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タイタニックは二度沈む  作者: 佑黒ドリル
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第二章 群雄割拠のウインドミル杯

第二章 群雄割拠のウインドミル杯











清水スバル 二月二十一日 午後十三時五十四分 Zレースの日 当日


「それでは作戦の重要なところを説明する。二人とも散々待たせて悪かったな。できる限り作戦については秘密にしたかったんだ」

 そういってレースの一時間前に俺とメカニック兼アタッカーの美鈴を集めて説明を開始したのは、俺たちのチームの監督兼ナビゲーターの楓さんである。

「まずスバルと美鈴には以前に少し説明したとおり、『清水スバル』の名前は重要な意味をもつ。これは先に言っておくが、一歩間違えば詐欺まがいの行為だ。だが、法律にも違反しないし、ましてやZレースではなんの問題もない」

 楓さんはここまで言い終わると、息を大きく吸って作戦のキモを話し始めた。

「スバルと同姓同名の名前をもっている男がいる。そして私たちのチーム以外の人間にはその男が私たちの高速宇宙船に乗っていると誤解させる。それによって私たちへの妨害行為を止めさせる効力をもたせる。スバルがいることを他のチームに認識させるのが私の仕事だ」

 俺の名前を使って他のチームを脅して、妨害行為をさせないということか……。

「その同姓同名の男って誰なんですか? 俺と同姓同名の有名人なんて聞いたことないですよ?」

「清水スバル自身は有名人じゃないからそれも当然だろう。でも『清水祐介』って名前には聞き覚えはあるだろう?」

 清水祐介……。それはZレースを語るうえで名前が出ないことはないぐらい有名な人である。優勝することの難しいZレースにおいて何度も優勝しており、一年間の賞金額で競い合うZレースの賞金ランキングでは何度も一位になっている人なのである。Zレース界においては清水祐介をZレースの神様とすら呼ぶ人もいる。

 しかし、清水祐介と清水スバルという名前になんの関係があるのだろうか? 俺の疑問に対して楓さんが答えてくれた。

「実は……清水祐介の息子の名前が清水スバルなんだ!」

 楓さんは自身満々に言い放った。しかし、俺は今まで同姓同名だというのに、一度もそんなことを知らなかった。果たして作戦として通用するのだろうか?

「楓さんの言いたいことはわかりました。確かにZレースの神様の息子になら誰も妨害しようなんて考えないかもしれません。でも、清水祐介の息子が清水スバルという名前だなんて、みんな知らないんじゃないですか?」

「それを他のチームに知らせるのが私の仕事だ。前々から手はたくさんうっている。だから心配しなくてもいいぞ」

 楓さんは大丈夫だと言い切った。今は楓さんを信じるしかないのだから、俺は信じることにする。しかし、清水祐介の息子が俺と同姓同名だなんてのは知らなかった。偶然とは恐ろしいものだと常々思う。

「楓さんの活躍のあとはわたしの出番ね。アタッカーであるわたしが一発でかい攻撃ぶちかまして、ほかのチームが抱きだしたタイタニックチームへは妨害してはいけないという思いを増幅させる」

 美人には到底似合うことのない鼻息を出しながら、むちゃくちゃ言っているのは美鈴である。

 今日で出会うのは三回目だが、美鈴が俺に対して生意気なこともあり、なぜかそんなに出会ったばかりという気もしない。

 楓さんが言うには、美鈴は俺よりも年下のくせに機械関係に関してはトップクラスなのだと。美鈴が一人で今から乗ることになる高速宇宙船を作ったことを考えると、それもあながち本当のことなのかもしれない。

 先日、美鈴に初めて会ったときは身長の低さとそれに相反する黒髪の長さに人形かと思ってしまったのはここだけの秘密である。

「俺はただ高速宇宙船に乗って定時連絡と必要最低限の操作をすればいいんですよね? なんか俺だけ仕事内容が簡単ですけどいいんですか?」

 楓さんに少し申し訳なさそうに見えるように俺は尋ねた。

「いいのさ。スバルはその分だけ危険と隣り合わせだからな。それぐらいが丁度いい。心配はするな。もし機体が撃墜されて宇宙空間に放り出されたとしても、美鈴の親切で緊急脱出装置を改造しといたからな。一定時間と一定距離だけだが機体よりも速く移動することもできるぞ。だから生存確率もぐっとアップするはずだ」

 楓さんは美鈴の肩を軽く叩きながら美鈴を褒めた。

「わたしは別に親切じゃなくて、予算が余ったからそうしただけよ。そっちの方が見た目もかっこよくなるしね。それよりも楓さんの言うとおりに機体の装甲を根こそぎ落として、加速重視の機体設計にして、外見は金色で目立ちまくりな、おかしな高速宇宙船になったんですけど、それでよかったんですよね?」

「あぁ。今回の作戦はなによりも時間が勝負だ。万が一でスバルが偽者だってばれたときでも、他のチームに妨害ができないほどの差をつけて逃げ切れるための作戦だからな」

 先行逃げ切りとはよくいったものである。ただ加速重視の分だけ装甲が薄いため、妨害一つ一つがレース敗退のきっかけになりかねないんだけどな。

「機体の色を金色にした理由はなぜですか?」

 俺は楓さんに問いかけた。色を目立つようにしたのはなにか理由があるに違いない。

「よくぞ聞いてくれた。それはもちろん目立つためだ。私がスバルの名前の存在を広めるときになにか高速宇宙船を指し示す目印がいるだろう? そのための金色だ」

 あえて目立つための金色か……。それってやばくないか?

 もし楓さんの努力がむくわれずに俺の機体だけが先頭を駆け抜けたとしよう。

 その場合どう考えても俺の機体は他のチームのアタッカーたちにとって格好の的だ。どうぞ狙ってくださいといっているようなものじゃないだろうか?

「どうしたスバル? 顔が青ざめていないか? 不安があるならここで言っとけよ。あとからいろいろ言われても迷惑だし、対処できないぞ?」

 ここで正直なことを話したとしよう。

 果たして楓さんは俺を見逃してくれるだろうか?

 美鈴は俺を軽蔑しないだろうか?

 俺が本音を話すということは、二人を信用していないといっているようなものだ。ここまできて今更レースの出場取り消しなんて許されるわけがないのだ。腹をくくるしかない。

「青ざめてるように見えますか? 実は昨日の夜は緊張して眠れなかったんですよ。ただそれだけです。なにも不都合なことなんてありません。ただ気になることがあって……今更だけど俺たちのチームの高速宇宙船の名前はなんていうんですか? それとチーム名も俺は知らないんですけど……」

 楓さんに尋ねたつもりだったが、俺の質問に対して美鈴が喋りだした。

「機体名とチーム名はZレースのルール上、同じ名前にしないといけないから両方とも同じ名前よ。わたしがこの機体の製作者だし名前を考えたわ。心して聞きなさい。名前はこの神々しいほどの金色の色から豪華なイメージを表に出そうと思って、わたしたちの祖先が地球で暮らしていたときの豪華客船の名前を拝借したわ。その名前はタイタニックよ。聞いたことぐらいはあるでしょう?」

 自信満々の美鈴に対して楓さんは腹を押さえて笑うのを我慢しているように見える。楓さんは豪華客船タイタニック号の最後をきっと知っているのだろう。そして美鈴は知らないのだろう……。

 美鈴……タイタニックは沈没船の名前だ……。

「スバル。まぁ美鈴には悪気はないんだ。楽しく行こう。最初さえ上手くいけば私たちの優勝は間違いないんだ。妨害が予想される地点を通過するまでの一時間それが私たちの全てなんだからな」

 楓さんに励まされたような気がする……。それにしても楓さんの言っていることはごもっともなことである。

 敵のチームからの妨害が多くあると予想される最初の一時間。それさえどうにかなれば、残りの一時間は俺の独走になる作戦なのだ。

 しかし、俺だって気を抜くつもりはない。レースをしている約二時間は精一杯頑張らせてもらう。タイタニックの運転はフルオートなんだけどね……。

「んーもう時間だわ。そろそろわたしはいくわよ。そうじゃないとレースの妨害行為ができなくなるから。最後にスバル。きっとあなたは、会ってからそんなに時間のない、わたしたちのことを信用しろなんていっても無理だと思う。でもそれをするのがあなたの仕事だから。つまり、伝えたいのは頑張れってことよ。わたしいくからね。ゴールで会いましょう。じゃあね」

 美鈴は哀愁を漂わせながら出て行った。まるで俺が死ぬみたいじゃないか……。もしかしたら本当はタイタニックのこと知ってるんじゃないだろうか……?

 不安になりながらも美鈴を見送った。振り返ると楓さんがZレースのパンフレットを出して俺に差し出してきた。

「それじゃあ次は私たちの出場するZレースのルールをおさらいしておくとするか。レース敗退の条件をスバル言ってみてくれ」

「パイロットの損傷により、レース続行が不可能と判断された場合。それと妨害行為によって人を死なせた場合。最後に八位がゴールした瞬間に残りのチームは強制的に敗退となる。以上です」

 始めに楓さんに出会ってから今までの二週間はひたすらルールブックを読んできた。その成果がこれである。もうルールは俺の頭の中にあるのだ。

「そうだ。美鈴の妨害行為のせいで人が死ぬ可能性と順位については気にしなくていい。そうなるとあとはお前が生きるか死ぬかということぐらいだな。ハッハッハ」

 さらっと恐ろしいこといいやがった。笑うなよ……。俺は楓さんの言葉を受け流しながらルールの説明を続ける。

「あとは他のルールだけど、今回はスタート地点が二つあって、俺たちの使うルートはいたって平凡なルート。もう片方のルートは距離自体は短いが、宇宙ゴミが漂流していて危険すぎるということでいいですよね?」

「あぁ。その通りだ。ここで吉報を言っておこう。もう片方のルートなんだが、偶然にも宇宙嵐が発生している。宇宙ゴミが宇宙嵐で暴れまわってるからプロのパイロットでもない限り絶対に走行不可能ということになっているらしい。つまり私たちは自分のルートの敵チームだけ気をつければいい」

 そうなると俺たちと同じルートに参戦しているチームが気になる。こちらのルートを選択したチームは俺たちを合わせて八チーム。向こうのルートが十二チームだ。

「俺たちのルートのほうに強敵はいるんですか? アマプロとかレース学校所属のやつとか」

「いることにはいる。あえて名前をあげるなら、優勝候補筆頭でアマプロのチーム『ハイエナ』。ここは妨害行為で勝つというよりは、純粋に速さが核のチームだ。おそらく最後までいけばこことの一騎打ちということになるだろう。あとは暴走族や珍走団が合体したチーム『激熱』。ここは妨害行為をする人間が多い。だからできれば私たちのチーム以外の妨害をしまくって、ほかのチームをつぶしてくれれば……と考えている。それぐらいだな。あとはもうレースに出場することに意味を見出している記念参加のチームぐらいしかいないな」

 ハイエナチームと激熱チームか……。どちらのチームもきっと一筋縄ではいかないだろう。無事にZレースを優勝できればいいんだが……

 俺がいろいろと敵チームについて真面目に考えていると、楓さんはどうでもよさそうに、笑っていた。

「おいおい。今から敵チームの対策なんて考えたってどうしようもできないだろ? それに考えるのは私の仕事だ。スバルはパイロットとしてタイタニックを一位でゴールする。それでいいんだよ」

「そう言われればそうなんですけど……」

「こういうときは考えたってどうにもならないんだ。逆にどうでもいいことを考えろよ。そうすれば気も紛れる」

「どうでもいいことって……例えば?」

「そうだな……私たちのチームのスポンサーが言っていたんだが……チームのメンバー全員の苗字にそれぞれ異なる曜日が入ってるって、どうでもいいことを笑ってたよ」

曜日? 俺の名前が清水だから……水か? 楓さんは苗字が法月だから月。美鈴が蔵金だから金か。

「それって本当にどうでもいいことじゃないですか」

 俺は思わず楓さんに突っ込んだ。楓さんもクスクスと笑っていた。

 そのとき屋内のスピーカーから音が聞こえた。


ピンポンパンポンッ


「出場者はコックピットに乗車して開始地点にて待機してください」

 Zレースの発進用意のアナウンスだった。

 時間を確認すると時間はレース開始三十分前だ。

「発進のやりかたは前に教えたとおりだ。わかるよな? なにか言いたいことはあるか?」

 楓さんが優しく問いかけてきた。俺は今なら楓さんは断りづらいだろうと予測して、願望を伝えてみる。

「そうですね。優勝したら胸もんでもいいですか?」

 脈絡のない突然の理不尽な要求に対して、楓さんはほんの一瞬だけ驚いたようだったが……

「ハッハッハ。お前はやっぱり面白いな。風呂でも入ってきれいに洗って待っといてやるよ。だから優勝して来い」

 軽く笑いながら冗談まじりに了承してくれた。

 その後、俺と楓さんはエレベータのドアによって引き裂かれて、それぞれの目的地へと向かった。

 タイタニックのコックピットに向かう。あとは言われたとおりのことをするだけなんだ。そして優勝するだけだ。

 コックピットに乗ってコックピット内を観察してみる。タイタニックの金色で輝いている外観と比べると、コックピット内は質素で必要最低限のものしかないという印象をうけた。

 時間が迫ってくるのでエンジンをつける。エンジンをつけるというよりは、むしろ電源をつけるという意味合いでキーを回した。

 前にも一度、タイタニックには美鈴と出会った際に乗せてもらったが、そのときは未完成だったためキーを回すことなく降りた。そのため、少しなんともいえない淡い期待を抱いていたのだが、なんてことはなかった。説明されていた通りのことが起こっただけで、それは車に乗るのと同じぐらい自然なことのように感じた。


 ピピピ……


「聞こえる?」

 電源をいれたことによって、ナビゲーター室に移動した楓さんと回線がつながったようである。

「聞こえてます。今はタイタニックをスタート地点の発射口に移動させるコマンドを打ち込んでます。とくに問題はないです」

「ん。そうか、さっきは思わせぶりに別れたのに、こんなに早くモニターごしとはいえ再会できると調子が狂うな。スバルはドキドキしてるか?」

 話しかけられて、コマンド入力ををミスしそうになる……。

「ドキドキしないこともないですけど、このマニュアルどおりに動かすので精一杯というのが本音かな? できれば少し静かにしてくれると助かります」

「そんな冷たいこというなよ。気持ちはわかんなくもないけど……じゃあ、あとはマニュアルどおりにしてくれ。レース序盤のスタートトラブルで撃沈しないことだけを祈っているよ。私も私の仕事をしてくるとしよう」

 楓さんは一方的に喋りまくったあとは、回線を強制的に切った。結局は回線がしっかりと繋がるか確認をしたかったということか。

 あとは美鈴との回線を今のうちに試しに繋いでおきたいが、美鈴もそれどころじゃなさそうだから、連絡待ちということで……。

先程までは楓さんや美鈴がいたこともあり、落ち着いていたがスタート前になり緊張してきた。少しでもこの緊張をやわらげようとコックピットの左側にあるサブモニターのチャンネルをZレースの実況中継のチャンネルに合わせた。そうするとタイミングよく画面に男女が映し出され番組が始まったのである。



「さーて、まもなく第二十三回G三ウインドミル杯Zレースがスタートします。実況は毎朝おなじみ七十七チャンネルの『おはようテレビ』お天気アナウンサーの『みる』が勤めさせていただきます。そして解説は辛口解説と思いきや、飴もところどころでだしてくる曲者解説者の『鏡見』さんを御向いしております」

「あーこんちはー。みなさん元気ですかー? 元気ですよねー? 前年度のウインドミル杯Zレースに続きまして今年も解説を勤める鏡見ですー。よろしくお願いしますー」

 実況が女子アナのみるちゃんで、解説者が元プロパイロットの鏡見か。そういえば解説の鏡見はこのウインドミル杯Zレースにおいて優勝経験があったはずだし、なにかアドバイスとか言ってくれそうな気もしなくはないな。

「さぁ、それではウインドミル杯Zレースのルールをスタート前にもう一度簡単にご説明いたします。鏡見さんお願いします」

「はいはい、任せてくださいー。まずはZレースのゴールまでの過程についてお伝えいたしますー。まずスタート地点は二つー。長くて簡単ルートは学生都市が有名なハヤブサコロニーからのスタートー。もう一つは短くて難しいルートで宇宙工学で大きく名をとどろかせるトンビコロニーからのスタートになってますー。そして互いに中間地点の形がダンベル型コロニーであるキャニオンコロニーの上を通過してゴールのウインドコロニーに至るわけですー。ハヤブサとトンビが谷をこえて風に至るー。それがこのウインドミル杯の名前の由来になっているというわけですー」

「説明ありがとうございます。ちなみに鏡見さんならどっちのルートを選びます? 私はやっぱり短くて難しいルートですね。それでこそのZレースですから」

「みるさんはそっちのコース派ですかー。よかったですねー。今回のZレースに参加してなくてー。なんでもそっちのコースは宇宙ゴミが宇宙嵐にもまれてほとんど走行が無理な状態ですよー。Zレースの開催日にわざわざ宇宙嵐がやってくるとかどんだけ運悪いんだよって話ですよねー。ってことで僕なら長くて簡単コースからスタートしますー」ドヤッ

「うわー。またまたそんな結果論で言うとかセコいですよ。でも宇宙嵐がこようとZレース出場時に申し込んだところからスタートっていうのがルールですから、残念ながら十二チームはこの嵐の中を駆け抜けなくてはいけないってことですね。これは大変ですね。それではZレースはまもなくスタートです」



 結局わかったのはウインドミル杯Zレースの名前の由来ぐらいだった。この番組あんまり役にたたないな……。

 でもみるちゃんのスタートですの一言で俺は自分のスイッチを入れ替える。なんといってもこのレースの中で数少ない難所ともいえるスタートだ。ここばかりは些細な操作が要求されるためオートパイロットではなく、マニュアル操作をしなければいけない。

 発射カタパルトに装着されたタイタニック。レバーをもち発射の準備を待つ。スタートまであと一分。この一分が最高に長く感じられた。

 目の前に光るランプが赤から緑に変わったときにレバーを思いっきりひくだけという単純作業だが、俺の右手は汗ばみ震えている。

 が、スタートしてみるとあんがいそっけなかった。今は加速中ということになっているのだろうか。

 周りの景色が代わり映えのない宇宙空間においてそのことを確かめるのは目の前のメーターしかないのだが、空気抵抗がないことで無限に加速することのできるこの宇宙では、そのメーターがどれほどの役割を果たすのかは俺には理解できない。

 発射地点のあったコロニーが見えなくなるほど小さくなるのに時間はかからなかった。その代わりといっては、同じくスタートしたいくつかの高速宇宙船が見える。

 ほとんどのチームが学生主体ということもあり、資金難で数世代遅れの機体に乗っているためか、オーダメイドのタイタニック号との差は広がる一方であった。

 タイタニックについてこれているチームはというと……楓さんの予想通り例の二チームである。アマプロ集団のハイエナチームと、妨害行為が得意の激熱チーム。どちらもこれからの二時間避けることのできない強敵だ。しかし、怖くはない。俺には楓さんが、美鈴が、タイタニックが一緒に戦ってくれるのだから……。

 そういえばそろそろ楓さんが動き出しているころだろうか……? 


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