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第13章


「はぁー…」


もうこの部屋に来て…ううん…この王宮に来て何度ため息を吐いたかしら。


差し込む暖かい日差しに少し眼を細めながらわたしは1人、窓際で外を眺めていた。


寝込んだあの日からわたしはマリノアさんの看病ですぐに風邪は良くなった。


早くでも仕事に戻りたいと願うわたしにマリノアさんとヴューイ様は完全に風邪が治るまではと言って、もう5日もアヴィスの所に帰してもらえない。


……2人とも心配性過ぎるのよ。姫巫女の最終試験まで少ししか時間がないに……。


うんざりとした表情を浮かべ、わたしは再びため息を洩らした。


「そんなにため息ばかりだと幸せが逃げて行きますよ?」


「ヴューイ様…!?」


突然の笑いを含んだ声に驚いて振り向くと大きな箱を持ったヴューイ様が微笑みながら立っていた。


「何度もノックしたんですが返事がなかったので勝手に入らせてもらいました」


「あ…すいません。少し考え事をしてたので…それより何かあったんですか?」


ヴューイ様は今の時間はまだ仕事中のハズ。


この時間に来るなんて何かあったとしか思えない。


ヴューイ様は手に持っていた箱をテーブルに置きながら少し困った様に微笑んだ。


「実は…姫巫女が今夜、姫巫女候補たちの労をねぎらうと言う名目で仮面舞踏会を開くと言い出したんです」


「仮面舞踏会!?」


華やかな舞踏会すら縁がないのに仮面舞踏会なんて…アヴィス大丈夫かしら?


「そこであなたにお願いがあるんです」


アヴィスの心配をしつつ、わたしはヴューイ様の言葉に眉をひそめる。


「わたしにですか?」


「ええ、姫巫女があなたをとても気に入ったらしくて…あなたにも舞踏会に出席するようにと」


「え…?わたしは普通の侍女ですよ?ドレスだって無いですし…」


「それは大丈夫です。わたしがちゃんと用意しましたから」


そう言ってヴューイ様はさっきの箱の中から若草色のドレスを取り出しテーブルの上に広げて見せた。


「綺麗…」


テーブルに広げられた若草色のドレスは光沢のある布で作られていて少し開いた胸元と裾には金の糸で美しい刺繍が施してある。


「あなたの眼の色に似合うと思ってわたしが選びました」


そう言うとヴューイ様はドレスに見惚れるわたしを優しく見つめる。


わたしの眼は緑で確かに色的には似合うだろうけど…。


「わたしにはそんな綺麗なドレス似合いません…アヴィス様の許可も頂いてませんし…」


「アヴィス嬢には先に許可を頂いておきました」


「でも…忍び込んだ事がバレてしまったら姫巫女様にもヴューイ様にもご迷惑をかけてしまいます」


「仮面で顔を隠すんだからバレる事はないですよ。それに舞踏会にはわたしも出席します。ルイーゼさんの側にいますから安心してください。それともわたしが信用出来ませんか?」


「そんな事はありません!」


「じゃ、決まりですね。ドレスの他に仮面や靴も箱の中に入っていますから使ってください。それとコレも…」


ヴューイ様はポケットから何かを取り出すとわたしの手の平に乗せた。


「これは?」


手の平に乗ってるのは下弦の月を模った紅と漆黒の石のついてる首飾り…。


「その首飾りはわたしからのプレゼントです。では、わたしが迎えに来るまでに準備をしておいてくださいね」


「……はい」


もう何を言っても無駄な気がして手の平の首飾りを見つめながら小さく返事をした。


わたしの返事に満足した様に微笑むとヴューイ様はその身を翻し扉の向こうに消えて行った。


再び静寂を取り戻した部屋に残されたわたしは近くにあったベッドに身を投げ出した。


……言いくるめられた気がするのはわたしの気のせいかしら…?


ヴューイ様に頂いた首飾りをぼんやり見つめながら大きなため息をついた。


このため息をつくクセは当分治りそうにないみたい……。






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