私とあいつその一
さくさくと人が増えていきますので。きっと
「……遅い」
待ち合わせの時間をもう一時間過ぎている。こちらとしては二時間も待っているというのに。
今日はあいつが初めて誘ってくれたデートの日だというのに……!
「なんで誘った本人が遅いのよ!!」
積もり積もった感情を吐き出そう様に大声を上げてしまい、周囲の視線を集めてしまう。
だけど私は今そんなことを気にしていられるほど余裕はない。あいつが来たらぶん殴ってやるという気持ちでいっぱい――
「ごめんミ」
「遅いってんでしょうがバカァ!!」
「ぐほっ!!」
近くで声が聞こえたので私は振り返り本気であいつの腹に一発お見舞いする。
食らったあいつは悲鳴を上げてから蹲り「……ごめん」と謝った。
すっきりしたのと素直に謝ったのを聞いた私は「まぁいいわ」と心の広いことを示して許すことにした。
実際にはちょっと力を入れ過ぎた罪悪感からなんだけど、あいつは知らなくていいわよね。
未だに蹲ってる私の彼氏を私は立たせ、「ほら早く行きましょう? あんたのデートプランに付き合ってあげるから」と言いながら自然と腕を組む。
ワタワタとパニックになる情けない彼氏だけど、一緒にいることに苛立たないから不思議だ。