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サンたくっ! ~異世界なんて隣町? 俺って、この複雑怪奇な多元宇宙で、3人目?~  作者: 星嶺
第2章 採って盗られて獲られて捕って(とってとられてとられてとって)
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採って盗られて獲られて捕って 第8話

ばっさり講座(勉強になりました。ありがとうございます)にて頂いた御批評・御指摘を元に、読みやすく判りやすくする為に、第2章も続けて加筆・訂正、全面改稿。

 ニセ坊主事件から約1週間。街は、いや我が校は、GWを前に浮かれきってる。

 GW? もちろん、ゴールデンウィークの事だよね。

 あれから俺の周りは、いたって平穏。正直言って拍子抜けしてる。


 「ああ言う話しといて、音沙汰無しかよ」


 下校途中、あの、最初の出会いの場所。多分、スラム化の影響で空き地になった場所に、俺は差しかかっていた。


 「ここから、全てが始まったんだよな」


 そんな事を考えてる俺の目の端に、見覚えの有る棒きれが。

 思わず、茂ってる草むらに隠れる。


 「マジ、居たよ……」


 呟きの聞こえない程度の距離に、多元宇宙の俺と俺が。片方は、この季節に相変わらず革ジャン着て、地べたに胡座かいてる。


 「んで? まぁだ捕まえらんねぇのかよぉ?」

 「30人以上の大所帯のはず、なんですけどね」

 「用心棒まで居んだぁろぉ?」

 「良くご存知で」

 「まぁな」

 「琢磨くん、ですか?」

 「目くじら立てる事ぁ無かろうがよぉ?」

 「立ててませんよ」


 嘘つけ。初夏向けの品の良いジャケットを着こなしながら、気化生命体の体からは怒りのオーラが立ち上ってる。


 「そちらこそ、良いのですか?」

 「あのインド人かぁ?」

 「ハーフだったと思いますが。判ってらっしゃるんでしたら、何も言いませんがね」

 「とりあえず抜け荷の件で、身柄の引渡し要求は、したがよ」


 密輸を抜け荷って……何時代なんだよ。そうツッコミを入れたいのを我慢して、俺は立ち聞きを続けた。


 「理解してたなら、良いですよ。あの梟に似た男の事」

 「まぁな。普通、俺を止めるよなぁ?」

 「でも、犯人の腹を蹴り上げた」

 「くちゃべられたく無かったんだろうぜぇ」


 何をだよ。あのフクロウ刑事、まともな人じゃなかったのかよ。


 「ゆびき、そこで途切れましたね」


 湯引き……ハモの? そんなお気楽な話じゃないよな。そう思いつつ、耳をそば立てる。


 「ユビキタス。ってぇ言葉は、あそこで出したく無かったんだろうがよぉ」

 「厄介な組織が、絡んでいるようですね」


 棗のオッサンこと1398番宇宙の俺は、無言で頷いていた。


 「だからよぉ、イー・アァ・ウーから、泣きが入ったみてぇぜぇ」

 「やはり……」

 「んだぁ? オメェんトコもかよぉ?」

 「えぇ。125ヌクレオチド連合から、正式に依頼が来たようです。つながる所、ほぼ全域に、みたいですよ」


 何だよ、その125抜くれ、なんとかってのは? 初耳だよ、俺。


 「だからですか? 彼に、あんな事を言ったのは」

 「さぁな。今回の件で、ボウズが足手纏いだって事ぁ、オメェも判ったろぅがよぉ?」


 くそっ! オッサン、覚えてろよ。事実でも、いや事実だからこそ傷つくんだぞ。


「それだけですか?」

 「カァちゃんにも、怖い思いさせちまったろうがよぉ」

 「そちらが、本音でしたか」


 妙に納得した表情で、1637番宇宙の俺こと、阪本銀八さんが頷く。茂みから覗いてるから、棗のオッサンは表情が見れない。


 「これ以上ボウズを、関わらせるのはヤベぇんじゃ無ぇかってぇなぁ。オレらの方から関わんのもなぁ」


 銀八さんを見上げて、棗のオッサンは告げた。溜め息を付きつつ、気化生命体のイケメンは切り出す。


 「確かに、そうかも知れませんね。彼に関しては若干、同情してますから」

 「あぁ?」

 「貴方、あの日、お寺の喫茶店でバイトの女性を、不躾に見てたでしょう?」

 「んだよ。オメェの気にする事かぁ?」

 「多分、女子大……短大生かな、位の年齢ですよね?」


 あれ? 棗のオッサン、固まった?


 「まぁ、な。似てたような、気がしてよぉ」


何か、今まで以上に、この話、気になる。


 「あんな牛乳瓶の底みてぇな眼鏡に三つ編み御下げなんてぇのじゃ、無かったんだぁがよぉ」


 かなりヒドイ言いざまだけど、寺カフェのお姉さんの事だと、俺でも気付いた。


 「分岐したんですね、おそらく」

 「多分、なぁ」


 ぶんき? 何だよそれ?


 「あの日、お寺の店で、彼は女子大生の彼女と巡り合うはず、だったんでしょうね」

 「オレ様のお仕事を手伝ってくれたからよぉ、多分なぁ……」

 「深く関わる事無く、ですか。1498番宇宙とは違う未来になる、と?」

 「お流れ、だろうなぁ、この1500番宇宙ではよぉ、多分」


 頭真っ白、目の前真っ暗、だよ。今の俺。


 「ま、ちったぁ悪いと思ってんだがよぉ」


 銀八さんが大きな溜め息を付いた。


 「1ピコグラムも思ってないですね」


 オッサン! そこで否定しろよ! 大げさに肩すくめてないでさっ!

 今すぐ飛び出して、怒鳴りたい気分を必死で抑えて、うずくまる。そんな俺の耳に、二人の会話が流れ込んでくる。


 「定期報告は、コンなもんだぁよなぁ?」

 「ええ。ではまた」


 おう。と棗のオッサンが応じ、いつもの重力波が来た。

 顔を上げた俺の視線の先には、誰も居ない空き地が有った。そして、彼女ができるはずだった、失われた俺の未来も。


 「う、嘘だろぉおぉおぉおぉぉぉぉぉぉ!」


 我ながら情けない絶叫が、暮れなずむ麗らかな夕暮れに響き渡る。

 そんな俺を、物陰から誰かが見ていたなんて、その時は気付きもしなかったんだ。


 第二章 了

厳しい御批評・御感想、そして御指摘、お待ちしております。

今後とも宜しくお願い致します。

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『平行宇宙(パラレルワールド)は異世界満載?』
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