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第10章

文章めちゃめちゃでゴメンナサイ!ヾ(_ _。)


皆が寝静まった深夜、満月の優しい光を浴びながらわたしはベッドの中で何度も寝返りをうっていた。


ルイーゼお姉様、ヴューイ様の事好きなの?


眠れないわたしの頭の中でアヴィスの言葉がグルグル回る。


そんなワケないじゃない……。


アヴィスの言葉を何度も心の中で否定するけどその度に何故か胸の奥がチクチク痛んだ。


小さい頃から男の子たちに混じって剣術や遊びをしてきたから恋愛なんてわたしには無縁だった。


初恋さえ、まだなわたしがヴューイ様に恋してるなんてわかるワケないじゃない。


ましてやヴューイ様にとってわたしはただの暇潰し……。


まるで出口のない迷路に入り込んだ気分。


「はぁ……」


王宮に来て何度ため息をついたかわからない。


「ノド渇いたな……」


ため息のつき過ぎたせいかノドが渇き、ベッドの脇に置いてある水差しに手を伸ばすけど水が出ない。


「あ…」


月明かりに水差しを照らすと中に水が入っていない事に気がつく。


ついてないわ。水を貰いに行こう。


心の中でボヤくとわたしはノロノロとベッドから身を起こし寝衣のままショールを羽織ると水差しを持って静かに部屋を出た。


春になったとは言うものの夜はまだ肌寒く、わたしはショールを羽織り直すと足早に廊下を歩く。


「ん…?」


月明かりが照らす人気ない廊下を歩いていると誰かが中庭にある噴水の縁に座っているのに気づいた。


誰かしら?


眼を凝らしてよく見てみれば、それは今1番わたしが会いたくない人……。


気づいた瞬間、わたしの心臓が暴れるのを感じ無意識に身体は回れ右していた。


「こんばんは」


そんなわたしの背中に艶っぽい声が響く。


………気づかれた。


はぁ…と、ため息をつくとわたしは仕方なく振り替える。


「こんばんは。ヴューイ様」


暴れる心臓を必死で落ち着かせ、わたしは作り笑いを浮かべてヴューイ様に挨拶する。


「こんな夜更けに何処に行くんですか?」


「ノドが渇いたので水を貰いに行くんです。ヴューイ様こそ、こんな所で何をされているんですか?」


月明かりに照らされたヴューイ様はとても美しくてわたしは俯いて尋ねる。


「わたしはイリアス嬢のお屋敷で晩餐と酒をご馳走になり、ちょっと酔ったので酔い醒まししているんです」


そう答えるヴューイ様の顔をチラリと見れば少し酔っているのか頬が赤い気がする。


やっぱり…イリアス様のお屋敷行ったんだ。


さっきまで暴れていたわたしの心臓がチクりと痛んだ。


「そう…なんですか。あ、あの…わたし、これで失礼します」


「ルイーゼさん。ちょっとお話しませんか?」


何だか居心地が悪くなって立ち去ろうとしたわたしにヴューイ様が笑って言った。


「えっ……?でも…」


「少しだけ…ね?」


水差しを抱きかかえた状態で戸惑っているわたしにヴューイ様はゆっくりと近寄ると優しくわたしの手を引いた。


手を引くヴューイ様の手は夜風に冷えたわたしの手を暖かく包み、わたしの心臓が再び暴れだす。


「こちらへお座りください。お姫様」


「………はい」


少し悪戯っぽく笑って促すヴューイ様にわたしが素直に噴水の縁に座ると自分もその隣に座る。


「月が綺麗ですね」


「……そうですね……あの…手、繋いだままなんですけど……」


紫紺の夜空に浮かぶ満月を見つめるヴューイ様に相槌を打ちつつ、わたしの意識は未だ繋がれてる手に集中していた。


「嫌ですか?ルイーゼさんの手が冷たくて気持ちいいんですよ」


「なっっ!?」


一瞬、わたしの心臓が止まるかと思った。


だって……ヴューイ様はそう言うと繋いだままのわたしの手を少し赤くなってい自分の頬に押し当てたんだから……。


「気持ちいい」


酔ってるせいか紅い眼を少し細めながらわたしを見つめるヴューイ様の視線がやけに艶っぽい……。


冷えた手からヴューイ様の頬の体温が伝わり、わたしの頬まで熱くなる。


「ヴューイ様、離してください」


「そんなに焦らなくても賭けに勝つまではあなたを食べたりしませんから大丈夫ですよ」


何時もの何倍も艶っぽいヴューイ様に焦りを隠せないわたしにヴューイ様はクスクス笑った。


「た、食べ………っ!?きゃっ!」


「危ない!」


ヴューイ様の言葉にわたしは驚きのあまり繋いでいた手を振り払い、立ち上がろうとして自分の寝衣の裾を踏んづけてしまった。


―――バッシャーン!!


支えようと伸ばしたヴューイ様の腕も虚しく、結果……わたしはバランスを崩しハデな水音を響かせて後方の噴水の中へ見事に飛び込んでしまった。


……季節は春先……いくら何でも水遊びには早すぎるわよね……。


自分のあまりに酷い失態に冷たい水の中で座り込み、わたしは苦笑した。


「何やっているんですか!?早く出ないと風邪を引きますよ!」


珍しく少し声を荒げてヴューイ様がわたしを噴水から引き上げてくれる。


「………ありがとうございます」


苦笑しながら全身水浸しの姿でお礼を言うわたしにヴューイ様は自分の外套でわたしの身体を包むと素早く抱きかかえて早足で歩きだした。


「ヴューイ様!?降ろしてください。ヴューイ様まで濡れてしまいます!」


「わたしが濡れるのは構いません。それより早く着替えないとあなたが風邪引いてしまいます!」


そう言うとヴューイ様はわたしを抱きかかえる力を強める。


「わたしは大丈夫ですから。自分で歩いて帰れます!」


「あなたは少し黙った方がいいですね」


腕の中で暴れるわたしにヴューイ様が怒った様に軽く睨む。


………怖い……。


普段優しい微笑みを向けるヴューイ様とは違って少し怒った表情のヴューイ様には暴れるわたしをおとなしくさせるには十分の迫力があった。


「着きましたよ」


人気ない廊下を抜け、ヴューイ様はわたしを抱きかかえたまま見覚えのない扉を開けた。


「……ここは?」


「わたしの自室です。あなたの部屋より近かったのでこちらへ連れて来ました」


「えぇっ!?」


こんな状況とはいえ……女の子が深夜に男の人の部屋に入るのはかなりマズイのでは…?


「ここを使ってください」


「えっ……!」


突然、ヴューイ様はそう言ってわたしを降ろした。


……ここはバスルーム……?


ヴューイ様の外套に身を包んだまま、わたしは辺りを見渡す。


「あの…ヴューイ様。わたし、湯浴みなら自室で……」


「風邪を引く前に早く身体を暖めてください。あんまり聞き分けがないとわたしが脱がしますよ?」


尚も渋るわたしにヴューイ様が何時もの様にニッコリ微笑んで言う。


「結構です!」


「それは残念。では、ゆっくり身体を暖めてくださいね」


顔を真っ赤にして断るわたしにヴューイ様はクスクス笑いながらバスルームを出て行った。


やっと1人になりわたしはその場に座り込む。


どうしよ…こんな深夜にヴューイ様の部屋にお邪魔するなんて……しかもこんな格好だし…。


「クシュンっっ!!」


ずぶ濡れの格好で座り込んでいたわたしは寒さでクシャミが出た。


……寒い……こうなったらサッサとお風呂入って部屋に帰ろう。


仕方なく冷えきった身体をゆっくり動かし、ずぶ濡れの寝衣と下着を脱ぐとわたしは溢れる程にお湯が注がれている浴槽にその身を沈める。


「気持ちいい…」


わたしの冷えきった身体をお湯がゆっくり暖めていく。


あれだけ酷い失態をしたんだからヴューイ様も呆れたかしらね。


ずぶ濡れの自分の姿を思い出し、わたしは苦笑してしまう。


――――コンコン。


「お邪魔致します」


ノックと共に初老くらいの侍女さんがお風呂場に入って来た。


「あの…?」


「あなたがルイーゼさんね?」


「はい」


浴槽の中で戸惑うわたしに初老の侍女さんは優しい微笑みを浮べる。


「心配しなくていいですよ。わたしはヴューイ様の侍女マリノアと言います。ヴューイ様にあなたの寝衣をお渡しするように言われて来たの」


「あ…すいません。こんな深夜にマリノアさんにまでご迷惑おかけしてしまって…」


「迷惑なんて思ってないわ。最近ヴューイ様から色々あなたの事聞いていたからわたしも1度会ってみたかったもの」


クスクス笑いながらマリノアさんは着替えの寝衣を棚の上に置く。


「色々…ですか?」


「ええ。自分の誘いを一蹴した面白い侍女さんが王宮に来たってヴューイ様、楽しそうにお話していたわ」


「面白い侍女ですか…」


マリノアさんの言葉にわたしは思わず苦笑してしまう。


「そろそろお風呂から上がった方がいいわ。あまり暖まっていると今度はのぼせてしまうわよ」


苦笑するわたしにマリノアさんはバスタオルを差し出す。


お風呂から上がったわたしはバスタオルを受け取るとマリノアさんに背を向けて身体を拭き、棚にあった寝衣に着替えた。


「本当にすいませんでした」


「気にしなくていいのよ。それより髪を梳いてあげるわ」


寝衣に着替えわたしは深く頭を下げるとマリノアさんは優しい微笑みを向けてわたしを椅子へと促す。


「綺麗な髪しているわね」


「そんな事ないですよ。暇さえあれば剣術ばかりで全然手入れしてないですから」


「まぁ、ルイーゼさんはお転婆さんなのね」


丁寧にわたしの髪を梳いてくれるマリノアさんのクスクス笑いを聞きながらわたしは急に眠くなり、少し眼を閉じた。


気持ちいい。人に髪を梳いて貰うなんて何年ぶりかしら。幼い頃お母様に梳いて貰って以来かも……。


ボンヤリそう思いながら屋敷で待っているお母様の笑顔が頭に浮かぶ。


「あら…?眠たくなったのかしら。きっと疲れたのね。少しなら寝ても大丈夫よ」


眼を閉じたわたしに気づいたマリノアさんはそう言うとわたしの頭を優しく撫でた。


少しだけ…少しだけなら大丈夫よね……?


「ありがとうございます……」


眼を閉じたまま少し微笑むとわたしはゆっくりと意識を暗い闇の中に手放した………。





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