表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隠し部屋のある異世界ダンジョン  作者: なみがら
迷い込んだ異世界と始まる新生活
5/11

初めての襲来と発見

視点は戻ります。今回は少し短いです。

10/2[修正]:文章の体裁を少し弄りました。


「ようやく扉を開けたか、意外と時間かかったな」


 道真は入ってきた3人の冒険者の動向を伺っていた。

 思惑通り、隠し扉を見つけるところまでは非常に良かった。

 しかし正直な感想、扉を見つけるまでは比較的スムーズであってもが開けるまでに時間がかかるとは思っていなかった。

 もし、「迷宮クリエイター」の方でこの場面に当たったら、真っ先に扉を開けるだろうなと思う。


「そうそう思い通りにはいかないものだぞ」


 テーブルの向こうで俺のつぶやきを聞いていたフージェが答える。

 ちなみにフージェが起きたのはちょうど冒険者がダンジョンに入ってきた時だ。


「私も経験があるが、上手く行くと思っても意外な理由で失敗に終わることも十分あり得るぞ」

「流石にここまで来れば、お宝を持ち帰るだけのはずだし大丈夫だろう。あの宝石みたいなのに価値があるといいんだけどな」

「調子に乗っておるな道真。さて、ここからどうなるか楽しみだ」


 いや、ここからどんでん返しが起こるはずはないだろう。

 寧ろ、どうひっくり返るのかの方が気になる。

 俺が作ったのはいたってシンプルな宝箱を配置しただけの小部屋だ。

 箱に触れたら爆発するわけでもないし、トラップが発動するわけでもないごく普通の宝箱だ。

 しかも、箱の中にはしっかり物が入っている。

 苦労して見つけた宝箱が空だったなんて悲しい思いはさせたくないんだ、まだ。

 この部屋をレベルでいえば、ほんとに初期の初期の出来栄え。

 言うなれば、主人公の家の物置程度の脅威度でしかない。

 もちろん、普遍的なゲームの話だ。


 フージェに対し苦笑しつつ、視線を扉を開けた人物に戻す。

 どうやら、宝箱を警戒しているようだ。


「なんも無いから開けちゃってくれよ」


 俺は子供にお菓子をあげるような気分でそう呟いた。

 もちろんこの声は冒険者に聞こえていないのは判っている。

 ところで、フージェが何処か笑い出す寸前の顔をしているのがすごく気になる。


「ん、待って。なんで剣振り上げてんの」


 俺は冒険者の異変に気付く。

 誰がどう見ても、それは攻撃態勢でしかない。

 もちろん、その対象が箱以外に存在していないのも明確だ。


「いやいやいや、箱を壊す気かよ。うおっ、氷が剣に纏ってるぞ!流石ファンタジー、いやそうじゃない。というか止めろ!」

「必至だな道真。だが、もはや私たちに宝箱を生かす術はないぞ」


 冒険者の剣はその等身以上の氷に包まれ、人の身丈ほどの氷塊と化した。

 あの武器で木製の宝箱に攻撃したら、確実に中身ごと破壊される。

 しかもその中身が、宝石のようなものであれば希望は無い。


「なんだ?もしかしなくても、異世界の人間は箱の開け方も解らねえのか?物をしまうっていう概念が無いのか?」

「大丈夫だ。その辺の文明はしっかりあるぞ。…おおー、派手にやるもんだ。箱が一瞬で木片になったぞ。こりゃ中身もダメだろうな」

「マジでやりやがった。冒険者ってのは野蛮人だったのか」

「そうだなー。ああやって氷魔法で鈍器を作るからなー。野蛮だぞー」


 声を上げて笑うフージェを横目に、俺の中で冒険者に対するイメージダウンを行った。

 用意したお宝のことは残念だが、異世界人というものを知る上である程度参考にはなった。

 以後、お宝を箱に入れるのはやめよう。


「ところで、フージェはこうなる事が分かってたか?」

「うむ、知っていたぞ。冒険者が宝箱を壊すようになった経緯を知っておるぞ」


 やっぱりフージェはこの結果になる事を知っていた。

 フージェを催促してその経緯とやらを聞かせてもらう。


「ざっくり話すと、少し昔に宝箱に化ける魔物が竜人たちの中で流行ったことがあってな。それが余りにも頑張るものだから、冒険者たちは宝箱を開けずに壊すようになったのだ」

「ようは、お前たちのせい。ってことだな」

「いや、箱を開けることを放棄したのは冒険者だ。先ほどように、物を渡そうとしても直ぐに壊しおるしな」


 どこか話が噛み合わないが、あーだこーだ言っても俺が竜人側であると言われれば、ぐうの音も出なくなるので止めておく。

 しかし、こういった歴史的背景があると異世界であることを強く感じられて気分がいい。

 データ上の存在であるダンジョンやその取り巻く環境では、まずありえない要素だ。

 ダンジョンというものの存在自体が見る人によって見解が異なるのだから興味深い。

 今回のように上手くいかない場合もあるが、それに理由があるだけで面白くなる。


「まあ、今回は残念だったが。少しだけ冒険者ってものが分かった気がする」

「それは良い傾向だな。これからも精進するのだぞ」


 ある意味では冒険者にとっての宝箱というのが、どういうものなのかを知れたのは良かった。


 だが、更にもう一撃を与え、残骸を漁る冒険者を見ると何処となく殺意が湧く。




****




「あれからしばらく経ったが、こいつら何してんだ?」


 冒険者らがダンジョンに入ってから、2時間以上は確実に経過していた。

 箱を壊した彼も広間の方へ移動して時折湧くゴブリンを狩っているようで、一向に帰る気配がない。


「見つかって間もないダンジョンは魔物が溢れる心配があると人間は思っているようでな。こうして制圧隊が来るまで間引き続けているのだぞ」


 俺の疑問にフージェが答える。

 どうやら、制圧隊という連中を待っているらしい。

 ふと、ここでダンジョン運営に疑問が湧いた。


「そう言えば、ダンジョンが制圧されたらゲームオーバーとかじゃないのか?」

「んー?私たち竜人の作るダンジョンは"ダンジョンコア"などは無いからな。制圧されても運営は継続できるぞ」


 少しずれた答えを貰ったが、ダンジョン運営にとって制圧隊は障害にならないようだ。

 当然気になるダンジョンコアについてフージェに質問する。


「ダンジョンコアか。あれは魔族がダンジョンを作るのに必要不可欠なものだ。竜人のダンジョンとの相違点は手を加えることが出来ないことだな」


 流石は異世界。

 魔族という種族が居るらしく、またダンジョンを作ることが出来る辺りよくあるゲームの設定と似たところがある様だ。


「ちなみにだが、魔族は人間と敵対しておるぞ。竜人や竜はどこの種族とも基本的には中立な立場だ」


 やはりというか、魔族と人間は敵対関係でいるらしい。

 一方で竜人が中立的な立場であったというのは俺にとっては朗報だった。

 積極的に人間と敵対する必要が無いのは有難い。


「なるほどな。んで一つ気になるんだが制圧隊が来たらどうなるんだ?」

「誰が来るかにもよるが、ダンジョン中の魔物が定期的に一掃される魔法が使われる事が多いぞ」

「えげつない魔法だなそりゃ」

「その分準備には時間を掛けているがな。そんな魔法でもダンジョン運営をしている者からすれば有益なものだぞ」

「なんでだ?」

「魔物が殲滅されてエネルギーが旨いからだ」


 制圧隊は特にダンジョン運営の邪魔にはならないようだ。

 更に聞いてみると、制圧隊が来ることでそのダンジョンが冒険者の稼ぎ場として機能し始めるらしい。

 もちろんだが制圧隊による殲滅は一時的なものである。

 その間にダンジョン付近に冒険者が集まれる環境を作って行くとのこと。


 言い換えれば、制圧隊の仕事が終わった時がダンジョン運営の本格始動になるという事だ。


「いよいよ本格的に始まるのか。幸先悪いが上手くいくかねぇ」

「余り心配するものではないぞ。始まっても暫くはダンジョンの見極め期間のようなものだからな。そこで頑張れば良いぞ」


 なんとも簡単に言ってくれるが、それが結構難しい。

 現状だけでもダンジョンが物を与えるというのが上手くいっていないことが分かった。

 隠し部屋とそこから与えられる報酬を餌に冒険者を釣りたい身としては大きな問題点だ。

 運営を続ければ新たな問題点が見つかるだろうから、その都度適応していく必要もある。

 中々、理想のダンジョン運営までの道のりは長いようだ。


「ああー、そう言えば言っておらんかったが。ダンジョン運営は定期的に竜人や竜の住む世界にエネルギーを送る事を目的にしておるぞ。つまり、今後定期的にエネルギーを送ることになるぞ」

「おいおい、それってどれぐらいだ?」

「今のペースだと、目的の5%ぐらいだぞ」

「全然足りねえじゃねえか。大丈夫かこれ」

「そこは道真の頑張り次第だぞ。まあ、悪化しても道真のゴールが遠ざかるだけだ。大したことではないぞ」

「俺にとっちゃ大ごとだよー。思いのほか厳しいじゃねえか」


 さらに制約が増えてしまった。

 かなり不安になってきたが、こればかりは実際に始めないと如何にもできない。


「まあ、やるしかないけど。とりあえず情報が欲しい」

「情報とな。それだったら、近い内に異世界の方に出歩けるようにしておくぞ」

「そりゃ楽しみだ」


 準備はダンジョンが制圧されている最中に済ますと言っていたが、果たしてどれほど時間が掛かるのか。

 それと、フージェがこんなことを聞いてきた。


「外を歩くときはステルスは要るか?」


 普通に出歩くもんだと思っていて盲点だったが、そういうのもあるらしい。

 確かに、隠れて行動できるならできる事の幅も広がるだろう。




 この後もダンジョンに手を加えようかと思ったが、どうやら冒険者の視界内のものは手を加えることが出来ないらしい。

 そこに触れようとしても通り抜けてしまうし、物を置こうとしても拒否されてしまった。

 広間に居る冒険者らは互いに死角をカバーするように見張っているようで、広範囲に操作不可能エリアがある。

 一応天井が死角になっているようだったが、フージェの話によると冒険者の近くでダンジョンを変動させると余計な警戒心を抱かせてしまうことがあるとのこと。

 結果的に、冒険者にとっての危険度が余計に上がってしまうことに繋がるらしい。


 冒険者が居なくなるまでは余計な手出しはしない方が良さそうだ。



進展の乏しい回で申し訳ないです。お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ