捜し物
父は仕事で、母は実家の用事で、
今日は両親とも家に居ない日である。
滅多にないこの好機を逃すわけにはいかないと、遠に見せると約束した对のネックレス探しに奔走している今。
中々お目当てのものを見つけ出せなくて少し焦り始めた頃だった。
「がんばってねぇ」
そう言って薄情にもうたた寝を始めた青年を無視して自分の部屋の中から探すのを諦めた。きっとここにはないのだろう。
父や母がもし知っているものだとしたら、と両親が居ない事をいい都合に2人の寝室へとこっそり入り込む。
「えっと、ここじゃないな。うーん、ここ?
......違うなぁ」
物の位置が変わらないように気をつけながら、クローゼット、タンス、手当り次第に探り始めたが、やはり見つからない。
探し物ってこんなに大変だったのだろうか。
でも、あの遠が望んでいる物なのだから、と
折れそうになる心を奮闘させて広い家中を探し回った。
「ここで最後だ」
最後に探す場所は母の大好きなリビング。
ここなら見つかるかもしれない。最後の希望だ。......もし、ここを探して見つからないようなら正直に青年に言って、悲しい事だが諦めて貰うことにしよう。
キッチンやテレビの台の引き出しをくまなく探していく。それでも見つからない。
諦めかけながら本棚を漁っていると、棚から1冊の本がやけに軽い音を立てて床に落ちた。
「なんだろ?」
手に取ってみてみると、とても軽くページがない代わりに箱になっているようで、振ってみると微かな金属音が部屋に響く。
思わず口角が上がった。
中の物が飛び出さないように、そっと本の形をした箱を開けてみる。
中には思った通り、青い石がトップに付いた2つのネックレスが大切そうに和紙に包まれて入っているではないか。
「わぁ、本当に心臓の形なんだ」
2つのトップを合わせてみると少々歪ではあったが確かに心臓の形になった。
勝手に持ち出していい物なのかは分からなかったが箱だけを綺麗に棚に戻して部屋に戻る。
遠はまだ眠っているようだったのでその隙にネックレスを自分の机の引き出しの中に隠しておこうとした──────
「見つけてくれたんだ」
が、すぐ後ろから眠っていたはずの青年の声がした。
「うわっ遠!起きてたの!?」
「さっき起きたんだよ。なんてね、僕、本当はちゃんも寝れた事ないんだ。それにしても、随分頑張って見つけてくれたんだねぇ」
鏡の中でネックレスを受け取った彼は、その片方を自分の首にかける。
その表情はどことなく寂しげだったが、大切そうにネックレスに触れる彼を見て安心して胸をなでおろし、自分の手にあったネックレスを姿見の端にかけてやった。
「頑張ったよ。で、なにか思い出したの?」
歪な青が、青年の胸の上で太陽の淡い光に反射して光った。
「うぅん、でもね、覚えてるんだ。これは僕と僕の妹の兄弟の証なんだって。はは、本当に懐かしいなぁ」
囁くように語るその口調はとても柔らかくて優しさに溢れていて、彼がどれだけ妹の事を大切に思っていたかが伝わってくるようだった。
大きな姿見の向こう側。決して相容れない彼との距離を感じてしまい、今まであんなにも良くしてくれていた遠がまるで他人のように感じたのも一瞬の事だった。
「え?」
遠がもう片方のネックレスをなんの躊躇いもなく自分に差し出したのだ。
「しーちゃんの事は、勝手に親友だと思ってるし、もう兄弟みたいなもんだって思ってるから。これはあげる」
そうは言うがそんな大切そうなものは流石に頂けない。首を横に振って断りの意を示す。
「大事なものなんでしょう?簡単にあげちゃダメだよ」
「僕にはこれしかあげられる物がないんだから、受け取ってってば」
遠は聞き入れてはくれなかった。どころか、鏡の中でネックレスを私の机に置く。
こうなった遠は普段とは打って変わってかなり頑固で、もう聞き入れてはくれないだろう。兄弟と言って貰えて嬉しかった気持ちもあり、最終的には私が折れた。
「ありがとう、遠」
姿見にかけたネックレスの片方を受け取って頭を下げる。
「こちらこそ、見つけてくれてありがとうね。しーちゃん」
遠がそう嬉しそうに笑うものだから、笑みが零れてきて、一緒になって笑いあった。
「誕生日おめでとう」




