12月の防衛戦
小国侵攻に居た若き兵士、ヘルマン・フォン・カール伍長がノルデント王国の戦線に配置され約1か月経った時、雪が降り始めた。 激しい銃撃音と砲弾の音で若干耳が悪くなっていたが最初の頃に比べると少しは慣れた様子だった。 塹壕に張り付いていた時間から解放され、いつものように冷たいジャガイモと缶詰の不味い肉、質の悪いK-Brot(Kパン)を食べていた。
「よう、ヘルマン、塹壕戦は慣れたか?」
気軽に話しかけてきたのは同い年のアードリアン・バルヒェット伍長だった、塹壕戦経験なら彼の方が長い。
「まぁまぁかな、最初は食事なんて出来もしなかったから大分、良くなったんじゃないかな?」
「そうだな、向こうの新兵達は食事に手をつけようとしないな、まぁ、酷い死体を見たからかもしれないが…ちょっと行ってくるよ」
アードリアンは手を振って新兵の所へ向かった。 その後、食事を終えた時、大きな振動が起きたと共に将校の笛が鳴り響いた。 攻勢か守勢のどちらかだが今回は敵が砲撃を行っている事から守勢だろうと思い、外に出た。
配備を終えた状態で敵の攻勢が来るのを待った。そして思った通りに敵の攻勢が出てきた、無論、重機関銃の攻撃が始まりマズルフラッシュが遠くからでも見える位光っていた。倒しきれずに突撃してくる敵兵には小銃で撃つ。 そうこれが毎日の繰り返しの作業だった。
「仕事の時間だ…私情を捨てただ目の前の敵を撃つべし…」
そう呟きながら自分が自分で無くなる感覚を感じながら迫りくる敵兵を撃っている。
一人、また一人と、遠目から見て撃たれて倒れていく姿を見て安堵する後景に徐々に心が荒んでいく様が当たり前のようになってきている、少なくとももう少しすれば人の心と言うのは無くなるのではないのかと思っている。