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アイドルと不良

私の彼氏(予定)を紹介します

『みなさ~~ん! どうもありがとーー!!』


 私の声に見ている人達から歓声が上がる。それが静かになったのを見計らって私は『それじゃぁみんな! またねー!!』と笑顔で手を振りながら叫び、その場を後にした。


 その、二日後。

 私は普通に学校に来ていた。

 理由は簡単。だって私は高校生アイドルだからだ。

 通っている高校は結構普通。有名人が意外といるけど、それ以外は特筆する名物がない学校。


 ……とはいっても、問題児の一人や二人いるけどね。


 クラスメイトや廊下ですれ違う人たちと言葉を交わしながら、私はすぐに想い人を思い浮かべる。

 私の想い人。それがこの学校の問題児。


 え? アイドルがそんな人を好きになる理由がわからないって? 一人の女として私は彼のことが好きなんだから、アイドルなんて関係ないでしょ?


 そんなわけで今日も彼がいるだろう屋上に到着したところ、姿が見当たらない。

 今日の分の課題は机にあったから来てると思ったけど、この分だと置いた後に帰ったかな?


「何きょろきょろしてやがる、テメェ」

「!」


 上から声をかけられたので入り口の上を見ると、煙草をくわえながら太陽を背にして不機嫌そうに胡坐を掻いている彼を見つけた。

 私は笑顔で「あなたの心に癒しをお届け! 高校生アイドルの芹沢チカだよ☆」といつも通りのセリフとポーズを決めたところ、彼はたばこの煙を吐いてから「……で?」と鋭い視線を向けてきた。


「そろそろ私に会えないことに苛立ってきたところだろうから、お仕事頑張って学校に来たんだよ?」

「勉強しに来やがれバカ」


 滅茶苦茶正論を言われた。

 ぐぅのねも出ない私は、けれど、せめてもの抵抗で「……なら授業に出てよ。一緒に」と呟くと、「なんで?」と返された。


「俺は先公に許可もらってこんな風にしてるんだ。テメェみたいな凡愚と一緒にするな」

「うっ。わ、私だって先生に許可もらってるしー。テストだってそれなりに上位ですしー。これでも見えないところで頑張ってるてきなー?」

「はっ」


 鼻で笑われた。ものすごいイラッと来たけど、事実彼はこんな風に授業に参加せず今日の内容をノートにまとめてくるだけでテストをすべて満点取る。

 いわゆる天才と言われる人種。だけど、彼が問題児に挙げられるのはそれだけじゃない。


 私は彼が座っている場所まで登ると、彼はさらに不機嫌になって「ったく。ずかずかと踏み込みすぎだろテメェ」と煙草をすりつぶしてから私の顔から視線を外す。


 その横顔を見て真新しい傷があるのに気付いた私は「あーまた喧嘩したんだね」と言うと、彼は私に背を向けるように寝転がって「さっさと教室戻れやバカ」と追い払うように言ってきた。

 いつものやり取りなので私は普通に彼の横に座り込んだまま「返事っていつ聞かせてくれるの?」と質問する。


「あ? いつも言ってるだろ。俺の家はヤクザだし、お前の彼氏になるつもりは毛頭ないと」

「私アイドルやめてもいいんだよ?」

「はぁ? お前マジで頭おかしいんじゃねぇのか?」


 私の本気の告白に、彼は思いっきりげんなりしながら感想を言う。

 心配にも似たその感想に、私は笑顔になりながら「本当に好きなんだもん、一緒にいるのに邪魔なら素直に手放すよ」と空を眺めながら答える。


「……だからお前はバカなんだよ。俺みたいなダメ人間を好きになった挙句、今の立場をあっさり捨ててまで一緒にいたい? 先の事何にも考えてないだろ。もし別れ話でも切り出されたら、この先お前どうしようもないぞ」

「心配してくれるんだ! 嬉しい♪」

「……」


 墓穴を掘ったのか黙ってしまった。うん。かわいい。

 思わず笑顔になりながら空を眺めていると、「俺に女は要らねぇ」という呟きが聞こえた。


「え、もしかして同性愛者?」

「バカじゃねぇの!? 男見て胸ときめかせるなんて胸糞悪い、想像しただけでも吐きそうな性癖なんざ死んでもごめんだっつの!!」

「じゃぁどうして?」

「……だから言ってるだろ。家がヤクザなんだって」


 私には関係ないし。そう思っていたところ、それを見透かしたかのように彼は言いました。


「子供は生んでくれた親を選べない。どんな職業で生活していようが、俺達にはどうしようもない。ただ、今頃になってそういうので苦しめられる」

「……」


 やっぱりそういう悩みなんだと理解した私が「だったらどうして私を助けてくれたり殴り込みに行ったり、バイトしてるの?」と質問したところ、彼はこちらに寝返りを打って「何で知ってる」と短く、それでいて本当に不機嫌ですと感じられる声で聴いてきました。


「レギュラー番組の帰りによくよるんだよ♪」

「チッ」

「何で舌打ちしたの? というか、私の質問は?」

「あ?」


 何言ってやがるという顔をして起き上がった彼は、私のことを放置して飛び降り「他の奴探せよ」と言いながら屋上を出て行った……って。


「ええ!? 酷いよ! 待ってよ!!」


 私は慌てて追いかけ、教室に戻って怒られた。

 彼はなんと寄りもせずに帰ったとか。もう本当にひどい!!

 その後彼へのアプローチがエスカレートしたとかどうとか。

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