私とバカその一
お気に入りをしてくれた方がいらっしゃいました。ありがとうございます。
「おっしゃいくぜぇ!」
そう言ってバカが教室内で騒いでいるので、それを見つけた私は「こら!」と注意すると、声に反応したバカは私を見たせいかバランスを崩して後ろに倒れ込む。
机も巻き込んでの転倒を目撃した私は、ため息をついて顔を手で押さえた。
私は今転倒したバカの彼女である。
きっかけはなんだろうか。生真面目な私にいつも絡んでくることに疑問を抱き、誰もいない時に質問したら彼が顔を赤らめて告白してきた頃だろう。
それ以来つきあっているけど……デートとかには一度も行ってない。私がバカの連絡先を知らないというのもあるけど、告白した方が忘れている可能性がある。
「い、委員長! なんで邪魔するんだよ!!」
「邪魔って……教室の中で一体何しようとしてたの?」
「野球だ!」
「外でやりなさいよ」
「紙だから無理だ!」
「はぁ……」
あまりにも堂々というので思わずため息をつく。クラスメイトも私達のやりとりを微笑ましく見てるのが分かる。
こいつがバカだというのはみんなも重々承知しているから「まただよ」と言いたげな視線を向けてくる。
一体いつになったらこんな行動をやめるんだろうかと思っていると、「ほーれ」と言って握っていた紙のボールを投げてきたので慌てて受け取ってから注意しようとしたところ彼は逃げていった後だった。
まったくと思いながら紙を広げると、『連絡先下さい』と書かれていた。好きですとか書いてあったのを二重線で消してるのが分かる。
それを見て私の心臓は高鳴り、自分の席に戻ってメモ帳に連絡先を書いてから彼の机の中に入れた。
馬鹿なのにこういうことに頭が回るんだから、まったく。