第6話 報酬
狭間の行き先は城塞都市のはずれのの森であった。
そこから徒歩でギルドに戻った。
ギルドは丁度賑わう時間であったらしく、受付では少しまたされて順番がきた。
「アスモ様どうされましたか?」
受付嬢は昨日の今日で現れたアスモたちに向かいそう問いかけた。無理もない、本来であればまだ道中であるはずで、まさか依頼を達成したとは思うわけがないのだから。
「森の調査及び原因究明それと原因の排除をしておいた。これで依頼は終わったはずだ。」
「えっ。どういうことですか?あそこには行くのにも時間がかかるはずなのですが?」
「あぁ、そこは少し短縮できる移動でな。方法は教えるつもりはない。証明として部位も持ってきた。魔物が毒霧を吐いていた。それも討伐したから今後は大丈夫だ。あとで分かるが霧ももうない。その確認はそちらでやってくれ。またわれらがそこに居たという証明は王国ギルドのシュミットというものに尋ねれば証明できるはずだ。もっともあいつらもまだ戻っていないと思うが。」
「はっはい?・・・そうなんですか・・・。あっ部位があるとおっしゃってましたね。それでは証明はあとで分かり次第ということでまずは部位のほうを見せていただければ。あちらの倉庫でお願いできますでしょうか?」
「いやもう少し広いところはないか?」
「ですがお手持ちではなさそうですし・・・いえっ分かりました。それでは大倉庫に案内しますのでそちらでお願いいたします。」
「わかった。では案内してくれ」
受付嬢はカウンターに案件審議中につき席を立つ旨の札を受付に置くといそいそと大倉庫に案内を始めた。また他の職員に鑑定士及びマスターにも大倉庫へくるようお願いをして急いでアスモたちを連れて行った。
大倉庫はギルドの大分奥にあった。確かに大きくこれならばといえるほどのスペースであった。
「すいません。それではここに運んできてもらえますでしょうか?それとも人手がいるでしょうか?」
「ああ、わかった。」
そういうとアスモは無造作に空間をまさぐると一気に引き出した。
ドドッっと大きな音と埃の後には巨大なドラゴンとオークやミノタウロスなどの魔物が所狭しと姿を現した。
「ええー!!!」受付嬢は大きな叫びをあげた。
「こんな大規模な収納魔法っつて!・・ってこれドラゴンじゃないですか!!!、ミノタウロスも、こっちはヒュドラ!あっちはオーク。えっなんですかこれは!!こんなの見たことありません。」
しばらくして落ち着いたところでマスターと鑑定士が到着した。
かれらも到着した瞬間、山積みになったドラゴンたちをみて絶句している。
「これは一体???」
「マスター!大変ですアスモ様たちが持ってきた討伐魔物がこんな・・こんな・・・」
「あっああ、わかる、なんだこれは・・・」
「これが今回の討伐したものだ。原因はそのドラゴンだな。毒霧を吐いていた。」
「ああ・・ああそうだろうな。それはおそらく千年ドラゴンだ。聞いたことがある。どこかにある竜の谷に生息し、千年に一度産卵のために徘徊するといわれている。しかしそれも噂だ。千年ドラゴンというが実際の寿命は万年ともいわれているものだ。千年ドラゴンならば毒霧を吐いて生んだ卵が襲われないように守るという伝説もあるからな。まだこの感じだと産卵前のようだな。毒霧を数年広がらせ一体が修復不可能になるほどにしてから百年ほどかけて卵を産むらしい。ってことはまだ初期の準備段階だったのだろう。千年ドラゴンなら納得もできる。」
「しかし・・・・これを退治できるなんて。それもこれは一刀ではないか。そんなことがあるのか?」
「ああ、それはわざとだ。いったん傷つけたのを再生させてきれいになったところを切った。」
「ああ、ああそうなのか・・・・ってなんだそりゃ?信じられないぜ。そんなことができるやつがいるなんて聞いたことないぞ。 あとで詳細分かり次第成功報酬ってことだがそんなレベルじゃねえぞ。討伐依頼の額は逆にこのドラゴンの額に比べれば大したもんじゃないぜ」
そういうとマスターはゴクリとつばを飲み込み改めてアスモたちを見つめた。
「いやもうなにも言わねえよ。あんたらはちょっと世界が違う。わかった報酬を鑑定するのに時間がかかるのは了解してくれ。とりあえず用意できるだけの金額を一部払うから残りは少し時間をくれ。実際こいつの金額はこれをオークションで清算してからじゃないと用意できない。」
「あとあんたらのランクだがSSSを推奨しておく。はっきりいってランクの果てにあるような偉業だからランクがいるか?って次元だ。なにか要望があるか?ああ、あと昨日の武具屋の残額はこちらで払っておく。あと学校の紹介もしておく。学費もこの報酬からギルドで払っておこう。ただ入学試験はいるかもしれん。あいつらは狭量だから信じない可能性が高い。まあ実際に見せるのがわかりやすくていいだろう。そんなところか?ほかになにかあるか?」
「そうだなこれが希少な部位というのであればこれから希少な武具とかできるのか?それができるのならばそのすべての武具を3人分用意してくれ。報酬と相殺でお願いしたい。」
「お安い御用だ。逆に当たり前の要求だな。気づかなかった。手配しておこう」
「それだけだ。学校にはいついける?」
「ああ、実はさっき丁度カルムから聞いて推薦状を書いたところだ、連絡もしといた。これでもギルド高官の端っこには位置するから明日にでも行ってもらえればいい。場所はうちの職員を帯同させて案内する。手続きや説明するのも職員が代行したほうが楽だろう。あんたらの身元引請け人もギルドマスターの俺にしておく。」
「わかった。それでいい。これで完了であれば今日は宿に退散する。あと必要なところに説明するのは仕方ないが、大っぴらに喧伝するのをやめるだけでなく、むしろ秘密裡にしてもらえないか?面倒ごとは避けたい。変な虫が寄ってくるとトラブルになる。」
「できる限りはするが噂が流れるのは止めようがない。あくまでもできる限りになることは勘弁してくれ。王の耳にも入れる案件だ。討伐者を隠すわけにはいかない。また王とその側近の口は止められない。希望だけ伝える形になる。」
「仕方ないな。おそらくトラブルになるぞ。俺は隠せといったからな。覚えておけよ」
「ああそんな予感はするよ。ただ王国の危機にもつながる一件だからなオークションに出す以上は報告は避けられん。くれぐれも王に余計な色気は出さないよう話をしておくし、ギルドにもあんたたちをギルドでフォローするよう話をしておく。でないと王の直下騎士あたりにさせられかねん。」
「頼んだぞ、俺たちは学校で学ぶ費用のために討伐したんだ。それが本末転倒になってはかなわん。その場合俺たちの邪魔をするものは敵とみなすからな」
「ああ、わかった。ではこれぐらいだな。一度応接に戻って今日渡せるだけの報酬を渡しておこう」
そういうと応接に向かい歩き出したので鑑定士を残し、一同応接へ向かった。
応接ではとありえずということで100万ギル渡された。これは普通の庶民が20年は暮らせる額である。おそらく数億ギルになるのではないかとマスターからは言われた。ギルドの取り分はオークションの売上の5%ということなのでほぼ数億ギルまるまる入るようだ。
本来は更ににいろいろ諸費用をとるらしいがマスター曰く貢献度が凌駕しているため、アスモたちが搾取されていると思わないようにそこは配慮したらしい。
話が終わるとアスモたちはホールで簡単な食事をとり、宿で寝た。
ホールでの食事中に今回の討伐の噂がすでに流れており周りのテーブルではいろいろ話が聞こえてきたが討伐の当人がアスモたちとは知らないため、特に何事もなかった。