最終章・希暗の試練②[改]
《side 希暗達》
ついに未開(となっているけど実際には1人だけこの場所を攻略している)の91層へと足を踏み入れた希暗達4人
階段を下りて4人が目にしたのはここがダンジョンの中であるというのを忘れそうなくらいに明るい遺跡みたいな場所であった
よく映画とかで出てくるような古代遺跡のイメージ通りの風景が目の前に広がっていてそこらかしこに土偶みたいな石像や寺院によくあるような仏像らしきものなんかが多数あるのが分かる
まるで人が住んでいたかのような雰囲気も感じられた
だが4人はそんな情景に目を取られることなく素早く戦闘体勢に入る
何故ならば一見して飾りにしか見えない沢山の土像や石像
それら全てが感知スキルで捉えられる反応を持っているからだ
即ち全てが魔獣と同じであり希暗達の敵
強いて言うならゴーレムの類だろう
何故こんな形をしているのかは分からないが
そんなことは置いておき希暗は土像や石像が自分達を認識して動きはじめると素早く土の大剣を作り出しつつ3人に指示を飛ばす
「今目に見えているのも含めて土像や石像なんかは全部敵だと思う。それに見るからにして罠もかなりありそうだから特に足元を気にしながら進んでいくよ」
そう言うと希暗は駆け出し向かってきている像達を作り出した土の大剣にてどんどん壊していく
何故か土属性を選んだかと言えば単純に破壊力があればこの敵は倒せるとふんだためだ
勿論それ以外にも土属性の精霊魔法が1番物理攻撃力が高いというのもある
逆にこの手の相手だと桜前と白月は苦戦する
桜前はユニークスキルに頼る以外にこの像達を完全に戦闘不能にする方法はないし、白月の得意な水魔法なんかは相性最悪だろう
なので2人は自身の身を守りながらも罠を見つけることを優先とした動きにシフトしたようで希暗のすぐ後ろを付いていく
一方でクロアはというと何の苦もなく殴る蹴るだけ土像石像を粉砕していた
この像達はランクにしてD〜C
クロアの普通の攻撃にすら耐えられるわけないのだ
なので現在クロアは後衛ではなく希暗と並んで前衛で戦っている
そうして主に希暗とクロアによって魔獣を掃討していくもなんせこの場は遺跡のような場所
ただ単純に真っ直ぐにいけば攻略することがほぼ可能である洞窟や平原といったステージとは違いなかなかに迷路気味になっている
更に予想した通り罠が盛り沢山
吹き矢やら落石やら落とし穴やらありとあらゆる罠があちこちにあり4人の行く手を阻む
特に毒ガスの類いは罠が発動してしまうと完全回避は出来ずに1度立ち止まり解毒しなくてはならないことになるので更にタチが悪い
なお呂阿の場合だと常時同行者に結界を貼るだけの魔力があるのでもうどの罠も効果が無かったりする
そして更に進むことおよそ2時間ぐらい
特に強い魔獣と戦うことも無かったが4人はやっとの事でこの階層をクリアすることができ遺跡から脱出出来ていた
だがダンジョンはだいたい5層から10層毎にその層の特色が変わるもの
つまりこのあとも何層かこんな遺跡エリアを攻略しないといけないわけだ
そう考えた3人は気落ちするが1人だけ全く別のことを考えていたらしく立ち上がると
「次もさっきと似たような場所であるならば私に考えがあります。なので先程と同じように後衛ではなく前衛で戦いますね」
と希暗達に告げたのはクロア
さっきの攻略中も後半何かを考え込んでいた様子だったクロアには何か案があるのだろう
そう思った希暗は3人の心の内を代表して
「それなら是非お願いするよ。流石にさっきみたいに迷路を走り回るのは疲れるからね……」
とクロアに伝える
それを聞いてクロアは
「分かりました。では次の層に行きましょう」
と言い先に歩みを進めていった
そんなクロアの後ろをいったいどんなことをするのだろうかと疑問に持ちつつもついて行く3人
この時の3人はクロアの事を甘く見ていた
多分さっきのような場所には規則性なんかがあったりしてそれに気がつきでもしたのかと
はたまたそれ以外にも罠の配置や魔獣の位置なんかからも気づいたことがあったのではないかと
そんなことを考えている3人の予想が覆されるのはこの後僅か10分後のことである
91層から92層への階段を下りて4人の目に入ってきた景色はさっきと同じ遺跡のような場所
普通に考えるともう希暗達のやる気がどんどん削がれていく状況なのだが今回はクロアがいる
クロアのさっきの言葉で希望を胸に抱いている3人は普通に走る速度で土像や石像をものともせず進むクロアに何とかついて行く
この時点でクロアを先頭にしたことを少し後悔しはじめている3人
なんせクロアの進む速度は桜前と白月が常に身体強化を発動させている状態じゃないと追いつけないのだ
このままでは普通に2人の魔力が底を尽きてしまう
魔力回復ポーションは呂阿より大量にもらったけど多用すると戦闘に支障をきたすぐらい体への影響があるのでボス戦まで極力使いたくない
そんな思いで希暗がクロアにペースを落とすよう頼むために声をかけようとすると不意にクロアが立ち止まる
立ち止まった場所は入口から真っ直ぐ進んできて最初にぶつかった壁の前
つまりこっから迷路がはじまるという場所
立ち止まり動かないクロアに希暗は少し息を切らしつつも声をかける
「こんなところで急に止まって何かあったんですか?」
そう希暗がいうとクロアは今日はじめて魔力によって身体能力の強化を行いながら壁に近づくと
「これからさっき言っていた方法を試します。少し離れていてください」
と言うと右手に魔力を貯め始めた
そんなクロアの様子をみて言葉の通り素早く距離をとる3人
本能的に近くにいては危ないと分かったのだろう
そして準備が整ったのかクロアが魔法を発動する
「自作魔法・破拳」
そう唱えクロアは壁を右手で殴りつける
すると壁に穴が開く
だが普通に壊れた感じではなく綺麗な円形の穴があいたのだ
普通に殴っただけでは絶対ならないような壁の状態に3人は驚く
しかもそれだけではない
壁の奥もそれに続きずっと円形の穴があいているのだ
そしてその穴の先をよく見てみるとうっすらとだが下に降りるための階段のようなものが見える
なんか周りのダンジョンの壁に傷が入ってき少し崩れているようにも見えるけど
つまりこの穴を通っていけば直線で突破できるわけだ
そんな人が通れるサイズの綺麗な円形の穴をあけたクロアは一息ついてから呟く
「やはりここの壁くらいの硬さだとこの技のイメージ通りに破壊できましたね。ですが威力がまだ足りないので練習が必要ですか……」
そんなクロアの呟きを聞いた3人が考えたのは奇しくも同じようなこと
(((やっぱりこの人も呂阿(神楽君)の同類だなぁ)))
そう思いながらもクロアのやったことに対しただただ驚くことしか出来なかった
……To be continued