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第4話 大森林毒霧依頼

さてギルドに戻ったアスモ達は受付に行くと、宿に泊まる旨と請求はカルムにつけるよう話をした。受付嬢もカルムと一緒に出たのを見ていたのもあり、特に疑問に思うことなく、宿をとってくれた。またマスターからも言われているとのことで、用意された部屋はかなり高級な部屋であった。おそらくギルドに訪れる高官等にあてがうものと思われた。


アスモとアスタロトはそれぞれの部屋に入っていった。イーフリートが封じ込まれている指輪はアスモが邪魔だと言ってジークフリードに渡されていた。

ジークフリードが部屋のテーブルに指輪を置くと、イーフリートが現れた。

「イーフリートか、なんだ暇なのか?」


イーフリートは椅子に足を組みながら腰をかけると、その髑髏の下にある目を細めて答えた。

「ハハ、そうだな暇と言えば当たりだな。本来アスモデウス様もアスタロト様も護衛など必要ないからな。それでも不測の事態に備え、連れてくるのがあの人らしいがな。」


「その口ぶりだとイーフリートは良く知っているみたいだな。私は騎士団の中で活動をしていたから今回みたいな形で閣下と一緒に話すようなことはなかったからな。実際あのお方たちは

どんな人柄なのだ?」

ジークフリードはベッドに座ると横にあるワインを飲みながらイーフリートに尋ねた。


「ああ、そこからか。まああの通りだよ。頭は切れるくせに余計なことにも好奇心で手を出す方たちだ。そして関わったからには元を取って帰ってくるみたいな感じか。まあお前も振り回されるぞ。そこがまた面白いんだがな。」


「成る程、ちなみに力はどれくらいなのだ?読めな過ぎて困惑しているのだが?分身のレベルもだいぶ落としたと言っているが確かに弱くも見えれば強くも見える。」


「ああ、だいぶ落としているな。本来の力は底が見えない。あの人たちが第何位とか言ってるがはっきり言えば底が見えなさ過ぎてわからない。俺だって基本的には誰と戦おうが負ける気はしない自信がある。なのに全く勝てる気がしない。魔王は7王以外に何十人もいるが7王は別だ。知っているか?アスモデウス様は昔7王になる遥か前に、イシュタロスって言う化け物と戦ったことがあるんだが、その時のアスモデウス様は俺より弱かったんだ。そしてイシュタロスは俺より強かった。それも遥かに。

なのにアスモデウス様は戦い、そして勝った。ありえないんだ。成長するというがそんな甘っちょろいレベルの成長ではないんだ。何をしたのか何があったのか、それはわからないが一つ言えるのはそんなバカげたことができる奴が7王になる者なんだ。ちなみにイシュタロスをアスモデウス様は倒して、喰らった。それが7王の契機になったというものがいるが、俺の感想は違う。ただの通過点だ。おそらくイシュタロスと戦っていなくても7王になっていただろう。時間の問題だ。イシュタロスを倒したから7王になる力を得たのではない。7王になる者だからイシュタロスは倒されたのだ。アスタロト様も同じだ。あの人は魔界の大公爵として有名だが、その前から大公爵だった。わかるか?これも同じだ。俺より弱い時からアスタロト様は大公爵だったんだ。うまく説明ができないのが悔しいが、底なしの怖さがあった。・・・・とにかくあの二人とともに歩めるのが俺にとっては娯楽であり、刺激という事だ。」


「ふむ、面白い話だな。それで今の分身の力は私より強いのか?」


「そうだな。そこがお前の知りたいところだろう。今の話を思い返してみろ、簡単な話だ。お前より分身は弱い。だがお前は勝てない。なぜか?それはわからない。ただそういうことだ。それが解ればお前は勝てるかもな。」


「言わんとしていることはわかった。そもそもわかっていると思うがアスタロト様と勝負をする気は全くないのだがな。ただ今の現状を確認したかっただけだ。」


「そうだろうな。まあこれからしばらく楽しい日々が続くぞ。なんせあの方たちは退屈が嫌いだからな。」

そう言うとイーフリートは髑髏の口を開けクククと笑い出し、やがて指輪に戻っていった。


一人部屋に残されたジークフリードも暫く窓から外を見ていたが、やがてベッドに入り就寝した。


翌朝、ギルド。朝の喧騒の中、アスモ達が酒場兼ホールにいた。彼らはジークフリードを受付に行かせ、テーブルで紅茶を飲みながら掲示板の依頼に集まっている冒険者たちを見ていた。


アスモは眠そうに

「荒くれものの割にはみんな律儀に朝集まるのだな。もう少し寝たいとかないのか?

俺はジークフリードに起こされなかったらもう少し寝たかったのだが」


アスタロトも同意しながら、まったりと掲示板を見つめていた。

「この体は寝るのを欲する傾向があるな。まだ完成されていない身体だからか。少し調整しておけば良かったな。」


そんな他愛もない話をしていると、ジークフリードが紙と、あと昨日話をしていたギルドの身分証明書だろう物を持ってきた。

「ふむこれが身分証明か うん?Aと書いてあるな。で、依頼は何があった?」


「はい、これがそうです。ちょうど緊急事態の案件があり、高額でした。」


依頼書の内容はここから北に行った所にある、大森林の奥で発生した毒霧の調査及びその原因解明であった。

風向きの為、街に毒霧が来ることは無いものの、逆に逃げている魔物が風上である町に来る可能性が高いため、非常に高い報酬となっていた。

難易度も向かってくる魔物を退治しながらの活動になる為Aランク以上が推奨となっていた。


「ふむ、これは面白いな。ちなみに原因を解決した場合は追加があるのか?」

「はい、それはあるみたいですが、逆にそれを狙って冒険者が壊滅するのを防ぐ為に現時点では提示してないそうです。」

「わかった。手始めとしては丁度良い案件だな。ならば取り敢えず昨日壊れたなまくら刀の代わりと収納を買いに行くか?」

「はい、ただ収納に関しては閣下の次元収納を活用してください。どうやら魔物の部位にも報酬が伴うとの事と討伐証明にもある程度部位が必要らしいです。」

「わかった。ならば武具を一応買っておくか。徒手空拳で討伐するのは怪しかろう。」

そういうとアスモ達はギルドを出て武具屋に向かった。

武具屋はギルドから歩いて五分程のところにあった。アスモ達は切れ味は悪いもののとにかく硬い剣を所望し、安いがアダマンタイト鋼でできた剣を運良く手に入れる事ができた。

これは重い事と錆びつき過ぎて倉庫で眠っていたものだった。

研ぐにも硬い為、限られた研師しか研げないと言うことで、売れないで残っていたとの事だ。

実はそれでも持ち合わせが足りなかったのだが、ギルドのAランクと言うことと、どうやらギルドマスターから事前にお触れがあったらしく、アスモ達が来たらギルドが金銭を保証するから、くれぐれも丁重に扱う様言われている様だった。

確かに少年が普通にいっぱしの剣士の様に店を訪ねれば、軽んじられる可能性が高く、昨日の酒場の騒動を考えればギルドマスターの動きは間違いが無く、迅速かつ彼が優秀な人材だったことがわかる対応であった。

アスモ達は武具屋を出ると城塞都市の外にある森まで行き、人目が無いことを確認し、空に浮かび、大森林に向かった。

2時間程飛んだところで目的地である大森林に着いた。本来なら馬車で3日掛かる距離である。この世界では空を飛べる人間は少ない。いない訳では無いが2時間で3日の距離を飛べるものはいない。

そんな訳でアスモ達は人目を避けたのである。地上に降りたアスモ達の周りは黒い霧で囲まれていたがまだ薄く、周りの視界は視えるレベルだった。

アスタロトがアスモに尋ねた。「おいアスモ。なぜ霧の中心に行かない?その方が早いだろう?」


「ああ、今回のは調査も含まれるのだろう。飛べることを大っぴらに言うつもりがない以上、本来歩いて探索したのと同等の情報量と魔物の討伐がないと不自然だからな。まあ実際に細部を見ることはこの世界をより理解するのに役立つしな。」

「なるほど、では行くか。」

アスモ達は周りを見渡しながら慎重に進み始めた。

木々は鬱蒼としていたが、特に迷うことも無く、中心に向かい歩みを進めていた。




すると歩いて間もないタイミングで人の争う声が聞こえて来た。

どうやら他の調査団の様で、魔物と思われる咆哮も聞こえてくる。

アスタロトはアスモに話かけた。

「アスモ、あれはどうする?気配の感じだと劣勢そうだぞ?」


「確かにあのままだと全滅もあるな。行ってみるか。」

そう言うと駆け足で喧騒の方へ走り出した。


しばらく走ると広場の様に少し開けた場所にでた。

察するに調査団がキャンプをしていた所に魔物が襲い掛かった様だった。


調査団は20人ぐらいの複数のパーティーの混合だろう。装備がまちまちなので一見して分かった。そしてその弊害で統一しての指揮ができない為、輪をかけて混乱しているのが見て取れた。

魔物はオーガと呼ばれる身の丈4メートルはある魔物が五匹とミノタウロスが一匹だった。彼らは彼らで森から逃げる為に進んできたところを調査団とかち合った様だった。


魔物の力は凄まじく、人が簡単に吹き飛ばされているのが見えた。オーガ一匹でも通常5人体制ぐらいと聞くからましてやオーガの1.5倍の大きさで、力はオーガの十倍と言われてるミノタウロスまでいれば,20人程度では勝ち目は無いのは明らかだった。本来であればすぐ撤退するところが指揮系統の混乱で攻撃してしまったのであろう。既に5人以上死んでいた。


アスモはジークフリードに向かってオーガを牽制し,倒す様命令すると、自身はミノタウロスに向かって走り出した。アスタロトは話をする前に既にオーガの棍棒の餌食になりそうな魔術師に向かっていた。

魔術師は必死に炎の魔法を放っているがオーガは多少の火傷程度と気にせず魔術師に近づいていた。オーガだけで無くミノタウロスはもっと魔法が効かない為、彼らは絶望感に溢れていた。


アスモはミノタウロスの前に数瞬で辿り着くと、剣をミノタウロスの胴体に一閃した。すると大きな鈍い音と共にミノタウロスの胴体が千切れた。真ん中を中心に裂け、後には二つに分かれたミノタウロスが転がっていた。


周りの調査団はいきなり現れた少年がミノタウロスを両断したのを見て言葉が出ない様だった。


そして調査団が我に返ろうかと言う瞬間、今度はジークフリードがオーガを棍棒ごと綺麗に両断していた。またアスタロトも魔術師の前に出ると棍棒を何事もない様に手で止めて、こちらも雷をそのまま手から出しオーガは黒焦げに絶命していた。

そのまま残りのオーガもジークフリードとアスタロトが絶命させた。彼らが現れてから全滅させるまで調査団は一言も発する間がない程の短時間であった。


「誰だか知らないが助かった!ありがとう!」

そう言ったのは髭を蓄えた壮健の剣士だった。恐らく彼が一番の年長であろう人物だった。


「本当に助かった!ありがとう!私たちの命の恩人だ!全滅を覚悟していたのがまさかこんな形で助かるとは思わなかった。礼を言う。しかし助けて貰って言うのも失礼だが君たちはどう言った方なのだ?そちらの女性はまだ冒険者でもわかるが、君たちは少年だ。さらにミノタウロスを一撃で倒すとか見たことがない。そんな人物なら噂でも聞いていそうだが聞いた事もない。いろいろ驚きがありすぎて幻覚かと思うレベルだ。」


周りの連中も口々にお礼を言いながら興奮して同じことを聞いてきた。


アスモは全員が自分の答えを待っているのが分かると全員を見渡しながら答えた。

「簡単に言うと我らは最近この辺に来たものだ。学校に入り魔法を一から体系的に学ぶ為に来た。そして学費を稼ぐ為に冒険者になり、ランクAを持っている。強いと言われるのならば、それはそうだったからとしか言えぬ。なぜと言われても我らがいたところでも我らは強い部類にいたからそれだけだ。ここも恐らくお前らと同じ調査依頼で来ただけだ。答えになったか?」


「なるほど、ランクAか。A以上なのは間違い無いが、来て日が浅いからそれ以上になってないだけと言う事か。

強いのはそうだからとは、また面白い答えだが世の中は広いと思うしかないか。逆に言えばそんなパーティーで無ければ我々は全滅していたはずだから運が良かったのだな。よくわかった。とにかくありがとう!

この恩は一生忘れない。私たちはアザゼル王国、都市直下ギルドの混合パーティーで,私はシュミットと言う。

君たちの所属と名前を教えてくれないか?王国ギルドに報告しても構わなければ説明する必要があるからな。何より恩人の名前として教えてほしいの」


「俺がアスモで彼がアスタロト、彼女がジークフリードだ。我らはここから南のサイアムギルドに所属している。これで良いか?」

「ああ結構だ。もしかしたら今後私の推奨で依頼があるかも知れないが嫌なら断ってくれ。またギルドには勘違いして失礼な形での依頼をする高官がいるかも知れないが私の名前を出せばある程度止めることは出来るかも知れない。私のランクはBだが知り合いが上層部に幾人かいるからな。恩返しにもならないが今返せる恩がないものだから、これぐらいはさせて欲しい。

それでこれからどうするのだ?これ以上は毒霧の向こうには行けないと思うが?」


「わかった覚えておこう。それと悪いがミノタウロスらは先程の説明の通り金が必要なので貰っていくぞ。

後我らは結界が出来るからこの先も問題無い。」


「この毒霧を通さない結界を作れるのか!さすがランクAだな。ミノタウロスらは倒したのが君たちだから当たり前の話だ。しかし収納はそんなに入るまい?」


「収納は独自があるから問題無い。」


そう話すとアスモは魔物の死骸に近付き、手を触れていった。触れる度に魔物は一体ずつ手の中に吸い込まれ消えていった。

シュミットはそれを見ると驚きの顔で尋ねた。

「ちょっと待て!今の収納はなんだ?確かに収納魔法はあるが精々ゴブリン1匹程度が限界だぞ?そんな収納は見たことが無い。」

「ああ普通はそうらしいな。俺はこの手のが得意でな。ただ感覚でやっているので説明は出来ない。それもあり理論で学びたいのだ。」


「そ、そうなのか?感覚でやれる奴がいる事が異常だけどな。確かに小魔法ぐらいは感覚でやれない事は無いが…まあミノタウロスを一撃するのもオーガを一撃するのも規格外だからな、もう驚かない事にする。」


「そうかそれは助かる。一々驚かれるのは面倒だからな。ではな。」


そう言うと驚きの眼差しで見ている調査団を尻目に更に奥へと進むアスモ達なのであった。





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