最終章・Last Story〜仮初の最終話〜
これが最終話です(大嘘)
案の定分量が倍増しました(๑>•̀๑)
時は経ち今日はついに俺ら異世界人が元の世界へと帰還する予定である日
多くのクラスメイト達はこの日を待ちに待っていたらしく
「やっと帰れる……」
「長かったよ……」
とか言って泣いている者や
「帰ったらまずなにする?私は久々にしたいこといっぱいあるなぁ」
「俺は帰ったらまず家で親の料理が食べたい」
等々の元の世界へと戻ったらまずなにしたいのか談義に花を咲かせている者もいる
一貫して言えるのは全員が全員元の世界へと戻れることを喜び心待ちにしていることだろう
俺としては近藤や田中なんかはこの世界に残って冒険者でもやるとかなんとか言いそうだなぁと思っていたけれど近藤に関しては何も言わず、田中の方は
「チートもないのにやってられるか!僕は元の世界へと帰るぞ!」
とか言っていたらしい
まぁ揉め事なく帰還への意思統一が出来たのは喜ばしいことだ
もし意見が食い違えば最悪洗の……じゃなくて話し合いをしなくてはならなかったであろうし
ちなみに遠山や近山の2人
この2人は俺の特別特訓を終えてからまるで人が変わったようになってしまい今ではとても大人しい
今も何も発言することなく部屋の隅の方でひっそりとしている
この前の戦いでも今までと人が変わったかのようにただ黙々と戦闘を繰り広げていたらしい
その際に他のクラスメイト達からかなり心配されたようだがそこら辺の話はよく知らない
まぁ興味ないしね
それにこの2人だけではなくクラスメイト達の中で一際煩かったりこの世界にきて力を得て、多少調子に乗っていた奴らはほぼみんな大人しくなっている
これならば元の世界へと帰っても再び希暗をいじめたりなんてことはしないだろう
ほんと何があったんだろねー(棒)
そんなわけで今俺達クラスメイトは全員揃ってスリイアの王城の地下にある召喚の儀式が行われた祭壇のある場所へと勢揃いしている
そう全員揃ってだ
つまり………俺は元の世界へと帰るわけである
これに関して言えば、つい先日
「俺も元の世界へと帰還するよ」
と数人に対して発言した際に
「呂阿は本当にそれでいいの?」
と希暗にはかなり心配され
桜前には
「神楽君がその選択肢を選んだのならば私からは何も言わないわ。それに言う資格もないしね」
と言われた
そんな2人には
「大丈夫だよ。ちゃんと俺が決心した事だから」
そう伝えておいたのでそれ以上は何も言われなかった
2人共が心から俺に対して心配をしてくれているのに対して少し悪い気もするが俺はこんな簡潔な言葉でしか答えることが出来ない
それよか問題なのは白月だ
白月は俺が最初に帰還すると言った時は誰が見ても分かるくらい嬉しそうにしていた
だが少ししてから急に
「でもそれじゃセリアさん達は……」
とか言い始めて最後の方には
「やっぱり神楽君はここに残るべきだよ」
とか言い出す始末
いったい何があった?って聞きたいくらいの手のひらの返しっぷりだ
だがそんな白月にくってかかるのが瑠奈
瑠奈も俺が帰還すると言った際に喜び
「また向こうでもよろしく」
的なことを言っていたのだが白月の発言を聞くと
「呂阿が残るなら私も絶対に残るから」
と強い口調で俺に言ってから何故か白月と口論をはじめだしていた
あの時は2人の気迫に押されて俺は何も出来なかったが桜前が
「いい加減にしなさいよ2人とも!この件に関しては神楽君が決めることよ、私達が口出しするもんじゃないわ!」
と言って2人をとめてくれたおかげでその場はお開きになった
その後から今の今まで4人とは会っていない
恐らく既にクラスメイト達と一緒に魔法陣の中にいるのだろうが俺は帰還の魔法の発動を少し手伝わないといけないためまだクラスメイト達からは少し距離をとっている状態
だが瑠奈はずっと俺の方を見ているはずなので俺が逃げ出そうものなら確実に瑠奈も逃げ、元の世界への帰還はほぼ確実に失敗するだろう
そんなことを考えていると俺の場所へとフロリアとリアが歩いてくるのが見える
フロリアは今回の帰還の儀式において主軸
なんせ俺がほぼ無理やり手伝いをするように説得したシシリア達から力を借り受けて帰還の魔法を発動するのは誰でもないフロリアであるのだから
ちなみにもう既に俺含めクラスメイト達は全員が全員この世界にきて手に入れた力をほぼ全て失っている
元の世界へと無事に帰還出来た時に全てが元の状態に戻るというわけだ
なのでフロリアの気分一つで俺達の帰還はなしえなくなる
まぁそんなことをフロリアがするとは思わないが
そんなフロリアであるがもちろん俺が帰還するとの主の話をしたときに大泣きされた
この反応はある程度分かっていたことだが流石に堪えたが致し方ない
その際フロリアに
「どうしても呂阿は元の世界へと帰るのですね?」
と聞かれ、そんなフロリアに対し
「俺が帰らないとなると他のみんなが帰れなくなるからな……ごめん」
と言い訳がましいみっともない言葉でしか返答することが出来なかった
なんせ泣いているフロリアをみて罪悪感しか感じなかったから予定してた言葉なんてふっとんだ
するとそんな俺に対してフロリアは
「ふふっ……友達を優先する、その優しさこそ呂阿ですね。ですが…私はとても悲しいです」
泣き止んだかと思えばドストーレとに悲しみを訴えてくる
(ぐっ!…俺に詐欺師の才能があれば!)
なんてかんがえてもフロリアに返す言葉は見つからない
もともと口下手シャイな俺にこの状況で気の利いた発言なんて出来るわけないのだ
そうして俺が言葉につまりうだうだしていると急にフロリアが俺に抱きついてくる
(えっ?………えええっ?)
予想出来なかったフロリアの行動に慌てる俺
だがそんな俺を無視してフロリアは
「だからっ………最後に少しだけでも一緒にいてください……!」
そう言いながら抱きつく力を強める
だが実際に声は震えているし力を入れているつもりなのかもしれないが以前と比べてもとても弱々しい
流石にこの状況でフロリアを引き離すような男ではないので俺はなすがままにされる
……もちろん気の利いた言葉なんてうかばないまま
どこまでも情けない限りである
そのあとフロリアとしばらくの間会話をしてから無事に帰還の際に力を貸してくれる約束を取り付けた
フロリアに帰還の手伝いをさせるのはほんと鬼畜なんじゃないかと思ったが、フロリアにしか出来ないというシシリア達からの伝言を伝えると
「それに関しては私の方にも女神様より連絡が届いております。なので心配しなくても私が責任をもって呂阿達を元の世界へとお送りしますね」
と笑顔で言ってくれた
その笑顔を見てドキッとしたのはここだけの秘密である
そんなわけで今現在
魔法陣の作成も魔力の充填も終了しているし、さっき聞いてみたところシシリア達の方も準備は完全に整っているそうだ
さらに言えば帰還する対象者も全員がこの場に揃っているためにもういつでも帰還の儀式を開始できる
俺の最後の役目は残りの力を全て魔法陣に込めるだけ
だからまだ1人だけ魔法陣の外にいるのである
そうして俺が最後の仕上げを行っているとフロリアが話しかけてくる
「それで全ての準備は完了ですか?呂阿」
そう言うフロリアは笑顔ではあるが悲しみを押し殺した感じの笑顔でぎこちない
今までならばその原因を取り除く手伝いを出来たのだが今回に限っては原因が俺のため無理だ
俺はそんなフロリアの様子に触れることなく
「あぁ、もう完了した。これで全部終わりだ」
そう言いながら立ち上がるとフロリアの方を向く
今のフロリアを真正面から見ることはかなりきついが仕方ないことだ
俺はそのままフロリアと恐らく最後になるであろう会話をはじめる
「色々お世話になったな。あと……ありがとな。こっちの世界も結構楽しかったよ」
そんなありきたりなことしか言えない俺は自分に少し腹を立てるがそれ以上に言葉が出ない
それはフロリアも同じようでフロリアも沈黙を貫く
そしてしばしの無言のまま見つめあったのち
「それじゃ……さよならだ、フロリア」
「えぇ、さようならです。呂阿」
お互い短く挨拶を交わし俺は魔法陣の中へと入っていく
決して後ろは振り返らない
今振り返ると決心が鈍るから
そうしてい端の方で待っていると準備が整ったのかフロリアの声が聞こえる
「異世界人の皆様、此度はこの世界を救っていただき誠にありがとうございました!この国、いえこの世界を代表して私からはお礼をのべさせていただきます。それでは今から帰還の儀式を開始します。ですので絶対に魔法陣の外に出ないで下さない!」
フロリアがそう言うと魔法陣が微かに明かりを放ちはじめ、次第に明かりは強くなっていく
(これでいよいよこの世界ともおさらばか。……色々あったけどやっぱり楽しかったかな…)
そんなことを考えていると部屋が眩い閃光にて包まれる
そして再び目を開けた時
俺がいたのは今まで立っていた祭壇のある地下室………ではなくあの日俺達がいたはずの教室の景色そのものであった
(戻ってきたのか……なんか懐かしいな)
俺はそう思いつつ帰還出来たことで騒がしくなりつつある教室をただ1人あとにする
そして気の向くままに屋上へと向かいのんびりしようかと思って寝転ぶとこの場所に誰かがくる足音が聞こえる
「やっぱり呂阿はここにいたんだね」
そう言いながら声をかけてきたのは勿論希暗だ
少し走ってきたのか息を切らしている
(つい先日まではちょっと走ったくらいじゃ息切れなんてしなかったのにな……俺もそうだが希暗も慣れるまで大変そうだぜ)
そんなことを考え物思いに耽っていると
「……やっぱり呂阿はここに戻ってきたのを後悔しているの?」
そんなことを希暗が聞いてきた
そう言う希暗の声は少し悲しげだ
だがそんな希暗に俺は飄々と答える
「そんなわけないだろ。俺は自分の意思でこっちに帰ってきたんだ。今もこれからも、その事で後悔して悩む日なんてこねぇよ」
そう伝えつつ俺は柵にもたれる
これは紛れもない本心だ
いつもは適当な俺だが決める時はキチンと決める
あとでうじうじと引っ張って後悔しない
これだけは今までもこれからも俺の生き方として続けていくだろう
そんな俺を見て希暗は少し表情を明るくしながら話しかけてくる
「いろいろあったね。ほんと夢じゃなかったのか疑いたくなるようなことばっかだよ」
そんな希暗に俺も応える
「まぁ無理もないな。あんな体験なんてすることもうないだろ…多分。それでもあれは夢じゃなかった、そう思えるのは確実だな」
そうな俺の言葉を聞いて希暗も
「そうだね、確かに呂阿の言う通りだよ。あれは決して夢じゃなかった。もう巻き込まれるのは嫌だけど決して辛いだけの1年じゃなかったよ」
そう言う希暗は晴れ晴れとした表情だ
そして希暗はこう続ける
「ねぇ呂阿、僕はこの世界でも強くなるよ。喧嘩が強いとかじゃなくて心が強い人に。あの世界で教わったことや経験したこと、それらを無駄にしたくないからね」
決意した表情で俺を向いてそう言う
今の希暗を見れば桜前は確実に惚れ直すだろう
それどころか他の女までよってきて修羅場が見れるかもしれない
それはそれで面白いけど
(こんなことを言えるようになるなんてな……以前の希暗からは考えやれないなぁ。……俺は成長しているんだろうか)
そんなことを思いつつ俺は空を見上げる
さっきまでの事は夢じゃない
そんなことを言われた気持ちになるほど透き通った空
そんな景色を見て俺も決意する
(俺も成長しないとな)
どう成長するかは分からない
だが今のままの適当な俺では駄目だろう
少なくてもきっちりとケジメをつけないといけないことが身近に1件あるわけだし
とりあえず辛くもあり楽しくもある1年だった
俺の場合は楽しいことの方が多かったような気がするけれども他の奴らはそうでもないだろう
だけど今回の経験は全員のこれからに生きていくはず
まぁ中には既に変わってしまった奴もいるけどね
といっても
(あぁ〜、便利魔法欲しいなぁ)
そんなことを考えている俺はまだまだ成長しない様子である
……To be continued(?)