第5章・ああ儚し
荷物を取りにさっきまでいた宿屋の部屋に転移を完了させた俺はまず部屋の様子を確認する
するとやはり兵士達はこの部屋にノーラ達がいた事を把握したのか念入りに操作が行われているらしく数人が部屋の中にいた
今回は部屋の隅に転移したため誰もそばにいなかったが、もし誰かが俺の転移した場所に丁度いたならすぐさま異変に気づかれていただろう
前に俺が転移した場所に物や生物がいたらどうなるのかと思い実験したところちょっと悲惨なことになったので転移の際は結構気を使っている
そして1番最初に宿屋に入ってきて受付で話をしていた捜索隊のリーダーらしき男とその副リーダー的なのが椅子に座り他に部屋の中にいる奴らに指示を飛ばしながらこんな会話をしていた
「本当に皇女様にも困ったものですねぇ。こんな大事な時期に我々の手を煩わせるなんて」
「そうであるな。我々は一刻も早く皇女を皇帝陛下の元に連れていきさっさとスリイアへと出軍せねばならぬ」
「そうです、その通りです。私達も先に出軍している者達と共に一刻も早くスリイアを占領する必要がありますな」
「今までもずっと動かずいつかいつかと待ちわびていた日がもうすぐだ。やっとスリイアを我が帝国の手にすることが出来るのであるな。先日皇帝陛下よりその命を受けた時は感動したものである」
「いきなり皇帝陛下に呼ばれた時は何事かとおもいますたがまさか他の国を全て征服する準備が整ったと聞かされるとは本当に驚きました。他の国を全て滅ぼせる計画をしていたとは思いもしませんでしたからね」
「全くその通りだ!わしもそのような事を皇帝陛下がお考えになっているとは思ってもいなかった。話に聞くところによると大臣を中心に比較的皇城勤の浅い者共が率先して計画を練っているらしいのであるな」
「私もそのように聞いておりますね。急に大臣が変わり私も周りも含め帝国の上層部に新参者が増えた時は何事かと思いましたがこのような事を見越して変えたとなると流石皇帝陛下ですね」
「お主の言う通りだな。我が帝国には今の皇帝陛下がついてる限り不滅だな。その為には我々も早く皇女様を見つけ出し任務を完遂させんとな」
といった内容の会話が偶然に耳に入った
俺は急いでいたがこの2人の会話をその後も少しついつい聞き入ってしまう
一応この前のハゲから手に入れた情報とノーラから聞いたことでほとんど帝国の状況は把握出来てるが情報は多ければ多いほど楽になるから俺からしたら出来るだけ楽したいので情報は多いほど嬉しい
だから自分の目的を忘れて聞き入ったところより詳しく把握できた
この2人が言っているとおりに帝国が動き出したという事は帝国を乗っ取っている邪神復活を企む組織の奴らの準備が整ったという事だ
つまり邪神とその従魔を復活させることが出来るようになり、それを利用して各国で従魔達を復活させて戦わせ弱ったところを攻め入るという魂胆だろう
だが残念なことにその目論見は全て失敗しているといってもいいと思う
それはほとんど俺達のせいなんだけど(主に俺)
復活して被害を与えるはずだった邪神の従魔達はほとんど活躍のないまま俺によって消滅させられているし引き連れてきた魔獣達も魔人達の時は急ではあったがすぐ体勢を整えられたし、人間達の時も一応向かってきているのを察知できていたらしく王都に奇襲を喰らうことは無かったのでそこまで被害も大きくは無かったと思う
まぁ邪神の従魔達は再び復活してしまうらしいのだが
というより組織の奴らはなんか邪神と従魔達を操れるって考えてる見たいだけど今まで成功してない時点で計画を練り直さないものなのだろうか
既に魔獣を復活させた奴らは最初に消されてるしな
なんか邪神復活させたのに真っ先に全員消されてそうな気がする
他の国を消すはずの帝国が1番先に消える未来しかみえない
そして何故各国で計画が上手くいっていないにも関わらずこのタイミングでスリイアへの出軍をしているのかという俺の疑問の解決できた
その理由はどうやら世界を支配するために残された手段が邪神そのものを復活させるしかなく、邪神本体の復活にはまだ少し贄が足りないらしい
何故なら従魔達によって各国にださせるはずの被害が全くでず予想だとそれだけで充分足りてたはずのに俺達(主に俺)のせいで頓挫したとのこと
なのでスリイアへと出軍して人間同士争わせることで邪神復活への贄をかき集めようといった考えだそうだ
なのでスリイアへの出軍を喜んでいる帝国兵をやる気にさせて他の国と争わせ、他の国の兵士諸共贄にしてしまおうという考えというわけ
多分ノーラがスリイアに行き、もし守りを固められるとあまり戦闘が激しくなくなってしまうので贄が足りなくなるからそれを阻止するために必死なのだろう
このことを知ってしまったからには早めに帝都へと行き組織を壊滅させねばならない
邪神の強さが分からない以上復活させないに越したことはない
けっ、決して戦ってみたいとか思ってないよ♪~(´ε`;)
俺はそう考え目的であったノーラとローゼの荷物を探しはじめる
すると荷物は部屋の外に1箇所に集められているのが確認できたがその周りには捜索隊の奴らがそれを管理している
なので騒ぎになってしまうが無理やり回収する以外には方法がなさそうなので俺は荷物に近づくと周りにいた奴らにのみ気絶させる
その後すぐさま荷物を異空間へと収納すると素早く転移によってその場を立ち去った
部屋の中を隈無く調べられた訳では無いので回収した荷物以外に大事な物があった場合は申し訳ないが再び回収しに行くことはきついだろう
元に転移する直前にはやくも異変に気がついた捜索隊が気絶している仲間と荷物が無くなっているのを見つけて騒ぎ始めていたからだ
そんな騒ぎを尻目に俺は転移を無事成功させノーラやリーニャが待つダンジョンの小部屋へと帰還した
……To be continued →




