最終章・本日も別視点よりお送りいたします(´・ω・`)
《side 王城組》
伝令役によって王や大臣達のもとへと呼び出しを受けたことでフロリアとリアを部屋に残して3人で広間へと向かう
行く途中で他のクラスメイト達にも会うかと思いきや既に他のクラスメイト達は広間へと向かったようで周囲に反応はない
恐らくいつ戻るか分からない希暗達は呼び出しを受けるのが1番遅かったのだろう
そうとはいえ、いつの間にか部屋にいる希暗達を不思議に思う人はいなかったのだろうか
なんせ希暗達は前回のスリイアでの戦闘以降ずっとダンジョンにいると思われているはずである
何故ならダンジョンからこの王城へと帰ってきたという目撃情報がないから
この世界の常識を無視した転移の乱用によってこの王城にある部屋とダンジョンを行き来しているなんて誰も想像できるまい
なので本来ならばこの部屋にいるはずのない希暗達が部屋にいた事に対して伝令役も驚いただろう
どうせ居ないだろうと思いつつ部屋に呼びに行ってみればそこにいるのだから
まぁそんな些細なことはさておき3人は他のクラスメイトと王や大臣達の待つ広間へと足を踏み入れる
ざっと見てみた感じでもやはりクラスメイト達は希暗達3人を除いて全員揃っているようであり希暗達に視線を向けている
そしてそんな視線を向ける広間の中にいる人々だが希暗達、というよりは希暗を見て表情を変え驚きを顕にするのが数十名
驚きつつも冷や汗を流していたり悔しさからか憎悪の視線を向けているのが数名といった感じで見受けられる
それもそのはず
桜前や白月は希暗のことを見慣れているせいか希暗の変化についてさほどよく分かってないのだ
今の希暗はある程度の実力がある者達から見れば圧倒的な強者の風格ともとれるほどの威圧感や存在感を感じられるはずである
いうなれば希暗達3人がアシュロンをはじめて見た時に取ったような反応を今の希暗を久々に見た人達はとっているのだ
つまりそれほどまでに希暗は成長しており今この場に全員で希暗1人に立ち向かったとしても勝つことはできないくらい強い
ぶっちゃけると今の希暗なら1人でこの国を壊滅させることはできる
といっても希暗がそんなことするわけないが
そんな希暗の変化に驚きつつも呼び出した全員が揃ったことでルーカスが早速要件を口にしはじめる
「忙しいところよく集まってくれた異世界人達よ。今回は早急に話し合わねばならぬことがある故集まってもらったというわけだ」
と前置きをしたあと、話を続けていく
「1部の者達は知っているかもしれんがつい先日この王都の近くにて魔獣共との大きな戦闘があった。その時の被害は大きくこのままでは他の国から侵略を受けてしまうととてもじゃないが抵抗することは出来ない」
「だがここで希望が無いわけではない。先程言った魔獣との戦闘において我が国の兵士達を守り魔獣をあっという間に滅ぼしてくれた謎の強者がおる。話を聞く限りじゃとラハットが率いておった者達全員がその者と遭遇したそうじゃの。だがそ奴の行動を考えてみると我らの軍の邪魔をしているにも関わらず、我らを守るために戦っている。なので敵か味方かの判断を下すことすら出来ない。よってお主達に頼みたいことじゃ。その謎の人物と接触しあわよくば説得、もしそれが無理ならば力づくでも捕らえてもらいたい。そ奴の従えていた魔獣や仲間達が我が国に力を貸してくれるとなると我が国は他国より力を持てる。さすればこの戦争も終わりを迎えることが出来ると言うわけだ」
そうルーカスは言うが希暗達含めクラスメイト達で前回の出軍メンバーのほとんど全員や今もこの部屋で武装して待機している騎士団員達は心の中で思った
恐らく無理である……と
まぁそう思うのも無理ないだろう
なんせ希暗・桜前・白月からすれば王の話に出てくる謎の強者、つまり呂阿がどれだけ強いのかを知っているしそもそも協力者だ
それ以外の全員呂阿によって一方的に瞬殺されたクラスメイトや騎士団の面々は何をどうやっても勝てるイメージがしない、さらにいえば呂阿のせいで戦闘に対する恐怖心が生まれてしまった者までいる
だから最近ではダンジョン攻略に行くことなく部屋に篭もりっぱなしのクラスメイト達がいたのだろう
非戦闘員のクラスメイトはともかく呂阿に即座に意識を刈り取られた戦闘員だったクラスメイトは1部が心をおられていたのだ
自分のせいで気づかないところで貴重な戦略を減らしてしまっている呂阿なのである
だが反対にやる気を出しているのも数名いる
それは呂阿にボコボコにされたことに対して苛立ちと復讐のみを考えている近藤と遠山と近山である
特にこの3人は前回のスリイアでの戦闘に関わることが出来なかったがゆえに参戦していた希暗よりも王や民からの評価が落ちたことに苛立っている
特に遠山と近山はそれに加えて攫われたと思っていた桜前と白月が希暗の手によって助けられたと誤解してしまい更に嫉妬したというわけだ
ちなみに希暗達と他のクラスメイトは今日この時まで呂阿と遭遇してからずっと顔を合わせていない
希暗達は出軍していたクラスメイト達が帰還するより前にダンジョン攻略に行ってしまっていたからだ
それ故にお互いに会話を行っていないので噂を鵜呑みにして自分の中で勝手に事実を作り上げた遠山や近山は希暗への殺意だけを膨らませていったのだ
そして今回久々に見た希暗の急激なパワーアップ
ここで自分達も強くなっていいところを見せないといけないと焦っているのかも知らない
だがそんな覚悟虚しくあと少しでこの部屋に悪魔が降臨してしまうのだけれども
希暗は呂阿に関するクラスメイト達への依頼という名のほぼ強制的な命令を適当に聞き流しつつ呂阿をこの場へと呼ぶタイミングを測っていた
といっても事情を詳しく聞かれるかと思って色々と言葉を考えていた希暗からすれば、断片的な情報だけから勝手に自己完結してくれている王や大臣達には拍子抜けといった感じだ
(なんか呂阿を呼ぶ良いタイミング無さそうだな。…。よし、もう呼んじゃおう、そしてさっさと片付けてもらっちゃお)
呂阿の性格に影響されたのか普段は慎重に行動するはずの希暗はほぼ投げやり的な考えにいたり呂阿へと念話を送る
『呂阿?聞こえる呂阿?』
そう希暗が呼びかけると少しして呂阿から返事が返ってくる
『おう、聞こえているぞ。どうかしたか?』
『もうこっち来て作戦実行しても大丈夫だよ多分』
『もう?……なら行くか。とりあえず作戦通り戦う準備は出来てるか?』
『大丈夫だよ呂阿。といってもお手柔に頼むよ』
『………任せろ、全力で相手してやるから。じゃあ今からそこに乗り込むからまた後でな』
『えっ!?ちょっと待って!』
そんな希暗の呼びかけ虚しく呂阿からの念話はそれ以降送られてこない
ということはもう突撃準備に入ったというわけだ
(全力の呂阿と戦うとか………鬱だ(´._.`))
希暗がそう思いしょげているのを不思議に思った桜前が話しかけようとしたその時
体の奥底から恐怖を訴えるような咆哮が聞こえてくるとともに広間の壁が1部くり抜かれ綺麗に穴が開き、そこから2つの人影が広間の中へと入ってきたのであった
……To be continued