最終章・これで準備は整った
誰も俺と戦える奴がいなくなったことにより不要になった結界を解除する
ちなみにリーニャが貼った結界は既に俺と希暗との戦闘の余波により壊れているのでリーニャに結界の解除を頼む必要は無い
それにもう既に3人は今朝までいた所に戻って各自訓練をするように結界が破られた時点で指示を出してあったのでもうこの近くにはいない
今回に関しては結局のところ最初からいてもいなくても変わらなかったのでセリアとクロアからすれば完全に網羅無駄足だった
そこは予想外だったので後で謝っておこう
そんなことを考えつつも俺は結界を消し終わると先程から言葉もなく俺を見つめることしか出来ていないルーカスや大臣達に声をかける
「これ以上何か言いたいことややりたいことでもあるか?ないなら今から俺の要求を伝えていくけど」
そんなことをニヤニヤしながら言う俺はずいぶんと悪役が身についてきたに違いない
どう見ても事情を知らない人から見れば今の俺はこの国にとっての敵でしかないわけだし
ちなみにこの場にいる人間の中で唯一事情を知っている希暗はつい先程白月による回復魔法によって既に意識を取り戻していて、今現在は1人で立つことすらできないのか桜前に肩をかりて立っている
そんな希暗が腹部に手を当て苦しそうにしているのを見て少々力を込めすぎたかもしれない、と軽く反省
ちなみにその他の意識を失っていた3人は白月以外の回復魔法を使えるクラスメイトによって意識を回復させることは出来たもののまだ立ち上がることすら出来ないようで床の上で横になっている
3人が3人とも俺を凄い形相で睨んで来ているけどまったくもって怖くもないし逆に滑稽だ
せめて立ち上がってからにしろよというツッコミを内心しながらも俺はルーカスや大臣達からの返事を待つ
ここでの首脳陣の反応によってまた少しやらねば行けないことが増えたりするので俺は至って真面目な表情で首脳陣を見据えている
そして待つこと数分
やっとの事でルーカスが口を開く
「お主の力はよく分かった。先程の戦いを見てもこの国の持つ戦力ではお主1人にすら勝つことも出来ないだろう。よって此方はお主の要求をできるだけ聞き入れることにする」
そう言うルーカスの言葉を聞いてラハットや騎士団員達は苦虫を噛み潰したような表情をし、大臣達は驚きを隠せずにいる様子であるがルーカス自身は特に表情も変えること無く平然と佇んでいる
これはどうやらまた良からぬことを企んでいそうな予感
そう思いつつも俺は話を進める
「要求を出来るだけ聞き入れるっていうのは認められないな。俺からの要求は全部受け入れてもらう」
俺がそう言うと大臣達の一部が野次や罵倒を飛ばしてくるがひと睨みして軽く威圧するとすぐさま黙る
もうルーカス以外は完全に蚊帳の外状態
俺とルーカスのやり取りが続いていく
「もしその条件を呑んだ際に許容出来ないような要求があればこの国は全ての戦力を持ってお主と争うことになるが?」
「別にそれはそれでいいよ。余裕で勝てるし」
「もしそうなれば我が国は壊滅的な被害を受けるのは確実。そうなればお主の目的であるこの国が他の国と協力して何を果たすようなことは不可能になるがいいのか?」
「それはそれで構わないよ。それにこの状況だとあんた達にはもう俺に意見するだけの力がないって分からないのか?」
そう俺が言うとルーカスは黙り込む
事実こいつらは俺に意見するだけの立場にない
なんせ俺からすれば別にこの国が無くなっても戦力が減った分守るべきところも減るので大した問題でもない
俺がこの国を気にかけているのはフロリア含め知り合いを守るためと女神達から頼まれているからだ
そんな想いもあり俺としてはこの国を見捨てるつもりはないのだが如何せんルーカスが大人しく俺に従おうとしない
知恵が余計にある分めんどくさい
そう思っているとルーカスが口を開く
「ではまずお主の要求を聞かせてもらおう。此方がそれに対してどう対応するのかはそれを聞いてから答える」
そう言われた俺はこのあと3種族での協力関係を結ぶために必要な条件を伝えていく
「まず最初に数日後に行われる各国のトップ陣による会議にこの国の代表者も出席してもらう。その場で3種族が協力しなければならない理由を伝えたうえで対策や協定の内容何かを決めてもらう。そして次にこの国にいる獣人と魔人の全ての奴隷の解放、ただし望んで奴隷のままでいたいとか言うような特集な奴は除く。そして最後に3つ目、小さい集落や農村の人々をある程度大きな都市に一時的に避難させること。この3つが俺からの要求だ」
そう俺が言うと大臣達はお互いに何やら色々と意見を交わしはじめ無理だ、不可能だ、何故そんなこと、等々様々な意見を口走っている
そしてルーカスもその中にまじり大臣達と意見交換をはじめる
ちなみにこの国に関しては邪神に関する情報は現時点では全く伝えていない
その理由に関してはのちのち話そう
本当は話せばその分説得何かが楽になったのだけど今回ばかりは仕方ない
なのでその分フリーナに頼んで信託の方を広めてもらうようにしているわけだし
そうして俺がルーカスの返事を待っていると大臣達との意見交換を終えこの国の総意とも言える言葉をルーカスが発していく
「その3つの要求、我が国は全て受け入れよう。丁度巫女による信託が出ていてそれがお主の話す内容と似ているという情報もある。2つ目と3つ目の要求に関してはすぐさまというのは無理だがその主の内容をすぐさま発令しよう」
そんなルーカスの返事を聞いて俺は内心ホッとする
ここで要求を呑めないなんて言い出されてたらルーカス含め目の前の首脳陣を洗脳するor消す予定になっていたから
俺としては後者の消す考えの方が強く、次の王にフロリアを据えるのが作戦の別案だったりする
だが今回はそれなりに上手くことが進みそうなので一安心一安心
「それじゃあその会議に出席する代表はあんたとあんたで決定な。迎えは3日後に来るから準備をしておくように。あと奴隷の解放と人々の避難、どちらかでも解決する動きがみられないならばすぐさま実力行使にうつらせてもらうからそこんとこよろしく」
そう簡潔に告げると俺はそのまま踵を返して広間から出ていくべく歩き出す
その際にきちんとくり抜かれた王城の壁の一部も直しておくことは忘れない
ちなみに指定したのはルーカスとラハット
これ以外にもフロリアとリアもつれていくので人数的には丁度ぐらいであろう
そしてそんな風に堂々と広間を歩いてあとにする俺を他の奴らはただただ何も言えずに見ていることしか出来なかった
……To be continued