最終章・スリイアでの話し合い①
《side 希暗》
ボスを無事に討伐した希暗達はコックスコルの素材を適度に回収したあとボス部屋の奥の方にある小部屋へと歩みを進める
そこでダンジョン入り口へと帰還するために必要な魔法陣を設置するためだ
ちなみにこの魔方陣を設置するための道具は冒険者ギルドの技術をもってつくられた魔道具でありダンジョンの攻略をする冒険者が未開の層に達すると無料で渡され設置を依頼される
希暗達は晴れて今回公式では未開だとされているダンジョン90層のボスに挑むということで設置を依頼されたのだ
まぁその未開な部分を突破している1人の人を超越した老人と存在がバグであるアホがいるのだけども
そんなことはさておき3人はすぐさま魔法陣の設置をはじめる
といっても魔道具に魔力を込めて目的の場所に刺すだけで終わりだ
速攻で設置を終えた3人はそのまま忘れ物がないかを確認してダンジョンの入口へと戻ることにする
「それじゃあ入口に戻ろうと思うけど2人共準備はいい?」
そう希暗が聞くと桜前が
「私達は大丈夫よ。それより入口まで戻ってからはどうするの?全速力で王都まで帰っても1~2時間は多分かかると思うわ。流石にみんな疲れているだろうし」
と質問してくる
一応ここリバールから王都までは徒歩でもそこまで遠くないし、実際希暗達が全力で走ったならば1時間もあれば辿り着くことができるだろう
ただし今はダンジョン攻略により疲労や魔力の残存量的にも難しいのだが
だがそこは心配しなくていい
「帰りに関しては大丈夫だよ。さっきから定期的に念話を呂阿が送ってきてくれてるから終わったら迎えに来るって言われてたんだ。だから次の念話が来た時に入口に戻ったことを伝えたら多分迎えに来てくれるよ」
そう希暗が言うと2人は納得した様子であった
王都でも帰還の方法がどんなものであれ呂阿ならば3人くらい一瞬で移動させてもおかしくないと思っているからだろう
言っておくがこの世界で他人を何人も遠くの地へ一瞬で移動させることは出来ない
一般的な移動方法で1番早いのは魔人達が主に使っている飛行なのである
なので各国が戦力を国の中心に集めるにしてもかなり苦労していて戦力が集まりきらなかったり避難勧告なんかを出せない場所も存在しているのが現状だ
ならばこのダンジョンのボス部屋の奥の方に設置された魔法陣を各都市と王都や帝都に設置すればいいだろうと思うかもしれないがそれは難しい
冒険者ギルドが作り上げた魔法陣はあくまでダンジョンの中だけで正常に作用するものであり、また発動までにかなり多くの魔力が必要である
それでも普通の冒険者が使用できるのはダンジョン内にある程度魔力が満ちているからだ
それを魔法陣が時間をかけて吸収していっているため発動の際には実際に必要な魔力量よりも少ない魔力で使うことが出来る
ただし連続使用となると後から使う人々の消費魔力は大きなってしまう
なので今回もまだ魔法陣には魔力が貯まっていない状態なので全部希暗達が負担しないといけないわけだ
それを理解しているため3人は魔力回復ポーションを片手に魔法陣へと魔力を注ぎ込む
片手に魔力回復ポーションを持っているのは魔力切れをおこさないためだ
一応はじめて素の状態の魔法陣に魔力を注ぎ込むのだから注意するようにと冒険者ギルドからも言われていたので従うにこしたことはないだろう
そうして3人は無事に各々の残り魔力を半分程使ったところで充填を完了させる
そして
「じゃあ入口に戻るよ」
という希暗の発言と共に3人はダンジョンの入口へと戻っていった
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
希暗達がダンジョンの攻略をしている間なんとなしにはじまったお喋りをしていた3人+1人はほのぼのとした雰囲気でまったりとしていた
話としては主に俺がフロリアと瑠奈によって質問攻めにされていて、内容は今までどんな冒険をしてきたのかというものだ
前回あった時には大まかの流れと邪神達についてのことしか詳しく話さなかったのでちょうどよかったとばかりに2人はどんどん質問している
特に詳しく聞かれたのは邪神の従魔達との戦闘、それにセリア・リーニャ・クロア達との出会いについてだ
特に後者の内容になると2人は表情をコロコロと変えながら真剣に話を聞きていて
(やはりあの3人と呂阿の間には強い絆がありそうですね……)
(うーん…なかなかの強敵)
なんて内心思っていると同時にこの場にセリア達がいないことを少しばかり喜んでいるのであった
そんなふうに話す3人の様子をリアはフロリアの少し後から孫をみる祖父母のような目で見守っている
まぁそんな年齢ではないはずなのだが
そんな中俺は2人の質問に答えたり自分からも少し話を聞いたりしつつも希暗と念話のやり取りを適度に行っている
会話しながら念話ができるのもユニークスキルのおかけだ
ちなみに念話の中身はこんなもん
①
『おーい希暗。そろそろボス部屋いけそうか?』
『うん、もうボス部屋の前だよ。これから準備を整えてから挑むよ』
『おー、ならもう少し待ってるわ。また連絡するから頑張ってな』
②………①のわずか2分後
『おーい希暗、ボス戦終わった?』
『っ!?ちょとまって、まだボス部屋にすら入ってないよ。呂阿とは違うんだからそんなに早く倒せないから!』
『りょーうかーい。ならまたね〜』
③………②のおよそ5分後
『終わった?』
『無理!そんなに早くボスには勝てないから!今様子見してるところ』
『一気にいっちゃえよ。希暗ならなんとかなるって』
『何ともならないからね?!……危なっ!とりあえずボスと戦ってるからまた後でね』
『ほいほ〜い、ほんじゃまた』
④………③のおよそ5分後
『………まだ?』
『………まだ』
『………りょ』
⑤………以後希暗がボスを倒すまで④のやり取りの繰り返しを行う
といった感じだ
これからも分かるように自身がやることが無い時に呂阿はかなりせっかちなのである
正直言って希暗はたまったもんじゃないだろう
これから真剣にボス戦をやろうって時やボス戦の最中に呑気な友達からこんなにもしつこく念話がとどくんじゃあ集中しきれない
いくら希暗にも呂阿と同じような能力があるからといって使いこなせるわけでは無い
つまり呂阿のせいで危険性が増したと言っても過言ではないのだ
それでも無事に討伐するあたり本当に希暗は強くなったのだろう
そしてその念話にもやっと終わりが訪れる
『………もう終わった?』
『うん、終わったよ。今ダンジョンの入口に戻ってきてこれから冒険者ギルドに向かうところかな。そこで90層攻略終了の手続きをしたらやっと終わりかな』
『OK!ならすぐさま迎えにいく。その場を動かず待ってろ』
そう希暗に念話を送ると俺は目の前の2人へと視線を向け
「あいつらが終わったらしいから迎えに行ってくる。多分そんな時間かからず戻ってくるから少し待ってて」
そう言うと2人の反応をまたずに俺は希暗達が待つリバールのダンジョン前へと転移を使用した
勿論、不可視可も付けてね
……To be continued




