春ちゃん、新しいエプロンどう?」


そう聞いてきたのは、ここの店長であり、私のはとこに当たる空さん。

とても、美人で気が効く人だ。

本が好きで大学を卒業した後、このブックカフェを開いたらしい。ちなみに、空さんは大地さんと付き合っているらしい。

とにかく、このカフェは居心地が良くてほっこりした気持ちになれる。

最近、私は受験勉強を始めた。高校にはあまり行ってないし、行きたくなかったけど大学はどうしても行きたかった。

だから、たまに学校に行っている。まだ高二だけど少しでも、いいところに行けるように空さんや友達の大地さんに教えてもらったりしている。空さんや大地さんは全国でも有名な大学、S大学を出ている。

でも、空さんは文系以外の説明は苦手なようだ。数学の問題を渡すと少しあたふたしてしまう空さんや、冗談をいって場を和ませてくれる大地さんも、面白くて毎日が楽しい。


「はい!とても、いいです!可愛くて」


笑った顔を作ってみる。まだ笑顔が引きつっていると思うけど、、、

そんな私を見てか、空さんは笑いながらよかったと言った。

ここにきてよかった、そう思い始めたのはきて1週間経ったあたりからだった。

初めて来たときは、結構緊張していたけど、それでも優しく接してくれてここにいていいんだよって言われた気がして、初めて家以外で自分の居場所ができた気がした。

前住んでいた家は、空さんの友達が住んでくれることになった。

今は、空さんと一緒にこのお店の2階に住んでいる。

前の家よりは狭いけど、それもまたよくて廊下には長い本棚がずらっと並んでいた。その他にも、棚の至る所に本が綺麗にしまってあった。外国の本や、専門的な本までなんでもあった。私の部屋にも3段の本棚いっぱいに本が詰まっている。

こんなにあるんですかって言ったら、私の部屋にはまだあるよと少し笑いながら言われてとても驚いてしまった。

チラッと時計を見る。9時55分、、、


「空さん、カードOPENに変えてもいいですか?」


忙しく、段ボールを持って歩いている空さんに声をかける。


「ありがとう」

「ついでに、外も掃除しておきますね」

「ごめんね!ありがとう!今日のお昼は、千春ちゃんの好きなグラタンにするね。今日は寒いし」

「でも、忙しいんじゃ」

「大丈夫。千春ちゃんが、お掃除までしてくれるんだもん、お互い様」


そうですね、と言ってほうきを持って外に出る。

少し寒い風が頬をくすぐる。だんだん寒くなってきたな。

早く終わらせよう。

ほうきで掃き始めると、誰かが私の前に立つ。

ハッと上を向くと知らない男の人が立っている。


「いらっしゃいませ。どうぞ中にお入りください」


チラッと顔を盗み見ながら言い、扉を持って開ける。


「お前に用がある」


低く、冷たい声に思わずビクッとしてしまう。


「ど、どのようなご用件でしょうか」


平静を保ちつながら答える。

やっぱり、男の人と喋るのは苦手だ。

私が知らない男の人と喋っているのに気がついたのか、空さんが立ち上がってこちらにやってくる。


「お話中すみませんが、寒くありませんか?どうぞ中にお入りください」


男の人は、チラッと空さんを見た後あぁと言った。

席についたはいいけど、この後どうしたら、、、


「私は、ここの店の店長です。失礼ですが、どちら様でしょうか」

「香澄の兄で、太一だ」

「えっ、、、」


嘘だ。そんなことは絶対にない!

チラッと顔を見る。

あまり、似ているようには見えない。

もしそうだったとしても、私はお母さんから兄がいたなんて聞いたこともない。

お母さんに兄がいるなんて、、、


「まぁ、おまえは聞いたことさえないかもな。俺は、大学生のとき家を出て行ったっきり帰ってきたことはなかったからな」

「どうして、、、」

「俺のことを忘れていたのかもしれないが、、、まぁ、それは多分ない。これを渡しにきたからな」


そう言って、ポケットから2つの箱を取り出して蓋を開ける。

中には、2つのリングが入っていた。

確かに両親のものだった、、、


「お母さんと、お父さんの、、、なんで?私、探したのに」


指輪、、、

ちゃんと探したはずなのに!

でも、結局出て来なかった。

お母さんはちゃんとお父さんの指輪大事にしてたのに、お母さんが倒れて死んじゃった日お母さんの指に指輪はなかった。

あの日の事を思い出すとまた涙が出てくる。


「香澄が俺に渡したからだ」

「え?、、、なんで?」

「この指輪は高いんだ。素人の俺が見てもわかる。親戚の奴らはさ、それを狙ってる」

「確かに、これは高そうですね。2人合わせて200万から300万といったところでしょうか」


空さんが身を乗り出してくる。


「でも、300万程度なら、、、」


少し考え込むように言う。

確かに、300万程度ならそこまで欲しいと感じないかもしれない。

でも、私にとっては大切なお守りだ。お金なんて関係ない。


「それがな、まだあるんだ。これを見てくれ」


そう言って、今度は内ポケットから箱を取り出す。

指輪の箱よりは少し大きめだ。

蓋を開けると、深い緑の色をしたネックレスが入っていた。

お母さんが大切にしていたネックレス!

私が高校生になってから一度も見なかったからどこかに行ってしまったのかと思ってた。


「これは、、、数千万くらいでしょうか」

「よくわかったな。それと、これ」


そう言って、私の前に小さかった頃の私を中心にしてお母さんとお父さんが笑っている写真を置いた。

なんで、、、

私は、ずっとお母さんとお父さんと幸せに暮らしたかった。


「お母さん、、、お父さん、なんで?なんで私を置いて、、、」


空さんが、背中をさすってくれる。

よくがんばったねと言いながら。

その心地の良さにまた涙が溢れた。


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