表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/94

赤い絆と緑の襷 第2話

 何だか、とってもマズイ展開が待ってるような気がしてきた。


 「ちょうど良かったっす! さんたく君、助けてくださいな」

 「助けろって、いったい……」

 「簡単な人探しっす」

 「人探し?」


 この優男さんはホント、いとも簡単に距離を縮めてくるね。


 「なら、館内放送で呼び出してもらえば?」

 「それが出来ないんす、察してくださいな」


 いや、それは簡単じゃないでしょ?


 「まだ小学校に入学したぐらいの、可愛い女の子なんす。さんたく君、一緒に探してもらえないっすか」


 語尾、疑問じゃなかったね、金営かなえいさん。


 「こっちも待ち合わせとかあって、さ」

 「あぁ、あんな小ちゃな子に何か有ったら……もしかして、もう外に出てるのかもっす。さんたく君、一緒に来て欲しいっす」


 人の話聞いてないし、もう完全に捜索隊の一人に数えてるね。

 どうしようか迷っている内に、視界の端を横切る4人組の姿が。出口に向かって行くじゃないか、このまま見過ごすなんて。


 「その、女の子は水族館を出てるかも知れないんだね?」

 「そうなんす、ちょっと目を離した好きに」


 いやいや、それは貴方の過失じゃないですか、金営さん。でも、これは乗るしか無い。


 「外は俺が探すよ。見つけたら、どこに連絡すれば?」

 「これにお願いするっす」


 銀八さんの持ってたコミュニケーターに、とってもよく似た物を優男さんは突き出す。


 「交換開始っす」


 言うなり俺のケータイに流れ込んできたよ、金営さんのメアド。


 「さんたく君がスマホなら、他に手が有るんすけどね」


 悪かったね、今時ケータイで。


 「あと、金営さんが探してるって事は、ここの人じゃないよね?」

 「あ、判るっすか? いかにも僕らと同じトコっす」


 あ、やっぱり。1962番宇宙だったっけかな。ビューレットさんの居る、多元宇宙の異世界。

 そこにも俺は存在するんだろうか? それよりも肝心な事を忘れる所だった。


 「だったら、さ。俺、翻訳機持って無いから、声かけても届かないよ、多分」

 「いつの間にか知識豊富になったっすね、さんたく君。耳年増って奴っす」


 ミミドシマ? 何だよそれ、単語が判らんよ。八景島の隣にある島か?


 「確かに困るっすね、これ無いと」


 そう言いつつ、自分の耳を指す優男さん。そこに、棗のオッサンと同じような機械が有った。


 「これ、貸してあげるっすよ」


 ポケットから無造作に同じ物を取り出して、金営さんは俺に渡す。スペア持ち歩いてるのか? この人。

 見よう見真似ってヤツで、オッサンと同じように耳にセット。金営さんが俺用に調整してくれた。


 「宜しくお願いするっす。何が何でも見つけ出さないと」


 何だか切迫してるぞ、優男さん。焦りが表情に出ちゃってる。そして俺も若干、焦りを感じてた。

 あの4人組は、もう水族館を出ちゃってる。


 「んじゃ、外は任せてよ。手品師さん」

 「魔術師と呼んで欲しいっすね」


 返事もそこそこに、俺は出口を駆け出て行く。あの4人組を見失う訳には行かない。


 「うわ、凄い人の波」


 外へ出た途端、館内に押し戻されそうな勢いで大勢の人が。雨、と言うより嵐になりそうな空模様、だから集まってきてるんだな。

 カーニバルハウスなんて施設に逃げ込む人達も、かなり居そうだ。いきなり土砂降りじゃ堪らないからね。

 閑散となってきたシーパラダイス、見渡しやすくなったのも事実。


 「居た」


 結構あの4人とも、足が速いみたいだ。追いかけるのが大変。

 すでに遥か彼方を歩いている、人波とは反対の方へと。


 「どこへ行く気なんだろう?」


 タワーやメリーゴーランドを素通りしていく、島の反対側に向かってるのか?


 「あっちって確か……」


 観光地のデートだから、昨夜は必死で下調べしたんだ。辛うじて頭の中に八景島の地図が浮かぶ。

 確か、点検で長期運休中のアトラクションが有ったはず。あとは島巡り船の発着所くらいかな?


 「どこ行く気だよ、まったく」


 分厚い雲が空を覆い、もう完全に嵐に突入って感じの八景島で、外国人4人組は更に人気の無いエリアに向かって行く。

 メリーゴーランドなんて誰も居ないよ。そこを通り過ぎようとして、俺はその前に立ち尽くしている少女に気付いたんだ。


 「お嬢ちゃん?」


 俺の呼びかけに、驚いたように飛び退いた小学生低学年って感じの女の子。

 目を丸くしてる、いや、それ以上に顔の半分くらい有りそうな丸メガネが特徴的だな。

 それにしても、そんなに驚かせちゃったのかな?


 「お、お兄ちゃんは……」


 おずおずって感じで返事が返ってくる。


 「あの、さ。もしかして金営さんって知り合い、居る?」


 優男さんの名前を出した途端、少女の顔から緊張感が消えた。良かった、こんな所で見つかるなんて。あの4人組に感謝、だね。


 「君の事、探してたんだ。金営さんに頼まれて」

 「ご免なさい。黙って来ちゃって」


 いや、俺に謝られても。とは思うけど、素直に謝れるイイ子だ。とりあえず自称魔術師さんとの約束は果たせた。あとはあの4人組を……そう思った刹那だった。


 「お兄ちゃん、左手出して」

 「え?」


 そう言われて、俺は屈んで左手を差し出す。


 「おまじない」


 少女は俺の左手薬指に、赤い糸を巻きつけて結んだ。薬指って……おませさんって言うのか? この場合。


 「あのね、私ね、やらなきゃいけない事が有るの。あの4人の所に連れてって」


 彼女の指差す方向、シャッターの閉まった売店の向こうはパラダイスクルーズって島巡り船の桟橋に続く、公園が有るはず。

 女の子に気を取られて、俺は4人組を見失っていた。彼女は、ずっと見てたのか? そんなはず無い、俺と向き合っていたんだから。


 「ね、連れてって」

 「判った、一緒に行こう」


 え? 何で俺、オーケーしちゃったんだ?

 喜んで俺の手を取り、今にも雨が降り出しそうな中、少女は駆け出す。

 そして俺も躊躇なく走り出した。なぜ?


 確かにあの4人組を追ってきたし、見失う訳には行かない。でも彼女を連れて行くか? 普通。

 まるで暗示にかかったように、俺は少女の言う事に従っていた。彼女の言う事が正しい、叶えなければ。そんな気にさえ成って。


 船の無い桟橋に続く道、すぐ横は遊泳禁止の砂浜。そこにあの外国人4人組は居た。


 「わぁ! お姉さん綺麗! お姫様みたい」


 無邪気に小学生の女の子が大声で呼びかけながら、俺の手を振り切って駆け寄っていく。


 「あのね、お嬢ちゃん。こちらは……」


 小学生高学年って感じの、4人組最年少が遮ろうとした。それを、あの姫君様が止めた。


 「構わぬ」


 一礼して、小学生男子が引き下がる。凄い威圧感、お飾りの姫なんかじゃない。ホントびっくりだ。


 「お姫様、左手出して」


 そんな圧倒的存在感を前にして、それでも物怖じせず女の子は、そう言う。あの社長秘書風のタイトスカートの美人さんが、怒りを顕にして進み出た。


 「無礼な、いかに子供とて……」


 そう言いかけるのを、左手を上げて姫君様が制する。


 「よい。そなた、名は?」

 「マリアだよ」

 「良き名じゃな。して左手とな、こうか?」


 差し出された手に恭しく触れ、俺の時と同じように少女は、あの赤い糸を姫君様の薬指に巻いて結んだ。


 「ほう、これは?」

 「おまじない、赤い絆って言うんだよ」

 「ふむ、これで終いでは有るまい」


 穏やかな笑顔で、姫君様は少女に問いかける。小学生低学年の女の子は一瞬、背筋を伸ばし直してから、こう言った。


 「パパを、助けて」


 その一言に、お付の3人が同時に動こうとして、片手を上げた姫君様に止められた。


 「詳しく申せ」

 「これを読んで欲しいの」


 少女が差し出したのは時代劇で見るような、書状って感じの折りたたまれた手紙だった。

 黙ったまま手紙を読み続け、姫君様は最後に、相分かった。って言ったんだ。


 「じゃあ、じゃあ、助けてくれるの? 一緒に来て」

 「理解した。そう申しただけじゃ」


 え? そう声に出して少女は固まる。姫君様は左手の薬指を顔の横まで上げた。


 「よく出来ておる。左手の薬指より脳に電気信号を送り、己が意に沿わせる、か」


 あ、そうなのか。思わず俺は自分の左手を見た。同じ赤い糸がそこに、有る。


 「妾が見えておる時点で、怪しむべきで有ろうしな、その巨大な眼鏡」

 「貴様!」


  姫君様の言葉に、そう叫んで小学男子と社長秘書さんが飛びかかろうとするのを、さっきより更に怖いくらい威圧感の有る声が制した。


 「動くな。わらわとこの者の話、邪魔するでない」


 ピタリって感じで二人が止まると同時に、最年長ダンディー紳士が姫君様の指から、あの赤い糸を取り去る。

 少女の足が震えているの見える。俺が助けに行かなきゃ、そう思うけど、俺も足がすくんで動けない。情けない。


 「今一度、問おう。そなた名は?」

 「……クレア」


 その名前に、俺の後ろから声が上がった。


 「う、うそっす、姐さん?」

 「金営さん?」


 思わず後ろを振り向き、そこに優男さんの姿を確認する。いつの間にここへ? それより姐さんって?


 「マリア、クレア……ふむ」


 姫君様は二度頷くと、続けてこう言った。


 「それが、そなたらの世界の技術、1962番宇宙で言う二次創作と言う物か?」

お読み頂きありがとうございました。


厳しい御批評・御感想、そして御指摘、お待ちしております。


今後とも宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング もし宜しければ、1票お願い致します。まずは、ここをクリック
連載エッセイ
『平行宇宙(パラレルワールド)は異世界満載?』
「サンたくっ」の世界観を構築、解説してまいります。どうぞお立ち寄りくださいませ。

感想評価レビュー を心よりお待ちしております!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ