表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サンたくっ! ~異世界なんて隣町? 俺って、この複雑怪奇な多元宇宙で、3人目?~  作者: 星嶺
第5章 Kaleidoscope、枯れ井戸(かれいど)すこ~~プッ!
44/94

Kaleidoscope、枯れ井戸(かれいど)すこ~~プッ! 第6話

 ヲタ平の言う多チャンネル一斉放送、が一番正しいんだろう。全てのモニターが全く違う風景を映し出してる。

 ただ、多元宇宙実況チャンネル、が正解なんだろうな、多分。


 「これってぇ、ドラゴンだよねぇ?」


 一番近くのモニターを覗き込んで、ヲタ平こと平坂登は、歓喜の声を上げた。

 ドラゴン、ラノベで市民権を得た最強の幻獣が今、編隊飛行中なんだよ。ヲタ平で無くても興奮するよね。


 「もっと大きい画面で見たいよぉ」


 確かに無限にモニターを並べる感じなんで、一個辺りの大きさはパソコンの15インチモニターくらい。


 「確かに小さいなぁ」


 俺のつぶやきに卵は即、反応する。


 「一ツ、ニ絞ル事ハ可能デスガ」

 「そうしてくれ、一個でいいよ。このドラゴンが飛んでるヤツ」


 瞬時に、無数にあったモニターが消え、ヲタ平が見ていたのが壁一面に拡大された。


 「すげぇな」

 「これ、最高だよねぇ。最新のプロジェクションマッピングかなぁ?」


 俺達の目の前の壁が一枚のモニターと化して、そこをさっきのドラゴンが横切っていく。


 「でかっ!」


 俺の身長と同じくらいのドラゴンの頭が、モニターいっぱいに。思わず叫んじゃったよ。


 「うわ、こっち見たぞ!」


 俺の叫びに応じたのか? ドラゴンの目が動く、本当にこっちを見たような感じで。


 「あぁ、止まったぁ?」


 空中で一回転してホバリング中の、さっきのドラゴンがこっちを向く。そして口を目一杯開いた。その口の中で燃え盛る炎が。


 「ヤ、ヤバイってこれ!」


 慌てふためく俺の目の前で、火の玉がドラゴンの口から吐き出され、こっちに飛んでくる! と思った瞬間、映像が切り替わった。


 「え? ドラゴンは?」


 ボケた声を出す俺の横で、へたりこんだスケコマ師が画面を指さす。


 「どこだよ、これ。いきなり変わったぞ」


 農民の方々が畑を耕してる向こうの道を今、一頭の馬が駆け抜けて行くところだった。


 「戦国時代か?」

 「よく判るな、スケコマ師」

 「大河小説ドラマは毎年見てるぜ」


 そっからかよ。とは思うが、ホントに好きなんだな、時代劇。

 馬に乗ってるのは、まだ少年って感じ。


 「なんだか高価そうな着物だな、どっかの若様かよ」


 スケコマ師は、そう言うけどね。


 「にしては、帯じゃなくて縄だろ、腰に巻いてるの。頭だって縄で結ってないか?」

 「半袴に赤鞘の刀か……って、まさか?」

 「何だよ、知り合い?」


 笑う俺に、スケコマ師こと駒下恭介は真顔で告げる。


 「織田信長じゃね?」

 「え? いや、画面全体にでも拡大しないと確認できんでしょ?」


 そう口にした途端、卵が応じた。承知致しましたってさ。

 大画面いっぱいに、美少年と言っていい横顔が。美しい、のレベルだよね、この子。


 「これ、女の子だ」

 「んな馬鹿な。織田信長なんだろ?」

 「いや、間違いない。俺が女性を見間違えるかよ」


 う~ん。説得力有る一言、それだけの為に生まれてきたと自称してるだけの事は有るね。流石はスケコマ師。


 「乙女信長って小説有ったなぁ」


 スケコマ師が小説?


 「何だよ、時代劇小説は必ず読むぜ」


 お見それしました、って言ってる間に画面がまた変わった。お別れです、多元宇宙のどこか別世界の織田信長様。

 そして今度は棍棒持った豚面の大男どもに、やたらSFっぽい甲冑の騎士団らしき男達が、巨大な剣で斬りかかって行く。

 かと思えば、ホバークラフトかと思うような空中を浮かんで移動する、高級車とパトカーのデッドチェイスだったり。

 あるいは嵐の荒野でぶつかり合う、白黒2体の巨大ロボットの剣戟シーンが映し出されたり。

 全く違う映像が、次々に壁いっぱいのモニターに映し出されては消えて行く。


 「今度は海賊船が、でっかいタコに襲われてる」

 「クラーケンっての。時保はホント、そっち系に知識無いな」

 「ゲームやらないからな、俺」

 「ま、いいけど……おぉ!」


 一つところを映してるのは、各1分前後なんだろう。次々に画面が切り替わっていくんだ。しかしヲタ平の声が、さっきからしない。


 「スケコマ師、ヲタ平は?」


 舞い踊る美人の人魚達に抱きつこうと、大画面に取り付く我が友が、面倒臭そうに地面を指差す。


 「気、失ってる?」

 「最初の、ドラゴンの後。直ぐな……あぁ」


 画面から光が消え、卵がガイドツアーの終了を告げた。


 「残念、もっと見ていたかった」

 「最後のだけだろ」


 そう言いつつ俺は、倒れたままのヲタ平こと平坂登を起こす。全然いいとこ見れなかったんだな、こいつ。


 「起きろよ、ヲタ平。終わったぞ」


 真っ暗に戻った井戸の底の部屋の中、スケコマ師の額のライトが点灯した。ありがたい事にケガはしてないみたいだ、ヲタ平。


 「う~ん、ここはぁ、どこぉ?」


 いやいや、君が連れてきたんでしょうが?


 「あ? 頭打ったのかよヲタ平。井戸の地下だろ? しっかりしてくれ、超常現象研究サークルを部活に昇格させんだろ?」


 スケコマ師、なぜかヤル気満々。あ、女の子三人の期待が掛かってるからね。


 「ふぅ。思い出したよぉ」

 「んじゃ、帰ろっか?」


 努めて明るく、俺は二人に声をかけた。


 「おいおい、まだ……」


 動画撮影できてない。そう続けたい駒下を無視する形で、ちょい肥満気味お公家面は、あっさりと俺の提案を飲んだんだ。


 「そだねぇ~。帰ろうかぁ」

 「え? オーケーって?」

 「ヲタ平、お前!」


 驚く我ら二人に、元々細い目を更に細めてヲタ平は、ニタァって感じで笑う。


 「プロジェクターの使用登録はぁ、トッキーがしてくれたじゃなぁい。だからぁ今からってぇ急がなくても良いんだよぉ」


 プロジェクターじゃ無いんだけどね。

 ってヲタ平、さっきはオーパーツとか言ってたくせに、いつの間にか常識の範囲内で物事を捉えてるぞ?


 「今度はぁ、七色の光だけじゃなくてぇ、本物のプロジェックションマッピングをぉ見せれるしぃ」


 だからプロジェクターじゃ無いって。

 完全に普通の思考、どこが超常現象研究サークルなんだよ。


 「あぁ、そうだぁ。ここから運び出そうよぉ。こんな地下室にぃ、置いとく事、無いじゃなぁい?」

 「それもそうだな」


 ウォナハイム社製? とか言いながらヲタ平は卵の重さを測ろうと下から手を回す。


 「そんなにぃ重くないよぉ」

 「あ、コンセント抜かなきゃな。コードはどこに伸びてんだ?」


 プロジェクターじゃないから、そんな物どこにも、付いても伸びても無いって。


 「無いよぉ」

 「電池式か」


 な訳、有るか! オッサンなら間髪入れずに怒鳴るんだろうな。

 だいたい、どれだけの電気代がかかるんだ? 壁いっぱいの大画面投影って。

 そう言えば、投影じゃなかったな。壁に画面が浮き上がってたような。

 それにだよ、どこにあれを動かす電源が有るんだろ? エンジン搭載? せいぜいラクビーボールくらいの大きさの卵なんだよ。

 疑問の連発で頭がパニックになりそうな俺を尻目に、二人がかりで多次元宇宙移動装置を持ち上げようとしてる。


 「ちょ、ちょ待って!」

 「何だよ時保」

 「これって持ち主が居ないのか?」


 二人はポカンとした顔を、互いのヘッドライトの明かりに照らしていた。


 「だって、そうだろ? 井戸の地下に部屋作って板で扉も作って、この卵を板囲みで隠してたんだぜ」

 「発掘品かもぉ」

 「そうだぜ時保、奥沢城の遺跡から出たお宝かもな」


 いやいや、これってどう考えても別世界の代物だろ? 壁をモニターと化して動画映す機械だよ? 普通じゃないだろ?


 「さぁやちゃんに見せたいよねぇ、これ」

 「我らが超常現象研究サークルの女子連中に見せたいじゃないか。時保、判るだろ?」


 いや、判らないでも無いけどさ。そこは。


 「けど、ここから持ち出すのは、やっぱヤバイって」


 そう、もしも多次元宇宙の他の世界から来てる奴の物なら絶対、揉め事の種だって。


 「こんな所にぃ隠してんだからぁ、犯罪の匂いがするのはぁ」

 「まぁ確かだな」

 「犯罪の匂いって、ならマズイの判るだろ? ここまま、ここに置いて帰ろう」


 もし見たくなったら、ここに来ればイイって。それだけの事だよ。

 俺は、そう力説した。どうやら、渋々だけど二人も俺の言う事に耳を傾けてくれそうだ。


 「トッキーが参加してくれたらぁ、プロジェクションマッピングは、いつだって見れるしねぇ」

 「まぁ俺達が泥棒になる訳には、いかないか。やっぱり」


 良かった。とりあえず納得してくれそうだ。


 「じゃぁ、今夜はこの辺りで。帰ろうぜ」


 俺がそう言った刹那、真後ろから突然、怒鳴りつけられた。


 「お前ら! 人の家で何してくれとんねん! 空き巣か? こらぁ!」


 それは俺達と年がそんなに変わらない、若い女性の声だったんだ。

お読み頂きありがとうございました。

厳しい御批評・御感想、そして御指摘、お待ちしております。

今後とも宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング もし宜しければ、1票お願い致します。まずは、ここをクリック
連載エッセイ
『平行宇宙(パラレルワールド)は異世界満載?』
「サンたくっ」の世界観を構築、解説してまいります。どうぞお立ち寄りくださいませ。

感想評価レビュー を心よりお待ちしております!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ